第35話 トロール
罠の設置はいいのだが進行方向にセットしてあるのにどうやって曲がり角の先にいるでかぶつを罠にはめるつもりなんだろうか。『フライト』で罠の先へ渡って誰かが連れてくるのか?
「罠オッケー」
「よし、じゃあこのゴブリンどもを罠の先へと投げてくれ」
「ん? 投げなくても私がそのまま操作できますよ」
ホルンさんの糸でぐるぐるにされたゴブリンが足元にいた。いつの間に?? とりあえずこのゴブリンででかぶつを釣りあげるようだ。
さて、みんなが頑張っている間暇な俺と健太は少し後ろの方でその様子を眺めていた。
「よっすー来てくれてサンキュー」
「ん、ああ」
「せっかくだから一緒に楽しみたかったんだよな~」
「楽しい…のか?」
「楽しいだろう? 俺たちの世界では見ない色んな魔物がいるんだぜ!」
確かに見るだけなら楽しいんだろうな…でも実際は一歩間違えば大けがじゃすまない。そのあたりを健太はわかっているんだろうか? だからと言って魔物がいない俺達の世界だって危険がないわけじゃない。でも、危険だとわかっていて自分から飛び込むのは違うと思うんだよね。
「無理するなよ?」
「もちろん! 楽しめるところまでしか進まないつもりだよ」
「ならいいけど」
「きたぞ!!」
健太と雑談しているとユージンの大きな声が聞こえてきた。それと同時にあのでかぶつ、トロールが姿を現す。相変わらずすごい大きさだ。その大きな体を支えながら一歩ずつこちらへ向かってくる。俺達を認識したようだ。
グウォォォォォォォォォォォォォ
たった数歩でファーナさんの罠にトロールの足が吸い込まれていく。大体胸のあたりまで巨体が沈み込んでいる形だ。
「これでどうですかっ」
そこへすかさずホルンさんが糸を操作し、腕による攻撃を阻止した。これでやつは身動きが取れなくなったわけだ。
「よし、総攻撃…っ」
みんなが一斉に攻撃を始めた。俺は裏のほうから周りを眺めていた。これなら怪我をしないだろうと。だが、それは突然やってきた。トロールの目が光ったのだ。
「は…っ 『ソリスト』!!」
「よっすーー!!」
「由雄様っ」
チュインッと音を立てトロールからビームのようなものが飛び出した。すかさず俺は『ソリスト』を使用し、他の人へ当たらないようにする。それに気がついた健太と結奈さんが俺の前に立ちふさがる。こうすると俺にも当たらなくなるからだ。
「おいおい…レイノアールなんて魔物用意してくれてるんだよ」
魔物が目からビームだなんて普通にあり得るのか? …いやないだろうな。ユージン達がぼーぜんと眺めているし、普段ならもっと動けたであろうリノすら足が止まっている。
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