第12話 沈む浮き輪

 平日は何事もなく…まあ比較的何事もなくが正解か? 学校が終わり家に帰ると部屋を解放するのだが、まるで狙ったかのようにその時間にファーナさんとホルンさんが現れ、さらに健太と結奈さんも来るわけで…騒がしい。もちろんだめではないのだがホルンさんと結奈さんの仲がもう少しいいのなら、という言葉が頭につく。


「よぉしっ 今日も元気にダンジョンへいくぜぃ! よっすーも早く2人連れてきてくれよなっ」


 土曜になって健太とファーナさんがダンジョンへと向かった。だが俺は2人の案内は仕方なく引き受けているが、その先へと進むとは一言も言っていない。それなのに健太が勝手に待っている。俺はでかけたため息をぐっと飲み込んだ。


「…気を付けろよ」

「よっすーもな~」


 健太とファーナさんを見送ると俺はその場に残された結奈さんとホルンさんのほうへ視線を向けた。ダンジョンへ行く前からすでに睨み合ったいる。どっちがお茶を入れるかを少し前にもめていたのだ。結局もめていた時間で健太とファーナさんが待ちきれずダンジョンへ出発してしまったわけなんだが…


「で、結奈さんは泳げるんだよね」

「まあ泳げますが…少し武器が重いのと洋服のままというのが厳しいですね」


 俺たちも3階層へ行くための話を始めた。そうか…武器によってはつらいのか。俺も剣を持ったまま3階層は行ったことがないな。


「じゃあ俺の分も合わせて3つ膨らませるか…」

「膨らませる…?」


 ホルンさんが俺の言葉に首を傾げてこちらをじっと見た。逆に俺が取り出したものを見て結奈さんは納得した顔をしている。


 準備を終えた俺たちはそれぞれが浮き輪を手に持ちタッチパネルを操作していく。まずは結奈さん、その次がホルンさん…なのだがやはり少し渋っている。


「本当にこれがあれば溺れないのですか?」

「大丈夫だってっ それに俺もすぐ後に行くから、結奈さん待ってるから行くぞ?」

「わかりました…」


 諦めたホルンさんはタッチパネルを操作し3階層へと移動をし、俺もすぐその後へと続いた。目の前の視界が部屋から水中へと変化をする。俺は結奈さんを探し少し上のほうを見つめ首を動かす…が、姿が見えない。浮き輪を持っているはずだから浮いていくはずなんだけど上にはすでにいない。もしかしたらもう水から上がったのかもしれないな。だが念のために足元も確認をしてみる…ああーなんで浮き輪がバラバラになってるんだよっ というかホルンさんも一緒に沈んでいた。あれか…ホルンさんの武器のせいかな。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る