第8話 お互いの武器

 聞いていない…聞いてないよこんなこと!


「ぜーはー…」


 俺は走っていた足を緩めながらやっと姿の見えた2人へと近づいていく。これでも頑張ったほうなんだけど、とりあえずダンジョンの中を走り抜けるなんて話は俺は聞いていない。


「はぁ…はぁ…」

「ヨシオ様遅いですわよ」

「由雄様少し鍛錬が足りないのでは?」


 息を整えているとホルンさんは涼しい顔をして遅いというし、結奈さんは少しだけ汗ばんでいるけどもそれほど息を切らせずこんなことを言ってきた。


「あの…さ…一人でなら、好きにすればいいけど…」

「「はい?」」

「一緒に来ているんだからパーティだろうが…なんで各自走らないかんのっ」


 やっと呼吸の整ってきた俺は一気に2人へとその言葉を吐き出した。


「そうでした…競争ではありませんでしたね」

「なるほど、パーティというのは一緒に行動をすることなのですね…反省します」

「はぁ…わかってくれればいいよ。で…」


 すっと俺は顔を上げ目の前の扉を見つめた。ここはすでにボス部屋の前なのだ。


「まだ2人の戦い方とか全然聞いていないんだけど、このままボス部屋に入る気? とくにホルンさん、どうやってスライム倒してたんだよ」


 不思議な狩り方をしていたホルンさんに俺はどうしても聞きたくて訊ねてみた。どう見ても武器は手にもっていないのだからな。まあファーナさんみたいにマジックバックとか持っているのかもしれないけどね。


「そうですね。ちゃんと伝えておかないと巻き込んでしまいますね」


 いやいや…巻き込んでしまうってどんな危険な武器使ってるんだよっ と心の中で突っ込んでいるとホルンさんが両手のひらをこちらに向けてきた。


「これが私の武器です」


 よく見ると右手と左手を渡すかのようにうっすらと細いものが見える。光に反射している部分だけだが長さとかもよくわからないなこれは。


「糸…ですか?」

「はいそうです。これは魔力で作った糸になります。つまりこれに触れた魔物はスパッと…ね?」


 こわっ にこやかに言っても行動が怖いよ! さりげなく今スライム倒したしっ


「うーん…これだとうかつに魔物に近づけなくなりますね。私まで切られてしまいそうです」

「ご心配なく。お2人の魔力を登録しておきますと糸は素通りできますので大丈夫ですよ?」


 それはいい話だけど、まだ登録してないよね? それなのに振り回してたの?? やばい人じゃんっ


「由雄様! 私も別の武器が欲しいところですっ」


 バットをぎゅっと握りしめ結奈さんが俺に言ってくる。そんなことを言われてもお金を稼がないと新しい武器は手に入らないし、どうしようもないんだが…


「お金増えたらね。ちなみにどんな武器がいいのかな?」

「そうですね…射撃とか結構得意なんですけど、刀とかも割といけますね」

「ははは…そう」


 射撃が得意ってどういうことなんだろうね…聞くのが怖いよ。そして結奈さんの謎がどんどん深まっていくし。銃とかは流石に売ってなかったきがするんだよね。となると刀か…これもあったかなーイマイチ覚えていないや。

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