第6話 いただきます?

 次の日俺は部屋の扉を叩く音でたたき起こされた。今が何時か知らないが休みなんだからもう少し寝かしてくれてもいいのに…と2度寝しようと再び瞼を閉じる。


「由雄様~おはようございますーっ」

「よっすー開けてくれっ」

「……」


 この2人かよ…どうやら2度寝は許してくれないらしい。


「少しだけ待って…」


 俺はしぶしぶベッドから起き上がると服を着替え髪の毛を撫でつけた。窓にちらりと映る自分の顔を見てよだれとかないことだけ確認すると部屋の鍵を開ける。


「早いな…おい」

「早くねぇよっ もう8時だし!」


 日曜の朝だと考えると十分早いだろうが…俺は軽くため息をつきながら2人を部屋に招き入れた。


「よっすー朝食は…寝てたんだからまだか」

「ああ。ちょっと顔洗ってくる」


 自分の部屋の扉を後ろ手で閉めると俺は自宅へ顔を洗いに向かうことにした。洗面所で顔を洗い台所へと行ってみるがすでに母さんは出かけているのか姿は見えない。テーブルの上に朝食すら用意されていなかった。


「起きるの遅かったし仕方ないよな」


 俺は朝食を諦め自分の部屋であるプレハブへと戻ることにした。扉を開けると部屋の中から何やらいい匂いがしてくる。


「おかえりなさいませ。朝食を用意いたしましたのでどうぞ」


 いや…あのさ。ほんとどうやって持ってきたんだよと聞きたいんだわ。助かるんだけどね…ほんとにね…

 先に食べ始めていた健太をちらりと見ながら俺も机に向かって座る。


「えーと…いただきます?」

「はい、どうぞ」


 机の上に並べられていた食事は洋食で、(なぜか)焼きたてのロールパンが2個にレタス、トマト、キュウリの入ったサラダ(ドレッシングは自家製らしい)、オニオンスープ(これって作るの時間掛かるんじゃ?)、それとスクランブルエッグと少し厚めに切られたベーコンが添えられていた。


「おかわりもありますので言ってくださいね」


 まだあるのかよ! 内心突っ込みをしつつせっかくなので食べさせてもらう。…うまいし。

 朝食を食べ終えた俺たちは食後に紅茶を入れてもらい飲んでいた。そういえばコーヒーが出ることはないんだな~とちょっと不思議に思った。


「あ、そうだ解放しておかないとファーナさん来れないね」


 俺は思い出したかのようにタッチパネルを操作し、このプレハブダンジョンの設定の変更をする。この設定で通行を許可しておかないとレイノアールのダンジョンからこっちに来ることが出来ないのだ。まああれだ。常に人に来られるのも困るから寝ているときとか留守の時とか入れなくしているってことだな。なので解放しているとたまに初めて来る人とかもいたりする。


「おっそーい! ヨシオ開けるの遅いよ…ちょっと待っちゃったんだけど?」

「寝てたんだから仕方ないだろう?」


 解放と同時にファーナさんがやってきた。どのくらいか知らないけど開くのを待っていたらしい。そんなファーナさんとともにもう一人女性がその場に立っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る