サイバーエンド・ウラシマ

澄岡京樹

第1話「華麗なるヌルポガ」

サイバーエンド・ウラシマ




 電脳都市『サイバーオーシャン長海ながうみ』で育った人間であるハイドロ高柳は、こちらよりも時間の進みが早いとされる隣町『鮮凪あざなぎ町』に興味を持った。

 ハイドロ高柳は高度な科学で構成されし擬似肉体に精神を移し鮮凪町へ向かい——


 ——そして、負荷に耐えられず死んだ。

 なんのことはない、既に電脳生命体と化した長海町民には、物理世界の環境は過酷だったのだ。


 しかし、ハイドロ高柳に対して何のケアも行わなかった鮮凪町民に怒りを募らせた一部の長海町民は長海サーバを守護する機動兵器『フロート』に精神を移し武装蜂起した。


 これに対し「いや数百年ぶりに出てきていきなり物理負荷に耐えられんかったわとか言われても困るわたわけ!」とキレ散らかした鮮凪町長ライコウは仕方なく防衛用人型兵器『ヌルポガ』『フォカヌポウ』『デュフ』を配備、ここに来てついに……数百年の沈黙を破り町と町の戦いが幕を開けた。



第一話「華麗なるヌルポガ」



 鮮凪埠頭には、量産型兵器ヌルポガが五機到着していた。体高はおよそ十五メートルで武装は九〇ミリ銃。そのずんぐりとした姿を見たライコウは「あれだ……あの、海賊が使ってた頃のグシオ——」とまで言いかけたところでガマガエルと言い直していた。


 それはともかくとして、ヌルポガは優れた機体であった。まずシガーソケットが付いている。まあこれは自動車では当たり前だったのだがヌルポガ以前に作られた人型兵器『ジョーカー』には付いていなかった。理由としては動力となる『ソリティア・ドライブ』が回りに回ってタバコの煙をコクピット内で高速循環させていたためであった。これにはヘビースモーカー兼エースパイロットのガジャルグ斎藤も「ちょっとこれは臭すぎるわ。なんかもう涙まで出てくるんやけど……」などと鼻水をすすりながら嘆いていた。


 その後『ハンドユウハーツ・システム』の開発に成功。ソリティア・ドライブの過剰回転問題は解決され、無事ヌルポガにはシガーソケットが装備された。


 この報告を受けたライコウは、「いやそこまでシガーソケットにこだわる必要あったか?」と言ったため喫煙者から猛抗議を受け、次の選挙では得票数が伸び悩んだがなんとか辛勝し、現在も町長を務めている。


 その時(どの時?)、ヌルポガ(広範囲索敵型)のコクピット内でアラートが鳴り響いた。ヌルポガは音質も良く、アラートはハイレゾ音源だった。


「……! 隊長、敵機接近……数は八!」

 突然の敵襲。数で劣るヌルポガ部隊に勝機はあるのか。


 次回『衝撃のフォカヌポウ』に続く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る