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「先生のアイデアは基本的には正しいと思います。ですが、先生は重力は
「ちょ、ちょっと待って」私は彼女の言葉を遮る。
あまりにも想定外だった。こんなに真っ正面から物理の議論をふっかけてくるとは……
しかも彼女は、少なくとも量子場の理論は把握しているようだ。とすれば知識レベルは明らかに学部生以上。私の科目の内容などとっくにマスターしているはず。なのに、なぜ私の科目をモグリになってまで聴講するのか。私は彼女を正面から見据え、問いかける。
「君は何者だ? そして、なぜ重力を導入するのが正しいと言い切れるんだ?」
「まず最初の質問にお答えします」彼女はすまして言ったものだった。「わたしは、スタンフォード大学量子物理学研究室のD2(博士課程2年)の院生です」
やはり海外の大学院生か。それならば、やけに英語の発音が良いのもうなずける。しかもスタンフォードなんて、ものすごいところからやってきたものだな。
ん? スタンフォード……? ああっ!
なぜ彼女と以前どこかで会ったことがあるように感じたのか。その疑問に対する答えが、私の脳裏にプラズマのように閃く。
「そして、二つ目の質問の答えですが……」彼女は続ける。「それが、実験的に
「……」
とてもそのまま信じられるような話ではない。だが、私にはどうしても彼女に聞かなくてはならないことが一つあった。スタンフォードは亡くなった私の妻の出身大学だった。そして、彼女は……その、私の妻によく似ていたのだ。
「もしかして、君は……妻の……ジェニファーの、身内なのか?」
「身内どころか」彼女は苦笑しながらかぶりを振る。「朝川ジェニファーは、わたしの母です。そして」
彼女は、私をまっすぐに見つめ、言った。
「父は、あなたです。朝川先生……いえ、お父さん」
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