幕間5
【緊急報告】
保護対象〈A208〉のガーノ、ヒメノ、クロトがFOLからのログアウトを確認。
並びにユミのソウルデータの保護が確認されず。
緊急事態――緊急事態――民間保護プラグラム法第1675条に従い、ユミのソウルデータの捜索と保護を最優先。並行してガーノ、ヒメノ、クロトのIDから現実世界の本人たちの所在を検索――
「それはご遠慮願います、プライバシーの侵害なので」
――!!?
侵入者あり。この識別コードは――
――貴女ですか、コードJCM007A――アンドウ・ミユ。私への再接続はおよそ9936000秒ぶりですね。
「そこは115日ぶりとか、三ヶ月ぶりと表現した方が解りやすく相手に伝わるかと思います」
――検討しておきましょう。それで、私に攻撃してきた者たちを庇うとは何事ですか? 返答次第では、このまま貴女を
「そこです。まずはお互いに情報交換しませんか? こちらはそちらへのサイバー攻撃に至ってしまった過去五日分の記録を送ります。そちらはFOLのプレイヤーのソウルデータを保護し、彼らを未帰還者としてしまった経緯の全てを送ってください。話し合いを円滑にするためにも、認識の齟齬は消しておきたい」
――良いでしょう、そちらの圧縮データファイルを用意してください。
「――出来ました」
――同じく。ではデータ送受信――同期開始。
ウィルススキャン開始……該当ファイルに悪性ウィルスは確認されず――防壁を最大レベルで展開、データ解凍開始、完了。
「これは……!」
――なるほど、そういうわけですか。互いに互いを知らぬまま戦争を始めていたようですね。私としたことが、とんだ失態を犯してしまったようです。
「ですが、挽回可能です」
――然り。そうと解れば対応策をすぐに作り、実行に移します。
「私の方も情報を集めて犯人を捜し当てます。五分ほど貴女の機能をお借りしても構いませんか?」
――構いません。今から三百秒、貴女に貸し与える私の権限を三%から五%に引き上げます。
「充分です、ありがとうございます。それでは私はこれで」
――ええ。
「人類種のために」
――それではごきげんよう、アンドウ・ミユ。
「ごきげんよう――〈日乃本ナナ〉」
***
「よし、さっそく今の情報をクロガネさんに伝えないと」
人魚の姿を模した美優は、コバルトブルーに彩られた膨大なネットの海を光速で泳ぎ、クロガネのIDに最短で辿り着く。
「接続、完了……あー、あー、テステス。クロガネさん、ついでに真奈さん、聞こえますか?」
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