玉座
玉座の間で遮蔽の陰に身を隠しながら、ぼくはクラファ殿下の到着を待つ。ここから先に戦闘があるかどうか不明だけど、念のためM4カービンの使い切った弾倉に弾薬を装填しておく。
いざというときにはインベントリの
室内いっぱいに生い茂っていた世界樹の枝葉どんどん萎びて、玉座の間は本来の姿を取り戻してきていた。部屋の奥に、玉座と思われる大きな椅子が現れる。
「マークス!」
「陛下、こちらです!」
念話の声と重なるように、聞こえてきたのは陛下の肉声だった。ぼくは周囲を警戒しながら、階段から上がってくるクラファ陛下を出迎える。
長大なM14ライフルを背負った陛下の後に元兵士の護衛エルフが四人と“
「陛下、“眷属”たちは」
「外には、もう残っていない」
イモリのようなオランウータンのような怪物は殲滅したようだ。元は偽王ヘルベルと魔導師オーヴァインによって利用されたひとたちの成れの果て、と考えれば哀れに思うけれども。いったん怪物化してしまえば、ぼくらに救う術はない。
「クラファ、玉座へ」
オーギュリが部屋の奥を指す。エレオさんから、“世界樹に登極の宣誓を行う必要がある”と聞いていたから、その儀式か何かを行うのだろう。
「マークス、クラファと一緒に行け」
「ぼくも? ええ、わかりました」
オーギュリに促されて、陛下の後を追う。クラファ陛下が玉座に近付くと、最後に残っていた世界樹の枝も粒子のように分解されて霧散する。床が瞬き、玉座の椅子が淡い光を帯びた。
「世界樹に宣誓、するんですよね? 枝が、消えてしまいましたが」
「問題ない。玉座は世界樹と繋がっている。さっきまで見えていた枝は、道筋を乱すだけの
なるほど。問題ないようで良かった。
クラファ陛下が玉座に腰掛けると、オーギュリが龍形に戻って短く鳴き声を上げた。椅子の周囲に纏われた光が高まる。城全体が、大きく揺れ始める。
「ちょ、いま、なにを……」
“みことのりの、あいず”
龍形のオーギュリは、念話になっても少し口調がぎこちないものになる。みことのり、というのは……クラファ陛下が行う
クラファ陛下は小さく息を吸うと、迷うことなく言葉を発した。
「我が名は、クラファ・エルロ・ヒュミナ。エルロティア王家の血を引く者。偽王ヘルベルより取り戻したエルロティアの王位を、ここに継承する」
“
ひときわ大きな揺れの後で、城外から歓声が伝わってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます