雨降って地は泥濘
雨降って地……固まるわけないじゃん。雨は降ったら土砂降りだし、地は泥濘に埋もれ足元を危うくするのだ。
クラファ殿下は再起動を果たしたけれども、問題は山積みで、しかもアルフレド陛下が暴走し始めた。政治的にならばわからないでもないけれども、知的好奇心方向に。なぜ、いま。
「……“はんびー”と、“かわさき”?」
「そうです。自動車、ですね。カワサキの方はバイクといいます。どちらも鉱石の油で走る。黒くてドロドロして燃える水、こっちでも見かけたことないですか?」
「あるが、燃やすと病人や死人が出るぞ」
「それは……不純物が多いとか、ですかね。こいつらの燃料は、それを精製したものなんですけど、無理ですね。ぼくは詳しい理屈を知らないし、知識も技術もない。金と時間と労力を掛けるだけ無駄です」
「この“はんびー”の上に乗ってる“じゅう”は何だ」
「汎用機関銃といいます。SKSの二倍ほど威力のある
「「おおッ!」」
銃兵部隊の面々が一斉にどよめく。
新たな技術の高みを知った驚きと喜び、そこに“自分たちの愛するSKSが格下認定された落胆”も少々混じってるあたり面倒臭いが、コルニケアのひとたちの場合――ドワーフに限らず――それもすぐ知的好奇心に変わる。
まだぼくはこの南部国境の街しか知らないけど、どうやらコルニケアはオタ気質がゴッチャリと集まったような国みたいだ。
「マークス、この“はんよーきかんじゅう”が最強の武器なのか?」
「さらに強力な、重機関銃というのもあります」
「「「おおおおおぉッ!」」」
「地龍を殺したのがそれだな⁉︎ 装甲馬車を穴だらけにした、化け物じみた“じゅう”だろ⁉︎」
王様また戦場に情報部隊を回してたな。いいけど、それを隠す気もないのがスゲーわドワーフ。
「ええ、そうです。それより強力な武器もありますが、ぼくは所有していません」
「「「「おおおおおおおぉ……」」」」
「カーマインが見た“動く家”というのは?」
「見たっていうのか、ひとの頭を覗くのやめてくださいね……」
「善処する」
「そこだけ政治家っぽい……まあ、いいです。その“動く家”っていうのは戦車ですね」
あのときは、“姫様ひとりで敵地に送り込むくらいなら手持ちのカネみんな注ぎ込んでエイブラムスでも買ってエルロティアを更地にしてやろうか”とか思ってたので。
「せんしゃ」
「鋼鉄で覆われた乗り物ですね。ぼくが元いた国では、軍が使っていました。城壁でも軽く吹き飛ばすような武器を積んでいます」
「「おおぉ……?」」
半数以上の頭に、疑問符が浮かんでいる。彼らも“なんか凄いっぽい”ことはわかるんだけど、いまいち想像しきれないようだ。
この世界の類似技術である装甲馬車にイメージが引き摺られているのではないかという気がする。
「ハンヴィーとカワサキは好きにしてください」
そろそろガタが出てきていた二台は、コルニケア技術研究職(と、その最前列で目を皿のようにして見ている王と銃兵たち)に引き取られた。超高額で買い取りしてもらったぼくは、気持ちを切り替えて姫様との
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