万華鏡〜君と僕をつなげるもの〜

七瀬 ナツ

エピローグ

景色


 僕は何をするのも平均点そこそこ。それ以上やそれ以下を望んではいないけれど時々これでいいのだろうかと思う時がある。

 僕には幼なじみが二人いて、一人は明るい性格で運動神経に長けている。もう一人は誰もが憧れるような頭脳明晰。だけど実は女子もびっくりするほどの甘党男子。左手に持つのは難しい本ではなくお菓子の本。こんな二人といるのはこれといったものがなく適応力だけは人並み以上の僕。

「よ、相変わらずの顔ぶれだな」

「当たり前だろ」

「おまえは相変わらずギリギリだな」

 いつもこの三人これからもずっと何気ない生活を繰り返して、誰かが好きな人が出来たらその話題で盛り上がって。進路がわかれても家が近いから休みの日になれば会って。もしかしたら十年後には子供が出来て家庭を持ってる奴もいるかも。

 人生に同じ景色や空間は二度はない。毎日何かが変わって進んでいく。その進む道が幸せか不幸かは誰にもわからない。幸せだった道が突然不幸にもなる。だけど、想いはどうだろう。変わっていく想いはあるかもしれないが、変わらない想いもあるかもしれない。だから人は恋をして誰かと一緒に歩んでいくのだろう。楽しい時間も辛い時間も誰かと共有することでたくさんの景色を心に刻むことが出来るのだから。

 あの時の僕にはそんな景色を見ることが出来るなんて思ってもいなかった。

 僕の目の中に入ってくるものはすべて彼女が教えてくれた。僕にはそれがすべてでそれだけだった。彼女の物語に僕は映っているのだろうか。君に会えた時今度は僕が彼女の――

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