ネコに祈りを。

七海 まち

なぜネコなのか

 ずっとずっと、ネコが飼いたくてたまりませんでした。


 思い返せば、物心ついたときから動物が好きでした。まず犬を飼いたかったけれども、親はあっさり「ダメ」と。じゃあネコは? 「もっとダメ」。理由は、家をメチャメチャにするから。

 そういうわけで私が飼えたのは金魚と熱帯魚、リスとハムスターのみ。どちらも水槽やケージの中に閉じ込められているからOKが出たのでした。

 けれども彼らは私に懐かない。


「なつく」。星の王子様のキツネの言葉で言うと、「絆を結ぶ」こと。そして互いに「なくてはならない存在になる」ということ。


 魚や小動物では、それがうまくできませんでした。私が求めていたのはキツネの言ったような特別な関係であって、単に世話をして観察するだけの一方的なものではなかったのです。

 慣れたハムスターが手のひらで寝てくれたときはうれしかったですが、寿命が短い彼らはあっという間に私の前から姿を消してしまうのでした。


 犬よりもネコに強く惹かれるようになったのは、小学校中学年くらいから。

 ネコに関する本をたくさん買い、種類を覚えたり生態を勉強したり、犬との性質の違いを知ったり、家の近所にいた野良ネコのおちゃめな行動やテレビに出てくるかわいい子ネコを見ていくうちに、猫の魅力に取りつかれてしまったのです。

 当時、犬を飼っている友達に「ネコなんか何がいいの?」と言われたのもその熱に拍車をかけたかもしれません。

 飼ってもいないのに雑誌「猫の手帖」を買って、ネコとの暮らしを夢見ていました。

 野良ネコと出会えば宝物を見つけたような気分になり、なんとかして触りたい、その子のことをもっと知りたい、としゃがんでそっと近づいたり、逃げそうなら遠くからじっと眺めたりしていました。

 近所のお寺で飼われていた二匹のネコ。赤と黄色の首輪をつけた彼らをなんとか抱っこしようと、友達と一緒に日暮れまで奮闘したこともありました。

 ただ見ているだけでも幸せ。でも毎日一緒に暮らすことができたら、どんなに幸せだろう。そう思っていました。


 一体なぜ、ネコにこんなに惹かれるんだろう。

 当時、どれだけ考えても不思議とわかりませんでした。

 とあるきっかけからネコと暮らすようになった今、ようやくネコの持つ不思議な魅力の正体が、なんとなくつかめてきた気がしています。

 私は、ネコが好きです。大好きです。

 私にとってネコは、なくてはならない、本当に特別な存在になっています。

 賞を取って本を出せたのも、ネコのおかげ。心の底から、そう思っています。


 このエッセイでは、ネコと暮らして知ったこと、気づいたことなどを書いていく予定です。

 とある理由から、「猫」ではなく「ネコ」という表記をしていきます。

 どうぞよろしくお願いいたします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る