第35話 『まじめなおじいさん』
遺品整理と清掃をうけ負っている
Pさんにお話をうかがった。
「オレたちはさ、
亡くなった人やご遺族に代わって
室内を片付けるのが仕事なんだけどさ」
古物商の免許を持っているPさんは
その場で不要な家具などを査定して
下取りすることで
その分を作業代金から差し引く、
というサービスで好評を得ている。
「たまにさ、
孤独死した部屋に出向くときには
気を引き締めるんだよ。
当然、
そこには遺体なんかないんだけどね」
警察が
遺体を引き取ったあとでも
鼻の奥に突き刺さるようなニオイは消えておらず
汚れた布団や床などはすさまじいことになっているそうだ。
「でもその人だって
そんな死に方しようと思ってたわけじゃないからな」
Pさんはあえて
たんたんと仕事をこなす。
あるとき
孤独死した男性の部屋を掃除していると
スタッフのひとりが
「――ちょ、
ちょっと、コレ……ッ!」
青ざめたまま
テーブルを指さしている。
Pさんは
うながされたまま視線を向けた。
見ればそこには
1枚のメモがある。
体液だか
アブラ染みだかで
汚れているメモには
くさって
しまって
すみません
と書かれていた。
それは
とても達筆であったという。
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