第22話 『レンタルベッド』

体調を崩した祖父のために

介護ベッドをレンタルした。


やってきたのは

最高級のフランス製ベッドだった。


祖父も大変喜んでくれた。


しかし翌朝


「もう

 こんなベッドには寝たくない!」


と言い出した。


理由を聞くと


「ひと晩中

 だれかが


 のぞいてくるんだよッ!」


とおびえた顔で答えた。


そんなバカな……。


信じられなかったが


ものは試しに

祖父のベッドで

ひと晩寝てみることにした。


高級ベッドだけあって

抜群の寝心地で

すぐに睡魔が襲ってきた。


だが

深夜12時をまわったころ、


ブツブツという

人の声で目をさました。


別な部屋の、テレビかラジオの音だと思って

寝返りをうつと


すぐ目の前に


人の顔があった。


「ヒぃッ!」


おどろいてのけぞると


背中に

なにかが当たった。


おそるおそる

ふり返ると


そこにも

人の顔がある。


あわてて飛び起き

逃げ出そうとしたとき


ふたたび

絶句した。


ベッドの周囲を、


いくつもの顔が

取り囲んでいるのだ。


それらは全員

老人のようで


モゴモゴと

なにかを訴えかけてくる。


あまりの恐怖で

とたんに気絶したという。



「……考えてみたら、

 レンタルベッドって


 ウチにくる前は

 いろんな方が使っていたんですよね。


 で、その人が

 なんらかの理由で使わなくなったから

 ウチに回って来たんでしょ。


 当然、

 

 お払いとか


 してませんよね……」



言い終わると

暗い顔でほほ笑んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る