第19話 『本日発売』

今日、

発売になった週刊誌を買おうと

駅前の本屋に向かった。


だが

オープンの時間はとっくに過ぎているのに、


なぜかシャッターが

半分しか開いていない。


かがみこんで

中のようすをうかがうと


店内からも同時に


アルバイトの男が

身をかがめてこちらを見た。


血の気のない

まっしろな顔。


まるで

ロウ人形のようだ。


「まだ

 オープンしないの?」


あいそ笑いで聞くと


「はぁ、まぁ…」


と無表情で答える。


「週刊誌、

 買いたいんだけど」


そう言うと


「ああ。ええ」


気のない返事をする。


店の奥を見れば

女性アルバイトも立っている。


口をポカンと開け


やはり

ロウ人形のような顔をしている。


「で、いつオープン

 するの?」


さらにたずねると


「今日は

 臨時休業です」


と乱暴にシャッターを下ろされた。


失礼なその態度が

頭にきて


シャッターを蹴とばすと

近所のコンビニに向かった。


会計をすませ外に出ると

何台ものパトカーが

けたたましいサイレンをならして走ってきた。


そして

さっきの本屋の前に急停止すると、


警官たちが

店の中になだれ込むのが見えた。


たちまち

周囲は立ち入り禁止になり

ブルーシートの壁が出来上がった。



あとからわかったことだが、


オープン前の

あの本屋の中で


店長の男性が

死んだらしい。


サバイバルナイフによって

めった刺しにされていたという。



逮捕された

犯人は

あの時に見た


アルバイトの

男女であった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る