第3話 『旅館』

そこはとても古い旅館だった。


部屋に入ってすぐ、

ぶるぶる寒気がして

とてもいやな予感がした。


その日の夜中、

案の定

金縛りにあった。


「やっぱりか!」

と思っていると、


すぐそばに

女がいた。


女は

うつむいたまま


部屋の中を

ずるずる

歩き回る。


やがて

ゆっくりこちらを向くと、


ばっちり

目が合ってしまった。


すると女は


「あ。

 ちがう、ちがう。

 わたし、

 幽霊とかじゃ

 ないですよ」


あわてながら


その場で

消えた。

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