第60話 釧路家の休日 J


 青年は質問後にこの村の傾向や接し方を教えてくれた。


「村八分があるのかどうかすら不明ではありますが、小さな村なので出来るだけ敵を増やさずに行動するべきでしょう」


青年は理解しやすいように言葉を次々と変えながら説明してくれる。


「とは言え、すべてのルールを把握することは困難なので、普段からなにかすることはありませんか、と聞いて回る方が無難で楽だと思います」

「先生は村八分回避に何をしていますか?」

「子供たちの面倒を見ています。女性の方々が従来面倒を見てきたらしいですが、産後鬱、まぁ、ここでは存在しないので女性の子育て支援しているだけですね」

「しんどくないですか?」

「いえ、述べたように私も転生してきていますが、前世では子供の扱いが多かったので比較的に楽ではありますね」

「なるほど」

「さてでは、魔法について前の説明を復習しつつ進めましょう。


 理論的には魔力という物を媒介にして使います。


 魔力自体には、難しくなるので無としておきましょう。この無から有、この有の部分が魔法です。


 今私の手には魔力があります。魔力は無色透明というわけではありませんが、認知することが出来ない人に取っては無色透明とも言えるかもしれません。


 この魔力を使い、水の塊を作ってみます」


 青年の手のひらから野球ボールくらいの大きさの水の玉が出現する。


「炎の魔法に引き続きですが、これが魔法です。質問はありますか?」

「その魔力というのは誰しも持っていますか?」

「はい。先天的、後天的な病等を除いて持っているはずです。例外的な場合も勿論ありますが、統計学的に言えばそういった例外的な場合にまず遭遇することはないでしょう」

「それなら私も持っている、ということですか?」

「ええ、話を聞いた限りでは鉱石が反応を示した。それだけで十分魔力があると判断出来ます」

「なるほど」

「魔力に関しては、ということなので意識的にこれが魔力なのか、という感覚が掴みきれていないだけだと思われます。

 なので魔力がどのようなものなのか、というのを感覚的に理解するのが今後の目標と言えます」

「わかりました」


 青年は風呂場に案内してくれる。


 風呂は木製の五右衛門風呂で家族旅行で行った温泉宿で


 何故風呂場に案内したのか疑問に思っていると青年の手から大量の水が溢れ出しすぐに風呂場に水が貼る。


「本来、魔法でこのように水を貼るという行為自体珍しいものですが、夏場は便利です」


 貼られた水を触るとぬるい。


「魔力を帯びた水です。人間の肉体は風邪などの病気、病原体が入ると抵抗してくれます。

 魔力も同じように、他者の魔力に対して抵抗してくれます。

 なのでまずは体内にある魔力を体の外側に出してバリアの役割をさせます」

「はい」

「貼られたバリアは薄いので最初は魔力であるという感覚が捉えにくいですが、全身なら鋭利な感覚部位は捉えやすいと思います」

「捉えた後はどうするのでしょうか」

「特にすることはありません、これが魔力か、という認識が重要なので、認識後はまた別のやり方があるので今回はこれに集中してください」

「はい」

「私は少し席を外します。飽きたら出て先程の部屋に戻ってきてください」

「わかりました」


 こちらの返答を確認すると青年は風呂場から出ていく。


 服を脱ぎゆっくりとぬるい水に浸かる。


「ふぅ」


 気持ちよくもないが特にすることもないので手がふやけるまで水に浸かる。 


 大きな欠伸をして少しだけストレッチして風呂場を出ると先程はなかったがタオルのような布があったのでそれで体を拭いて服を来て先程の部屋に戻る。


「どうでしたか?」

「すいません。特に感じませんでした」 

「そんなすぐに感じ取られてはこちらの教える事がすぐになくなってしまいます。気楽に行きましょう」

「はい」


 それから肌寒くなってきた季節になるまでぬるい水に浸かっていたがある時、体の表面に何かがあることが肌を通して感じられた。


 早速青年に報告すると彼はにこやかに笑みを浮かべて言った。


「おめでとうございます。それこそまさに魔力です。今はまだ感覚的なものだと思いますがそのうち、なんとくこれが、ああ、魔力なのか、と認識出来るようになります」

 

 青年は今後のことについて軽く説明した後に魔力の可能性を示した。


「ではイメージにおける魔法の困難についてですが、立ち上がって、右手を前に、正式には右肩から、ああ、つい癖でそのまま少しお待ちを」


 話の途中だが立ち上がり右腕を前に突き出す。


「どうですか?」


 突き出した右手が氷に包まれるが全く冷たくない。


「不思議な感覚です、冷たいって思い込んでいるので少し驚きました」

「そうでしょう」


 青年は嫌味に感じない微笑ましい笑みを浮かべるとバリンと氷が砕けていく。


「では次は冷静にお願いします」


 言い終えると再度右手が凍るが今度は冷たく驚き右手を上下に振る。


「落ち着いて、死にはしません」


 先程と同じく氷が砕ける。


「これが所謂イメージにおける魔法の困難性です。

 我々人間、ここでは人類と大きくマクロ視点でまとめますが、経験したことに関しては理解しているとは思いますが、人間は自分の経験から学んだことは理解しやすい傾向にあります。

 経験主義を振りかざしはしませんが、主観で物事を知ると同時に客観的に知見を得なければ、イメージで扱う魔法は使えません。

 考えても見てください。

 イメージだけで何でも出来るのならどんな鋼鉄をいとも容易く貫くレーザーや刃で相手を倒せばいいだけの話です。

 しかし、実際そんなことは出来ません。

 出来ない理由は勿論経験することがないからです。なので貴方にはこれから色んな魔法を私個人が知りうる限り見せます」


 青年が何故ここまで懇切丁寧に教えてくれるのか疑問になったので問うた。


「そうですね……私の役目はどうやら貴方の育成らしいので」


 青年の答えには疑問符しか浮かばなかった。


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