雑談であり雑記であり雑学でありの雑録
谷口欲矢
第1話 雑談日記 1 ウリミバエ 前編
釧路優夜(以下釧路)の家のリビングに宗谷仁、光、闇、月白優が6人掛けのソファーでそれぞれ携帯や雑誌、新聞を読んだりくつろいでいた。
以下人名 宗谷仁=仁 月白優=月白
釧路がリビングで水を飲もうとコップを取り出している最中に仁が言った。
「ふー。釧路お茶」
「何茶がいい」
「玉露」
「仁てめぇ毎回いいのばっかり選びやがって」
「光さんと闇さんは何でしょう」
「「煎茶」」
「月白は?」
「なんでもいいよ」
「じゃ玉露で」
釧路は陶器のコップを人数分取り出しヤカンと電気ケトルに水を入れヤカンを火に付けケトルの電源を入れた後に適当な数種類のお菓子を皿に盛り付ける。
「時間かかるけどいいよな」
「構わぬ」
「なんで偉そうなんだよ」
「釧路手伝うよ」
「月白が手伝えることは――ない」
「そう」
急須に玉露の茶葉を入れ電気ケトルに入れた水が沸騰したのか電気がオフになるのを確認し闇と光ように用意したコップに注ぎ、注いだコップのお湯を急須に入れて2分程度蒸らし、急須を回転させながらコップに注ぐ。
「光さん・闇さん。どうぞ、あとお菓子の詰め合わせみたいな感じですけど、お茶のお供として」
「ありがとう」
「ありがと」
「仁と月白はまだ少しかかる」
「まっとるから早く」
「どっちだよ」
玉露用に新たに急須を用意し茶葉を入れ、ヤカンの蓋を開けて確認すると湯気が揺れておりガスを止め温度計で温度を測ると70℃ほどになっていたので先程の工程通りコップにお湯を注ぎ温めてから急須に注いで回転させながらコップに注ぐ。
「ほい」
「ういー」
「ありがと」
ズズズとお茶を啜る音を立てながら仁は言った。
「糞ー毎回旨いなぁ。ばかやろー」
「そりゃどうも、てか全員来たらミネラルウォーターのストックがなくなるから困る」
「俺があとで密林で頼んでおいてやるよ」
「仁サンクス。それよりなんで俺の家で皆さん集合したんですか」
光が注目を集めるために咳払いをしたので全員の視線が光に向く。
「それは、学校でやろうとしたけど不都合がいくつか出てきたから釧路の家でしようという話しに」
「不都合って、まぁ別にいいですけど何するんですか?」
「それは、ね雑談だよ」
「学校の休み時間でもできますが!」
「雑談と言っても雑学だったり学業とは関係ないものを、だよ」
「はぁ、それって生徒会○一存とかあんな感じですか?」
「あれは雑談でしょ、そう、勉強になるなぁって感じのを話するの」
「それってどういう」
「ふっ、それでは私が最初に話してどういう話か、というものを教えて上げます」
「え、はい。よろしくお願いします」
釧路はヤカンに余ったお湯を適当に急須に入れてお茶を淹れてソファーに腰掛ける。
ソファーに全員が座ったことを確認すると再度光は咳払いをする。
「沖縄のパイナップルって美味しいよね」
「ん? いえ、あのすいませんが、沖縄県産は食べたことがなくて、フィリピン産のやつしか食べたことがなくて」
「あら、そうなの?」
「というか、まず買えませんよ」
「ならゴーヤは?」
「それなら育てたことすらあります。できたのは小さいのですが」
「おー」
「沖縄押しってことは沖縄のことについてですか?」
「いい感をしてるね」
「この流れでわからない人のほうが少数だと思いますが?」
「そう。沖縄と言えばウリミバエよ!」
「ハエ? 仁知ってる?」
「知らん。沖縄特有のハエ?」
「月白は?」
光の横に座ってお茶を啜っている光に問う。
「外来種ワースト100に選定されたハエで、外来種の中で唯一根絶したとされている種くらいしか知らない」
「ツッキー充分だよ。普通なら知らない人の方が多いよ」
「そうなの?」
「うん。というわけで今回はウリミバエについてよ」
「虫かぁ」
「最初の話が虫ですか」
「まぁ、そこはいいじゃない。掴みが大事ですから、ではまずウリミバエについて、軽く説明するわね。分類いる?」
「すいませんが、生物学は詳しくないんで分類を詳しくされてもわかりません。とりあえず簡略で説明してもらっても構いませんか」
「そうね。では、かいつまんで説明するね」
約100年前海外から突如やってきたウリミバエ、学名はバクトロケラ・ククルビータエ。
体長は8ミリで人類の脅威となる2つの特徴があります。
1、食欲旺盛。ポケモンのカビゴンくらいの食欲って思ってくれればいいわ。
2、繁殖能力が異常に高い。これはネズミね。ねずみ算式に増えると表現しても大差ないわ
「わかりやすい説明ありがとうございます」
咳払いして光は続ける。
「実は先程でたゴーヤ、料理ではゴーヤーチャンプルが有名ね。これは1993年まで沖縄でしか食べることができなかった。理由はなんでしょう」
「1993? 数十年前だよな。歴史嫌いなんだよな。仁は?」
「光先生ー! 歴史になにか関係ありますかー?」
「お前分からないからって数十秒でヒントを聞こうとするなよ」
「お前も分からないのに時間の無駄だろ」
「あります。ヒントとしては沖縄が本土復帰するです」
「本土復帰っていつだっけ?」
月白が手を上げて答える。
「1972年です」
「うーん。それでも20年くらい開いてるな?」
「あれじゃね、そのハエが関係してるんじゃ」
「はい。仁君正解!」
「適当に言ったのに正解しちゃったよ」
「光先生! でも1993年だとなんだか話がおかしくありませんか? 20年という月日とハエの因果関係おかしくないですか?」
「そうね。今の私達が生活しているとハエなんて一瞬で殺せるわ。でもそれって科学技術が進歩しているから、と言えなくもないじゃない?」
「まぁ、そう言われてみれば医療技術とか発展は凄いって聞くし」
「確かに、今の技術があればこんなハエの対策楽とは言わないけど昔よりは遥かに楽に駆除できる。みんながスマホが使えなくなったらどうする?」
「死ぬ」
「仁。潔いよ。その回答すごくしゅき」
月白は冷静に答える。
「何かしら調べるのも苦労しますよね。特に1970年代は日本万博、気象衛星ひまわり、スペースインベーダーと今の私達の生活基準だと生活や科学力の違いがよくわかりますね」
「ツッキー先生になった方がいいよ」
「んー考えておきます」
光は咳払いをして話を戻す。
「まぁ、それを踏まえて続きを話すね」
1970年、このときの沖縄の時代背景としてお金はドル、走る車は右側通行とアメリカによる統治が続いていましたが、前年1月にワシントンで行われた首脳会談で1972年に本土復帰を果たせることとなり、沖縄は湧いていました。
当時の沖縄と本土では2/3とう収入格差があり、これを埋めるたいという思いは切実でした。
特にアメリカに占領されていた1960年代、本土は未曾有の経済成長をしていた。岩戸景気と呼ばれるものね。
復帰したからといってこの差を埋めることは困難なのは仕方ない。でも沖縄には切り札があった。
そう、一年中野菜が取れた。だからこそ、この野菜を本土に出荷すれば多く儲ける事ができると考えました。
当時はアメリカ国土なので本土では輸入品として扱われて尚且、輸入制限もしていたこともあり売上は不調。
それ故に本土に復帰できれば国内産として安く大量に出荷できるからね。
この当時の沖縄で作っている野菜の8割は県外、ここでは国外だけど、その出荷のために生産されているの。
そんな中、現沖縄の那覇港ではとある植物防疫官、琉球政府、この政府は1952年からある政府、今回は省略、が検閲をしていたわ。
さて、ここでウリミバエの特徴に戻って思い出して欲しいのだけど、ウリミバエが持つ2つの特徴は?」
「カビゴンとねずみ」
「いや、優夜それだとこの話を聞いている人以外意味がわからんぞ」
「食欲旺盛と繁殖能力の高さ」
「釧路君正解!」
「連想記憶って言いたかったのか仁?」
「ま、そういうこった」
「このウリミバエの食料になったのが、野菜、その数は200種類で好物がスイカ、キュウリなどのウリ科、トマトやピーマン、パパイヤ、そして名産ゴーヤ……。
どれも現在でこそ各地で採れる野菜だけど、この当時、説明した通り年中野菜が取れる状況であるため、このウリミバエの上陸を許してはいけない状態だったの。
さて、どれだけ繁殖能力が高いか説明します。
寿命は2.3ヶ月ですがその一生で産む卵は1000個以上とされ、孵化してから20-30日ほどで成虫になり、10日ほどで交尾を行います。卵は果実に突き刺して産み付ける為、産み付けた野菜が本土に持ち込まれたら……。
そのため厳しい検閲が行われ、卵を産み付けられているいないに関わらず疑わしいものはすべて焼却処分していました」
「でもなんでそんな焼却処分するんだ? 発見されているわけでもないし」
「それはちょっと説明不足だったね。このウリミバエの生息地にはインド、オーストラリア、ハワイなどでハワイなんて特にアメリカ国土でウリミバエに関してはよくわかっていたからこそ、食料豊富な沖縄で検閲を行うのは当然といえば当然だよね」
「あー。北上という可能性にハワイから持ち込んだものが卵を産み付けられていたらか、なるほどねぇ」
「それも在るわね。これも今から説明するわ。ウリミバエが初めて日本で確認されたのは1919年大正8年、沖縄の最南端にある八重山諸島で発見される。
その10年後。
1929年、宮古島でウリミバエが発見されて確実に北上しており、同種のミカンコミバエも存在しており、この2種により壊滅的な被害を受けていました」
「ん? なんで? 食料豊富で子孫が沢山増える。食欲旺盛。やばいのはわかるが、なんでそんな沢山増えるの? 虫とかって食物連鎖でなにかしら天敵がいるでしょ」
「そうね。結論から言えばこのとき沖縄には居なかった。だから、繁殖行動を妨げることもできなかったから。ね」
「やべぇ」
「ミカンコミバエは誘引剤で処理することが出来ましたが、相変わらずウリミバエは処理することは出来ませんでした。
ミバエの飛行距離は約200キロ、宮古島から沖縄本島本土までは300キロ、この為、島の端にある港で食い止めれれば大丈夫とその程度にしか認識してなかったの。
なぜ本土に上陸を許してはいけないのかというのをもう少し詳しく説明すると、壊滅的打撃だけではなく、植物防疫法ではミバエなどの害虫が発見されると、拡散防止のために、そこから野菜などの輸出、出荷が禁止になるため、本土復帰まじかのこの状況下で切り札をなくすということに繋がるからね。
さて、脱線が長くなったけど、そんな切迫した状況の中、港で検閲していた植物防疫官。
1970年5月、ウリミバエの一斉調査が実施され、この与儀嘉雄も調査チームに加わって、沖縄本島、周囲の島々に500以上の罠を仕掛けたわ。
そして、久米島で発見される。久米島は宮古島よりも北に位置しており沖縄本島からだと西に約100キロ。
ウリミバエは200キロ移動できるので本島本土上陸は時間の問題というわけね」
「あ、光さん」
「ん?」
「長くなりそうなんで一旦ここまでで」
「これからいいところなのに、じゃ、また明日ね」
「はーい」
「じゃ、今日はここで解散ね!」
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