ナコの誕生日

㐂咲七々

【誕生日】- 1

『お母さん、お父さんおやすみなさい。』


「あらナコ、おやすみなさい。」


「ナコおやすみ。」


×  ×  ×


「んぅ…はぅぅ……」


朝、私が苦手な朝です。

寝起きの視界に閉めっぱなしのカーテンから漏れる光が注ぎ込む。


寝起きで慣れない光が目がくらくらとさせる。私は負けずと二度かぶりそうになった重い瞼の布団を剥ぎ、一階へと階段を下りた。


私の家は古くて歩くとギシギシと音をたてるようにとてもとっても古いです。階段には昨日こぼした赤いペンキの色が少し乾いていたりします。

ですが私はこの家が好きです。大好きな家族がいる家だから。



一階に下りていつも朝食をとる机と椅子。既にお父さんは座っていて、お母さんはまだ朝食を作っているようだ。今日は何を作っているのだろう?

私は料理中のお母さんの隣へ行き「今日の朝ごはんはなぁに?」と覗き込む。


「今日は、ナコの誕生日だから朝からナコのすきなお肉だよ。軽めの部位使ってるからお父さん胃もたれせずに済むと思うわ。」


「やったぁ!」


お母さんは朝食を作り終えたみたいで、お皿に盛りつけたサラダ一緒に薄く切ってあるお肉が盛り付けられている、生ハムだろうか。そのあとお肉の骨のダシを使ったというお味噌汁も出てきた。飲み物には毎日恒例のトマトジュース。それらをお父さんのいる机へと運んでいく。

私あんまりこのジュース苦みがあって好きじゃないんだよなぁ。

と思いながら私も運ぶのを手伝おうとジュースが入ったグラスを持つ。


ガシャンッ!


手を滑らせてしまったのかグラスを落とし割ってしまった。


「お母さんお父さんごめんなさい!」

先日にも同じことをしてしまったことから怒られると思って私はすぐに謝った。


「なんだまたグラス落ちたのか。」

「あらあら、まぁ割れちゃったものはしょうがないわね。」


お母さんもお父さんも怒らなかった。私は安堵した息をもらし、お母さんが雑巾を持ってくる姿をみる。お母さんはグラスの破片をさっさと片付け、床に零れ落ちたトマトジュースを雑巾で拭いている。


雑巾はトマトジュースで布を湿らせ「このままだと雑巾が臭くなって匂うわ。」といって拭き終わった後の雑巾を洗い流しゴミ箱に捨てた。


私は誕生日だというのに少し落ち込み、お母さんが作ってくれた朝食を「ありがとう、いただきます。」とだけ手を合わせ食べた。


食べた後、まだ先ほどの落ち込みが抜けきっておらず私は自分の部屋へと戻った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る