二件目の異世界をロボで戦う、そんなセリアの物語

竜世界

第一章 討伐部隊

第1話 その機体の名は――

 私は高姫たかひめ星理愛せりあという女子高生だった。


 事故で死んだ後ゲームみたいな異世界に転生する事になって一人旅は不安だから何とか冒険者パーティーに入れてもらい……大した活躍は出来なかったけど全くの役立たずにはならないくらいには頑張ってた。


 そのパーティーが本日をもって全滅――


 次の魔王が誕生するまでまだ何年か猶予がある中、私たちは強さよりも冒険を求める気ままなパーティーだったから……魔法と消費技を封じる部屋に落とされて、万全状態でも倒すのが絶望的な格上モンスターたちと戦う事になれば……こうなるよね。


 皆最後まで頑張ったし私も出来る限りの事はした……活躍何てロクに出来なかったけど最後まで皆で助け合う、私には勿体ないパーティーだったなぁ……。


「えーと……お名前は……確か」


 今は建物の崩落事故に巻き込まれて死んだあの日のように、周囲の景色がモノクロに変わってて静止。


 その時に現れた女性がまた目の前にいる状況なんだよね。


 中学生相当の年齢からスタート出来るようにしてもらって……今私は16歳だから4年くらいは新しい人生を過ごしたわけで……あの時、名前を聞いたかすら怪しいし上手く思い出せてるか自信なくなって来たから私はとりあえずそう言った。


 自分の事を女神だと言ってたのは覚えてる。


「ラエチエルだよ。呼び辛いならレイチェルでいい」


 背丈をオーバーしてる長い髪をふわふわさせながら体が浮かんでて……背は少し高めで胸の発育がとんでもないけど、声色も全体的な雰囲気も少女そのもの――


 そんなレイチェルと私は会話する。


「まさか……また転生させてくれるとか」

「そうだよ。悪い事してなくて、まだ若い内に死んじゃったから」


「何か制限があったような記憶が……」

「うん。今までの記憶を全て知識だけにすれば有利な条件で次の世界に転生させる事が出来る。元の世界へは返してあげられない」


「次はどんな世界なの?」

「この世界みたいに魔法みたいな力が働く世界……サンプルを表示するね」


 レイチェルがそう言うと空中に横長スクリーンが現れて……映し出されたのはデザイナーが趣向を施したであろう様々な高層ビルが群れを成し、そんなビルの間を幾つもの乗用車が飛び交う光景だった。


 住民が人間と同じ姿なのはこの世界もそうだったからいいとして……私は言った。


「……魔法がある世界だよね?」

「この世界と違って誰でも魔法が使える世界じゃないの……もっと言えば、何にでも魔法が働くわけじゃない」


「年齢また選んでいいの?」

「この世界が魔王に襲われるように向こうの世界でも敵性存在がいて、それが現れるまでは平和に過ごせる……人間側の犯罪が無くなるわけじゃないけど」


「そうなると幼少期の遊具とかも充実してそうだなー……」


 そんな感じで協議を進め……学校もある世界だから最終的に小学生スタートで高校受験の勉強しながら新しい世界の様子を見る事にした。


 前回のRPG世界でも私と同じように地球出身の転生者はかなりいて……レイチェルに色々聞いてる内に今回の世界にも私と同じ経緯で転生した地球人が数多くいる事が判って、こんな会話もしたね……まずレイチェルが発言。


「名前はどうする?」

「んー……この世界は違う名前で過ごしてたけど……元の名前と同じ音のセリアにするかな。引き続き女性で」


 転生という事は違う性別にも出来るんだけど……私は1人の女の子として、運命の女性ヒトと出会いたい――


 女の子が女の子に恋をする……気付いた時にはそんな憧れが私の中にあって、転生した時も期待してた……次の世界では、会えるといいな。


 パーティーの中には女の子もいたけど……そういう仲になる以前に、私は皆の輪の中にそこまで上手く入れて無かったし、結構命懸けな日も続いたからそれどころじゃ無かったのかな……。


 そんな想いを胸に秘めながら『セリア・シトルーク』となった私は日本にいた頃はまだ成し得て無かった高度な科学文明に基いた社会の中で過ごして行き……。


 明日は私の14歳の誕生日。


 この世界で6年ほど生きたわけだけど、この日の私は管制室にいた。


 ここ数年で活動を本格化させたこの世界の敵性存在『デバウアー』を倒すべく集結した精鋭部隊をサポートするオペレーターとして――


「11時の方向に敵影確認! タイプ外殻の群れです!」


 オペレーター仲間のサンディことサンドラ・クラマーシュの緊張感を帯びた声が響いてる……ちなみに女の子って年齢じゃないけど見た目は若い女性だよ。


 私たちがいる管制室は地上だけど部隊の中で唯一の男性にしてリーダー、マルス・プラウニールたちがいるのは宇宙空間。


 地上に関する技術は私が住んでた地球より進んではいるけど、宇宙技術に関してはどっこいどっこい……。


 あとこの世界には人型ロボットが存在し、目安としては全長25メートル。


 これに乗り込めば宇宙空間での行動が可能になるけど、デバウアーは金属を侵食する活動体……宇宙でも地上でも当たり前のように自在に飛行する様はこの世界が純粋な科学世界では無い事を教えてくれる。


 人型ロボットを始めとする兵器は金属だからデバウアーに侵食され、そうして乗っ取った兵器の一連の挙動はそのデバウアーが制御出来るようになる。


 だから今回集められた人型機体はデバウアーの侵食を受けない非人工物……敵の群れまで辿り着くとマルスさんが発言し、サンディが答える。


「コア持ちは何体だ!」

「あの大きな1体です!」


 デバウアーは皆同じカラーリングでボディが紫、所々に単眼を彷彿とさせる緑色の丸い部分が大小様々にあって、その目の表面は充血してるかのよう赤い模様が広がってて、何かがあれば暴れるように変化する。


 タイプ外殻シェルは外骨格生物のような形状してて……今回は八本足の甲虫類で、コア持ちに関してはコーカサスオオカブトとよく似てる……10本足だけど。


「雑魚は俺が引き受ける……エスタ! ボスを頼めるか?」

「了解」


 返事をしたのはエレスタ・コルテーゼ。


 皆はエスタって呼んでるけど、私だけ『エリー』って呼んでる、そう私だけ……。


 今でもあの日を思い出す――


「ご、ごめんなさい……あの、気を悪くしましたか?」


 他にも転生者が大多数いるこの世界で、小学生の内に高校卒業資格を得る事は全然特別な事じゃ無い……私は高二の早い内に死んだから結構手間取って、小学校高学年くらいまで掛かったなぁ。


 その後は元の世界で果たせなかった大学受験の道を進むか悩んでた頃……近場のカフェで出会ったのが、エリーだった――


 あのアメジストのような鮮やかな青紫色の瞳に、ライムグリーンのような発色のいい髪をトップから編み込み始めて、三つ編みが本格化するのは、うなじ辺りからで、それを全体的に大分ほぐしてる……あんなに編んどいて腰まで髪が届くんだよね。


 何処を眺めるまでも無く、ただそこに佇むあの姿が……印象的だった。


 私の外見も言うと……髪はあちこちウェーブ気味な程度に癖毛があって、腰を少し通り過ぎる長さの髪の色は金髪とストロベリーの中間の色合いで、金髪の発色具合が損なわれてないからストロベリーゴールドって呼びたくなるけど……ピンクゴールドが青味を帯びて深みのある色合いになった感じって例えるのもありかも。


 そんな私とエリーは何度か会う内に少しは話すようになって、お互い自己紹介した後、私がエリーと呼んでいいかと持ち掛けて、反応に間があったので心配になってそう言ったら……エリーがこう答えてた。


「あ……そうじゃなくて……エリーはわたしの最初の名前だから……思い出しちゃった」

「エレスタさんも……転生者なんですか?」


「うん、オオノエリ……大きな野原に恵まれた理論。レムナントは武器だからここで出すのはちょっと……」

「わ、私はタカヒメセリア! ハイプリンセスな星の理論を愛する! レムナントは……何か色々ある!」


 おかしなテンションでそう叫びながら、手の平に炎の幻影を浮かべてたのが……今思い出しても恥ずかしい……。


 『レムナント』とは自らが転生者である事を示す幻影を映し出す力の総称の事で、前回のRPG世界で主に何をしていたかを紹介し、このレムナントが使えれば転生者という証明になるんだよね。


 この世界の住民はそうやって自分たちと転生者を見分けてるんだけど……転生先の家族には事前に判るし、例えば妹を欲しがってる家庭を指定して手頃な年齢で転生みたいな事を皆よくやって来たから、ある日突然家族が増えてても、その家庭内どころかご近所の方々も、その現象に慣れちゃってるみたい。


 出せるレムナントは1つが基本で、複数あるのは珍しいんだけど私のレムナントは基本的な武器の他に火球、冷気の渦、雷の軽い奔流……そんな感じで10種類越えてたから世界記録にまでなって転生先の家庭にいきなり親孝行出来た、でも……。


 こんな「私は何ひとつ主な得意分野の無い器用貧乏な人間です」と宣言するようなレムナント……本当は知られたくなかった。


 前の世界での私は剣や魔法の他に弓や投げナイフ……どれもそこそこ使えてどんな職の冒険者のサポートにも回る事が出来たけど……メイン火力には絶対なれない存在だった……本当に何がメイン武器だったか答えられないくらい色んな武器を毎日使ってたなぁ……。


 あの日から私はエリーをエリーと呼ぶようになり、エリーも私をセリアと優しい声で呼び捨てするようになって……こんな日もあったのが嬉しい。


「見て見てエリー! このレジンアクセサリー……エリーの瞳と同じ色! 濃くて鮮やかなアメジストカラーだけど、よく見たら半透明で……迷わず買っちゃった!」


 私の髪は両サイドを胸から下の辺りで切って、先の部分を適当なアクセサリーで留めたり結んだりしてたんだよね……ちなみに私の瞳は瑞々しい果実みたいに艶やかで深みのある赤い色。


 このあとエリーが優しく微笑んでこう言ってくれたから、今もずっとこの青紫色のアクセサリーが私の髪飾り……。


「似合ってるね」


 その表情と声はいつ思い出しても暖かくて、この頃にはもう気付いてた……これがこの気持ちこそが……『恋』なんだって――


「リーダー、どいて!」

「おう!」


 思い出に浸ってる場合じゃないと気を取り直そうとした瞬間、エリーとマルスさんがそう叫んでた。


 戦況はマルスさんが雑魚を蹴散らし、エリーがボスに専念出来るような状況を作り続け……更にエリーは企業支給の人型機体用サイズのレールガン式ガトリング砲でボスの外骨格にヒビを入れて行き、十分に強度が低下したのを見計らってエリーが乗ってる機体の手の平から武器……つまりレムナントを生成。


 基本的にレムナントは幻影を表示させるだけど、中には短時間の実体化を可能とするものもあって……そんなエリーのレムナントは武器だった。


 機体サイズに合わせてるけど、エリーのレムナントは伸び縮みする剣……普段は繋ぎ目の見えない剣が蛇腹状に分割されて一気に伸び、その間は鞭のようにしなやかに扱う事が出来る。


 ダンジョンで見つけてからずっと愛用してるって言ってたけど……要するにマルスさんはこれを振り回す事を宣言されたから避難した感じ……実際はコーカサスの胴体目掛けて真っ直ぐ突き刺すように剣を伸ばしたね……。


 エリーの機体の形状を簡単に言うと『雌獅子めじし』かな……人型機体にしては一見華奢だけど所々の筋肉がしっかりあって、顔のラインは女性そのもの……胸部に関しては三角形気味の綺麗な流線形……胴と腰は分かれてる。


 胸と言えば私は指定出来たから「大きい子たちの中にいても十分あると思われるくらいで」と言ったら、明日14歳にしてはそこそこ以上に大きい感じになって、17歳のエリーより一回りほど上の膨らみに……。


 さて、伸ばした剣はコーカサスを見事に貫通……その調子で何度も突き刺し、最終的に剣に戻した状態で斬り付けて両断。


 雑魚相手ならこれで終わりだけど……ここでヴェネットさんことヴェネット・マッセラーズが叫ぶ。


「あの光は……!」


 これで終わるんだったら侵食される前に重火器で倒せばいい……。


 皆が乗ってる特殊機体が必要なのはこれがあるからで……私は今まで沈黙してた分を取り戻すかのようにオペーレーターとして叫ぶ。


「フラグシップのコアが出現しました! 物理攻撃は無効です! マルスさん、誰がトドメを刺すか指示をお願いします!」


 普通のデバウアーを撃破すれば全身が水色の炎に包まれ、そのまま燃え尽きる……だけど今回の相手は全身に燃え広がった炎が集合し、水色のまま結晶化して行ったそれは宝石のような輝きを放つようになった……これが普通に綺麗なんだよなぁ。


「リーダー! あたいに任せて下さい!」


 そう叫んだのはリオーヌ・スキャロウ……蛾の一種オオミズアオをモチーフにしたようなフォルムを持つ、淡い翡翠色の機体に乗ってる。


「頼んだぞ、リオ!」


 輝く水色の結晶体であるデバウアーのコアを破壊するには大きくエネルギーを消耗する技を使わなければいけない……リオーヌさんは先ずこう言った。


「クリエイトウェポン――ロングランス」


 これは槍武器を生成する呪文のようなもの……でも重要なのは次に言った内容。


「レッドコード――ファイアウェポン!」


 前の世界にも火属性を付与する魔法はあったけど、こっちは勝手が違う……簡単に言えば、手にしてる武器を炎そのものに変換する――


 そうする事で物理以外のダメージを与える高エネルギー存在になり、この状態じゃないと結晶化したデバウアーは破壊出来ない。


 武器が完全に炎に置き換わるまでの間に翡翠色の機体は現れたコア目掛け突進……機体から見て頭部くらいあるコアを突き刺した頃には長槍は完全に炎状態になってて結晶全体が一気に燃え上がり、やがて砕け散った。


「いえーい!」


 マルティーさんことマルティー・サラディウスがそんな歓声を威勢よく上げたけどその機体の後ろには甲虫型のデバウアーの鋭利な脚部の先端が迫る。


「マルティーさん! 後ろに――」


 サンディの発言が終わるのを待たず、そのデバウアーの全身が水色の炎で覆われるや忽ち燃え尽きて……もっと言えば同じ現象が辺りにいるデバウアー全てに同時に起きた。


 コアを持つデバウアーを倒せば、それが率いていた部隊は消滅する――


 そんな性質が今回も適用されたわけで……この世界もゲームっぽい所あるんだよね……ちなみにデバウアーの体液は水色で観賞価値があるくらい無駄に綺麗。


「一帯の敵全ての消滅を確認。リオーヌさんの機体の残存エネルギー……58%です!」


 私はそう告げた……0%になったら機体が一旦消えて宇宙空間に放り出されるから宇宙服を着てるとはいえ重要な情報。


 コアを破壊すれば関連するデバウアーは消滅するわけだけど……じゃあ全てのデバウアーの母体となった『マザー』を倒せばどうなるか?


 マザー自身が私たちの住む星『アーテリヤ』の傍まで来たのを見て……そんな可能性に賭けて募った末に編成されたのが5人しかいない今回の討伐部隊。


 そして部隊は更に進み、サンディが叫び私が続く。


「4時の方向に敵影確認! タイプ遊泳フロートの群れです!」


「全員のエネルギー状況。マルスさん98%、マルティーさん96%、ヴェネットさん96%、エレスタさん95%、リオーヌさん57%です」


 エリーって呼ばないようになるまで結構苦労したなぁ……。


 さて、コア持ちと判定するにはもっと接近する必要がある。


 多い時は3体いるけど、今のところは魚のような外見に近い遊泳のみ……ただこのタイプは装甲が低い分、再生能力があるから長期戦になりがちで距離的に無視出来る可能性はあるもののエネルギーを温存したいこの状況では厄介な相手。


 再生能力と言えば前回死に場所となった部屋で、皆が命懸けでやっと切断したモンスターの腕が一瞬で再生した時は絶望という言葉の意味を理解したよ……あんまり思い出したく無いけどあのモンスターって確か――


 そんな考え事を始めた矢先、管制室のプログラム型AI人工知能が叫び出した。


「緊急事態発生! 緊急事態発生! この都市の電力の40%を担う発電施設がデバウアーの侵食被害に遭っています! 繰り返します。この都市の主力発電所がデバウアーの侵食被害に遭っています!」


 それを聞いて、私は叫んだ。


「ユズ! 車を手配して! 司令官! 私は一度ここを離れます!」


「セリアくん。行ってくるれるのかね! 有難い……増援は要請した。何とか持ち堪えてくれ!」


 司令官は転生者じゃないけど年齢を積み重ねた分しっかりしてる男性。


 管制室を出て建物を出た私の目の前に空飛ぶ車――『スカイカー』がやって来た。


 下は見晴らし抜群の高い場所、落ちても反重力発生フィールドがあるけど発電施設がやられたらその供給も危うくなる――


「ルーちゃん! この車の制御は私がやる事になった! ここからなら目的地まで5分で着くよ!」


 この世界では『パーソナルデバイス』を購入すると、その値段に応じた性能のプログラム型AIが付いて来て、ユズは特別製……転生後のレムナント記録の記念に貰えたんだよね。


 パーソナルデバイスはメーカーによって色んな形があるけど……共通してるのは、それ単体で主な機能が完結する持ち運びサイズである事。


 私が使ってるのは凄くセンスのあるデザインが施されたピンポン玉くらいの立方体だね……空間を含めた好きな場所にキーボードやディスプレイなどを投影して、通話やインターネットへのアクセスが出来るのはパーソナルデバイスの基本中の基本。


 スカイカーに乗ってから5分が経とうとしてて、発電所に蔓延るデバウアーの姿が見えて来ると、そんなパーソナルデバイス越しにユズが叫ぶ。


「この高度からなら飛び降りて大丈夫! 行って、ルーちゃん!」


 私は開いた自分の右手を見つめた……そこには真っ赤に染まった結晶体がある。


 皆と比べたら小さいし立派なものじゃ無いけど……これが私の『魔石』。


 さっき私が皆に言ってた『エネルギー』があれば、いつでも手の上で生成出来て、呪文の類は要らないんだけど……それじゃあ寂しいからと大抵皆はこうする。


 私は輝き始めた魔石を握り締め、その右拳を頭上へ突き出すと指の隙間からは鮮やかな赤い光が溢れ出てて……次の瞬間、私は唱えるように叫んだ。


「サモン……マギアス!」


 言ったと思うけど討伐部隊の皆が乗ってるのは非人工の人型機体――


 じゃあ誰が作ったのか……今、私の背後で25メートルくらいの人型ロボットがその全身から赤い光を放ちながら生成されてる光景が、その答え。


 生成が完了した時、呼び出した者はコックピット内にいる……そんな魔法のような機体をこの世界の人々は『マギアス』と呼んだ。


 大分高度を落としたから着陸による被害も無し……ユズはスカイカーの制御を元の持ち主に返して、この機体のサポートに駆け付けて来た。


「タイプは猛獣ビースト……気を付けて、ルーちゃん!」


 相変わらずAIの合成音声とは思えないユズの声が流暢に響き、戦闘開始……せめてコア持ちを暴き出して、後続の応援に繋げよう。


 地上にマギアスの持ち主はまだ残ってるし、私がこんな事をしなくてもこの発電所は直ぐに解放されたかもしれない……だけど――


 今の私に出来る事があるなら、出来る限りの事はしたい……そんな我儘わがままを抱えて生きてる何て、エリーにしか言えないよ。

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