第5話 唐突な中途採用

 魔王が娘の部屋には今、3人が顔を揃えている。1人は城の主たるエイデン。もう1人は今やスッカリお馴染みのシエンナ。そして最後の1人は、絨毯でうつ伏せに横たわるニコラだ。


「にぅぅ! にぃぅう!」


 響き渡る極めて幼い気合い。しかし叫び声も虚しく、傾いては戻る事を繰り返している。自身の腕が邪魔をして、転がりきれないのだ。


 その姿を眺めるエイデンは祈るような想いに包まれていた。手を差しのべたくなる衝動には堪えつつ、歯を食い縛りながら、成り行きをジッと見守り続けた。


「頑張れ、頑張れ……あと僅かではないか!」


 苦悶の表情を崩さぬニコラ。それに勝るとも劣らず、顔をしかめるエイデン。親子で苦痛を分かち合うように、表情が鏡合わせ同然となる。


 その様子をシエンナは、ほぼ真顔で眺めていた。なぜ自分がこの場に呼ばれたのか、存在意義すら見出だせぬままに。


「行け行け! もう一息だ!」


「にぃぅうう!」


 一際大きな声とともに、ニコラの体は絨毯の上で反転した。間髪いれずにエイデンの喝采が響き渡る。


「よくやった! とうとうここまで成長してくれたか!」


 割れんばかりの拍手。顔は泣き笑いそのもので、目尻には光るものがある。そして、目標の達成を果たしたニコラも、どこか誇らしげな顔つきとなっていた。


 そんな感動シーンを余所に、シエンナだけは今も蚊帳の外である。わざわざ部屋まで連れ込まれ、赤子が転がる様を見せられる、その意図とは何か。いくら考えた所で、答えは一向に見つからなかった。


「陛下、私はなぜ呼ばれたのですか?」


 とうとう疑問が口から飛び出した。エイデンは目元を拭いながら、随分と晴れやかな声で答えた。


「どうだ、感激したろう。ニコラはな、とうとう寝返りをうてるようになったのだぞ!」


「ええと、もしかして、それを見せる為だけに?」


「無論だ。他に用などあるものか」


「そうなんですかぁ、アッハッハ」


「さぞや眼福(がんぷく)であったろう、これまでの頑張りに対する褒美であるぞ」


 顔を見合わせて高らかに笑うシエンナとエイデン。だがその刹那、龍の鱗を持つ拳が風切り音とともに疾走し、エイデンの頬を貫いた。


「このクソ領主が!」


「何をする!」


 今回は切れ味が格別で、随分と絵になる光景だった。叶う事ならこの瞬間を切り取って、額に飾りたくなるくらいだ。タイトルは『反逆のメイド』やら『憤激する拳』となるだろうか。


「これまで何度も申し上げましたよね、頻繁に呼ぶなと。私だって仕事ってもんがあるんですよ!」


「待て。お前が抜けた穴は、別の者が対応すると聞いているぞ」


「みんな無理してくれてるんです! 休み時間を削ってまで穴を埋めてくれてるんですよ!」


「何だと!? そのような事になっていたのか?」


「当たり前でしょう、全体の仕事量は変わらないんですから! このままだと倒れる人も出ちゃいますよ!」


 脅しでは無い。シエンナが呼び出されるようになって数ヵ月、仲間内でカバーするのも限界を迎えつつあった。大きな不満が噴出しないのも、他ならぬ王命が絡んでいる為だ。


「ともかく、今後も呼びつけるなら人を増やしてください。そうでないなら、呼びつけの回数に制限を設けてくださいね!」


 シエンナはそのように叫ぶと、足早に部屋を飛び出した。


 告げられた事実を、エイデンは小さくない衝撃と共に受け入れた。育児に奔走するあまり、他の物事を疎かにし過ぎていたのである。


「なんという事だ。これでは領主失格ではないか……!」 


 思えば子育てに偏重しているのも、彼の強烈な拘りの為であった。たとえ四苦八苦しようとも、己が手によって育て上げると心に決めている。それが家来に迷惑をかけたとしても、せめて軽いものに留めておきたい。実際にはそこそこの弊害が起きてはいるのだが、彼の意図としては、そういうものであった。


 状況を整理したなら、魔界から新たに人を呼び寄せる必要がある。しかし、慌てて募集をかけたとしても、何かと日数がかかってしまう。そもそもこの城は最前線の基地であるので、求職者の反応も鈍いだろう。


「仕方ない。造るか」


 方針が決まれば早いものである。宵の口、その日の育児を終えた直後、彼は真っ先に倉庫へと向かった。


 中は比較的整然としているので、お目当ての物を見つけるのに苦労をせずに済む。棚の上に並ぶ、いかにも怪しい液体の詰まった小瓶を掻き分け、隠されたように置かれた塊を手にした。


「あったあった、これだ」


 それは白銀色をした金属の塊である。錬成すれば名剣に、媒介にすれば高等魔法を発動できるという、万能なるアイテムだ。当然値の張る代物だが、先祖代々より莫大な財貨を受け継ぐエイデンは、どこまでも気安く持ち去った。まるで、道端の樹に成るリンゴでも毟り取るようにして。


「よし、早速始めるとしよう」


 居室に戻ったエイデンは、机上に金属塊を起き、その上にシエンナの髪の毛一本を添えた。去り際にハラリと落ちたそれを回収していたのである。


 そうして準備を整えると、両手をかざして魔力を込め、詠唱に入った。


「魔の者を産みし常しえの王よ。地よりも深き冥府より、新たなる命の芽吹きに祝福を与えたまえ」


 文言が魔力を依り代にして、奇跡が実現する。手のひらから生じた七色の光が塊に降り注ぐと、眩いほどの閃光が走った。真昼に輝く太陽にも似たものだ。そうしてしばらくすると、痛烈なる光は止み、辺りには相応の暗さが返された。


 するとどうだろう。エイデンの眼前には、1人の女が姿を現したではないか。


「うむうむ。我ながら上手くできたものだ」


 肌がやや銀色である事を除けば、シエンナと瓜二つだった。顔や髪型、背丈などの骨格は、生き写しとも言える程に酷似している。


 しかし、首から下へ視線を向けてしまうと、生き物らしさは薄れてしまう。胴体部分は真っ平らな筒状となっており、性の判別どころか、人のそれとは大きくかけ離れている。そのくせ手足は精巧なものが生えているので、裸のままではどうも気味が悪かった。 


「とりあえず、メイドの服を着せておくか」


 こちらも、倉庫より取りだした予備品を着せてみた。想定よりもよく似合う。ようやく、真っ当と呼べる域にまで達した気になった。


「さて、肝心の人格はどうであろう」


 エイデンは、シエンナを模した塊に魔力を注ぎ込んだ。それが合図となり、うつむいた顔がぎこちなく起き上がる。


「よくぞ目覚めた。私はそなたの産みの親、エイデンであるぞ」


「我が産みの親、エイデン。産みの親、エイデン」


 出来映えは上々である。反応や飲み込みは過去に例を見ないほど良好だった。


「いかにも。今後は私の命に従い、よく励め」


 その言葉で、無機質な視線がエイデンに向けられる。無言のままで見つめ合うと、彼女は肯首して答えた。


「ゴミ承知しましたカス野郎。何なりとクズ命令をどうぞ、ファッキン」


 異常なまでに口が悪い。その点に限れば、オリジナルを遥かに凌駕する程である。


 このままでは運用は難しい。仕方なしにエイデンは消灯時間を遅らせてまで、教育を施した。付け焼き刃的である事を承知の上で。


 明くる朝。本日一度目の召集がシエンナにかけられる。やはりお相手の機嫌は悪いらしく、絨毯を敷いた廊下に足音が鳴り響く。そして勢い良く扉が開かれた。


「陛下、昨日も申し上げましたが、呼びつけには制限を……」


 彼女の口はそこで固まる。何せ視界には、自分とそっくりな何者かが待ち受けていたのだから。その隣に佇む、したり顔の主人については割とどうでも良かった。


「ふふっ。人を増やせというから造ったぞ。その名もシエンナMKー2だ!」


 この言葉によって、シエンナの凍りついた時が動き出す。


「あ、あ、アホですか! マジもんのアホですかッ!」


「なぜ不評なのだ。上出来な仕上がりではないか」


「自分とソックリな人形を造られて、嬉しい訳が無いでしょう! 気持ち悪いですよ!」


「そう言うな、コイツは優秀なのだぞ。頑丈で疲れ知らず。大活躍すること請け合いだ」


 エイデンは能書きを宣うと共に、MKー2をチラリと見た。それを合図に、人造人間はオリジナルの存在に対し、恭しい挨拶をした。スカートの端を両手でつまみ上げ、小首を傾げると、それはもう滑らかな口調で言い放ったのだ。


「お初にお目にかかります、豚足女。クソ不細工なオリジナルとお会いできて光栄にございます」


「陛下。コイツの首を引きちぎっても良いですか?」


「我慢しろ。これでもマシになった方なのだ」


 人格調整は失敗だった。さすがのエイデンも、一夜漬け教育では限界もある。


「ともかく、今後の成長に期待せよ。じきに改善もされよう」


「今後って何ですか。もしかして……」


「こやつはお前の穴埋め要因だ。当然であろう」


「ええっ!? 止めてくださいよ!」


「何を言うか。MKー2がお前の代わりに働いたなら、呼びつけも思うがままで良い。そうだろう?」


「確かに理屈としてはそうですけど、ほんと勘弁してください!」


「ふふっ。能力に不信感があるようだが心配無用! 行け、MKー2よ。お前の力を見せてやるのだ!」


「イエス、ゴミ貴人」


 思わず不安を覚える暴言を残し、飛ぶようにして駆け出した。シエンナとしては気が気では無かったが、その仕事ぶりは上々。一切の無駄を取り払った動きにより、付近の廊下は窓も含め、瞬く間に輝きを放つまでになる。


 むしろ本家(オリジナル)を超える程の働きぶりに、シエンナはアイデンティティの揺らぎすら覚えてしまった。


「どうだ。素晴らしいだろう」


 MKー2が戻るなり、エイデンは得意気に言った。


「確かにすごいです。どこか釈然としませんが」


「まぁ突然の事であるからな。慣れてしまえば違和感も無くなる……」


 帰還したMKー2であるが、衣服のあちこちを汚していた。働きによる成果は上等だったが、ツメの甘さが出てしまっている。


「おや、随分と汚したな。これは着替えさせねば」


 エイデンが無遠慮に脱がしかかったところで、シエンナは間に割って入った。その顔を激しく紅潮させながら。


「やめてください! 何だか気持ち悪いです!」


「どうした。慌てる必要などあるものか」


「いやいや、だって、何だか自分が脱がされてるような……ともかく嫌なんです!」


「心配は要らぬ。中は平らな金属板があるだけで……」


「平べったいとか言うな!」


「何を怒っているのだ!?」


 乙女の身体的特徴に触れる際には、極めて慎重に言葉を選ばねばならない。たとえ本人とは無関係な、人形に向けたものであっても。


「もう良いです。これは、今後私が管理します!」


 勢いそのままにシエンナが強弁した。


「なぜだ。所有者は私だぞ」


 エイデンも譲ろうとしない。そこそこにMKー2を気に入っているのである。


「悪評が広まりますよ! 家来の複製を造った挙げ句、弄んでるとの噂がたってしまいます!」


「誤解も甚だしい。私はただ、汚れた衣服をあらかた着替えさせようとしただけだ」


「下心以外は完全に一致してるじゃないですか!」


 そんな言い争いの続くなか、訪(おとな)いの声が差し込まれた。エイデンは眼も向けずに入室を許すと、烏人がやってきた。参謀長のクロウである。


「お取り込み中のところ恐れ入ります」


「何用だ。今は忙しい」


「昨晩、柔金属(じゅうきんぞく)を持ち出されたようですが、それは今どちらに?」


 エイデンが、その柔金属とやらの成れの果てに視線を向けた。MKー2は挨拶代わりに、真顔でウインクを繰り返した。するとクロウは、衝撃の余りに眼を見開き、やがて小刻みに震え始めた。


「この色味、そして光沢。もしや……」


「あの塊なら使ってしまったぞ。コイツを作る為にな。挨拶しろMKー2よ」


「初めまして死に損ない様。差し当たって、棺桶に詰め込む手助けをさせていただきます」


 クロウは最後まで言葉を聞かなかった。拝謁の姿勢から真後ろに倒れ、天井を仰ぎ見ると、声もなく静かに落涙した。


 シエンナが駆け寄り抱き起こすが、クロウの反応は薄い。この数秒でエラく老けたようになり、2人の様子も、介抱というよりは介護にしか見えなかった。


「クロウよ、どうしたのだ?」


 エイデンが微風にも等しい声をあげる。それは、戦場にあっては百万の軍すら凌駕する男とは思えないほど、極めてか細いものだった。


「我らの計画が、対人族用に開発を進めていた兵器が、これで水の泡でございます」


「あの金属に使う当てがあったのか?」


「基幹部品の、代替えがきかない物に使用する予定でした」


「待て。あれは倉庫の奥で余らせていた物ではないのか?」


「余らせていたのではなく、温存していたのです。来るべき時の備えとして。幾度となく沸き起こる、思わず縋りたくなる気持ちにもどうにか堪えながら、今日までやってきました」


「そ、そうか。まぁ使ってしまったものは仕方ない。追加の品を魔界より急ぎ取り寄せよう。どれほど値が張っても構わぬ、父祖より引き継いだ財貨は山のようにあり……」


「陛下。世の中はそのように出来てはおりませぬ」


 今の台詞を口悪くしたなら『世間知らずのボンボンが!』となるだろう。もちろん、忠義の臣である彼が宣うことは無いのだが。


「問題は値ではなく、その稀少性にございます。たとえ万金を積んだとて、品が無ければ入手は困難です。それこそ何年も、気長に待つ必要があるでしょう」


「そ、そうか」


「その極めて貴重なる資材を、お戯れの為に使われたのですか?」


 クロウの声は、話せば話すほどに震えを増していった。失望か絶望か、エイデンに判断はつかず、生返事で応じてしまう。


 主と参謀の視線が、交錯するようで重ならない。児戯にも似た動きを繰り返すと、いよいよクロウは感情を爆発させた。


「エイデン陛下! 私は貴方様こそ魔族の、いえ、万物の長たるに相応しき方と信じてお仕えしてまいりました! それが故に、やれ御子様の育児だ何だと仰られても、唯々諾々(いいだくだく)と従って参ったのです!」


「う、うむ。そなたの忠義には感謝の言葉もない」


「私だけではございませぬ。烏人族はもちろん、将兵の上下なく、それこそ下男下女に至るまで……皆が信じておるのですぞ! なのに、なのに……!」


 クロウの熱い主張の最中、シエンナは少しあらぬ方を向いた。彼女は給金と職場環境くらいしか見ていないからだ。他のメイドも大した違いは無いので、話を盛った上で諌めている事に気づき、居心地の悪さを覚えてしまったのだ。


「戯れに奥の手を浪費されるなど、余りにも非道過ぎましょう! どうか眼を覚ましてはいただけませぬかぁーー!」


 とうとう堪えきれず、大粒の涙が幾筋も零れ落ちた。シエンナはハンカチを差し出す傍で、ジロリと主君に眼を向けた。視線で責めたつもりだが、意外にもエイデンは涼しげな表情で受け止めている。それどころか、思いがけない言葉まで口走った。


「早合点するな、これは歴とした兵器だぞ」


 エイデンの出任せに、涙はピタリと止んだ。そしてクロウの無感情なる視線が主へと向く。嘘や誤魔化し逆効果でしかないのだが、知恵者を騙せるほどの根拠はどこにあるのか。


「兵器、と仰せですか?」


「無論だ。見当違いも甚だしい。眼を覚ますのはお前の方だ」


「それでは伺いましょう。これが兵器たる所以とは?」


 この人造人間に出来る事と言えば、慌ただしい清掃と暴言を撒き散らすくらいだ。どこを勘定しても、戦の要素は見当たらない。しかしエイデンは、そんな不安材料すら気にも留めず、堂々と胸を張って答えた。


「知っての通り、柔金属は優秀な素材だ。軽くしなやかであるのに、硬度も存分なほどに備わっている。更には魔力を活用することで即座に形を変えると言う特質まであり、まさに万能な金属と言えよう」


「まさしく。故に武具の錬成に向いておるのです。伸縮自在の剣など、極めて強力な武具を生み出せます」


「では問おう。この全身金属の生命体に、武芸を仕込んだとしたら?」


「そ、それは……!」


 2人の瞳が同時に見開かれる。クロウは驚愕一色、シエンナはそれ以外に、どこか非難めいた色を含ませている。


「まさに自走する突撃兵器となろう。果たして、人族ごときに止められるかな?」


「で、では、メイドの格好をさせているのは?」


「偽装だ。それらしい姿をさせていては、秘密兵器になるまい」


「なんという完璧な計画……! 我が眼こそ曇っておりました、どうかお許しを!」


 クロウは震える両手を掲げ、深く平伏した。垂れた頭に向けて、エイデンは優しげな視線を送り続ける。背中に流れる冷や汗をおくびにも出さずに。


「構わぬ。いや、私こそ相談も無しに進めてしまったことを、深く詫びねばなるまい」


「とんでもない事でございます。それにしても、さすがは英邁なる我が王。参謀部の浅知恵など遥か飛び越えてございますな!」


「う、うむ。そう自嘲するでない。そなたたちの力は大きいのだぞ」


「お褒めに与りまして感激の極み。さて、私めは急用が出来てしまいました。恐れながら、この辺りで……」


「気遣いならいらぬ、良きに計らえ」


「では、これにて!」


 クロウは歩くのも煩わしいとばかりに、窓から勢い良く飛び出した。向かう先は作戦会議で、これから百の議論を重ねる事は明らかだ。


 その勇ましく飛び去る姿を、エイデンたちは窓辺で肩を並べながら見送った。若々しく飛翔するクロウとは対照的に、彼らの背中は妙に小さい。


「大変な事になったな」


「自業自得じゃないですか」


 どちらも窓を向いたまま口を開いた。そちらにはもはや、石壁によって切り取られた青空があるだけだ。


「こいつの管理、お前がやるか?」


「無茶言わないでください。戦闘指導なんて出来ませんよ」


「私とて、イチから育て上げる程の暇は無い。となると……」


 エイデンは無機質な横顔に向けて、命を下した。


「MKー2よ。お前は以後、兵舎にて暮らせ。城の清掃をする傍らで、戦闘訓練を受けるのだ」


「ゴミ承知しました。下士官(マンモーニ)どものケツ穴を全ガバにしてご覧にいれます」


「やめてよね! アタシまで噂になっちゃうでしょ!」


 こうして身の振り方は決まり、後日体制が整えられた。まず、MKー2という名は何かと不便であるので、マキーニャと改名された。見た目もシエンナと酷似している為に、マキーニャの髪を金色に染め、髪も長めの2つ縛りとした。これにて容貌は随分と変わり、見間違う心配は消えた。だが、そのような話はどうでも良い。着目すべきは戦闘に対する適正についてだ。


 彼女の強さは群を抜いており、瞬く間に国内屈指の武名を轟かせる程になったのだ。攻めればあらゆる防御を打ち破り、守りに入れば、いかなる攻撃も寄せ付けない。まさに完全無欠。この唐突な強兵の誕生によって、兵士たちは沸きに沸いた。


 しかし、完璧と呼ぶには不十分な存在であった。その点については後日、生みの親エイデンの耳目によって直接知る事となる。

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