勤め先が倒産して無職になった30過ぎ童貞、朝5時にピンポン連打する異世界押しかけ妻により、実は異世界を救った勇者だったことが発覚する。「ところで君、誰・・・?」「だから妻ですよ♪」

マナシロカナタ✨2巻発売✨子犬を助けた~

第1章 朝5時・異世界押しかけ妻

第1話 朝5時にピンポン連打攻撃という鬼畜の所業をされる俺。

 ピンボーン。


「( ˘ω˘)スヤァ……」


 ピンポーン。


「( ˘ω˘)スヤァ……」


 ピンポーン――ピンポンピンポンピンポンピンポンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンポーン!


「んあ……? いま……あさ……5時……だぞ……( ˘ω˘)ス――」


 ピンポンピンポンピンポンピンポンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピ――


 ガバァ――!!


「だぁぁ! もう! 朝からうっせぇんだよ! こんな朝早くから人んちのピンポン連打してんじゃねぇよ!? 今何時だと思ってんだ! 朝5時だぞ5時!」


 全チートフル装備でモテモテハーレム異世界転移をするという素敵な夢を見ていた朝5時に、ピンポン連打攻撃という鬼畜の所業を受けて強制覚醒させられた俺――遊佐遠流(ゆさ・とおる)が、


「くっそ、いいとこだったのに! これでくだらない勧誘とかだったら俺は切れるからな!? 言っとくが新聞は取らないしNHKも契約済みだからな!」


 イライラを隠しもせず半分怒鳴りながら玄関の扉を開けると、そこには――、


「おはようございます! そして初めまして! わたしは遊佐エリカと申します。異世界転生・転移の女神様が治める基幹世界『ディ・マリア』から、この世界に異世界転移してまいりました! これからよろしくお願いします、勇者様!」


 ――などとのたまう美少女がいた。


 どれくらい美少女かっていうと、神作画の覇権アニメでメインヒロインをやれそうなくらいに美少女だった。


 この例え、分からない人にはまったくピンとこないだろうけど、分かる人にすごく分かると思う。


 しかも露出を上げてフリルをつけて可愛くアレンジされた巫女服を着ている。

 いわゆる1つのコスプレってやつかな?


 好みか好みでないと言われれば間違いなく好みだった。

 もう超ド真ん中のストライク。


 俺はライトなアニオタなので美少女コスプレイヤーとか大好物なのだ。

 一緒にアニメイトとかゲーマーズとかとらのあなを巡ってみたい。


 しかも容姿だけでなく声がアイドル声優みたいに可愛いときた。

 俺はライトなアニオタなのでもちろんアイドル声優も大好きだ。

 一緒にカラオケとか行って残酷な天使のテーゼをデュエットしてみたい。


 つまり不景気で勤め先が倒産し、30歳にして会社都合退職による無職という名の6か月の特別休暇を得たばかりの底辺労働者――今は労働すらしていないただの底辺だが――たる俺の人生とは決して交わるはずがない、超級覇王な美少女なのだった。


 よって秒で許した。

 可愛いは正義、いい言葉だね。


 しみじみと思う今日この頃。


「……ええっとなにこの状況? ああ、うん、分かった。これは夢だな」


「夢ではありません」


「うおっ!? すげぇリアルな反応が返ってきたんだけど!? 俺の妄想力ってヤバくない? なんか自分で自分が怖いんだけど」


 人間の知性や思考力の進化に伴って、そこから生み出される夢もまた進化しているのかもしれないな。

 夢進化論とでも名付けよう。


「いいえ妄想ではありません、現実です」


「ん? でも俺さっきまで寝てたよな? あ、夢の中で夢を見ているってやつか。『多重夢』とか『夢中夢』っていうんだよな」


 ふむ。

 昨日遅くまで深夜アニメを見ていたから、まだちょっと疲れが残っているんだろう。


 リアタイ実況で夜更かしとかアニオタには稀によくある話だから。


 俺は三次元リアルと二次元を混同したりはしない、極めて常識的かつ一般的なごくごく普通のアニオタなので、そう結論付けた。


 幸いなことに今は失ぎょ――こほん、国にも認められた特別な長期休暇中だ。


 今日も明日も明後日も、どころか半年ほど働かなくても国から失業手当というお金を給付してもらえる特権階級なのだ。


 実のところ、10年働いた会社が倒産したのは俺なりに結構ショックだったので、精神的な面からもしばらくはゆっくり過ごそうと思っていた。


 となれば疲れをとるためにももう一度寝なおすのが一番だな。

 夢の中だけど。


「ってなわけで、おやすみなさい」


 これ以上ない結論を得た俺はドアを閉めて寝に戻ろうとした。


 この美少女が出てくる夢も捨てがたいけど、俺としてはやっぱりさっきの全チートフル装備のモテモテハーレム異世界転移の続きが見たいなぁ。


 惨めな現実を、せめて夢の中くらいは忘れていたい……。


「ってちょっとちょっと、ドアを閉めないでくださいよドアを」


 しかし美少女は玄関にガツンと足を突っ込むと、ドアを閉めるのを妨害してきやがったのだ。


「えっと? 足が邪魔でドアを閉められないんだけど?」


「ドアを閉められないように足を入れましたので」


「……これはいわゆる一つの不法侵入というやつではありませんか?」


「は、入ってませんよ! 入ったとしても先っちょだけですから! 先っちょだけならいいでしょ、ね? ねね? それに入っちゃったんだから、もう全部入れても一緒ですよね!? じゃあ入っちゃいます!」


「パパ活で強引に本番しようとするおっさんみたいな気持ち悪いこと言ってんじゃねぇよ! いいからその足を引っ込めろ!」


 ちなみに全部想像です。

 パパ活とかとてもじゃないけど怖くてできないので。


 見ず知らずの若い女の子と会って話をして、さらには大人の関係になるとか、コミュ力皆無のアニオタにはハードルが高すぎると思わない?


「だって足を引っ込めると、ドアを閉められるじゃないですか!」


「ドアを閉めるからその足をひっこめろって言ってるんだよ!」


「だから足をひっこめたらドアを閉めるじゃないですか!」


「ドアを閉めるから足をひっこめろっつってんだよ!」


「お願い中に! 中に入れてください! わたし、中がいいんです! お願いです、中に! 中に入れてぇっ!」


「ご近所様が聞いたら盛大に勘違いするようなことを、朝早くから大声で叫ぶのはやめてくれえっ!!」


 俺はたまらず悲鳴を上げた。



――――――――――――


お読みいただきありがとうございます!


「人生のどん底にいたら、ある日突然7億円持った美少女が異世界から押しかけ妻としてやってきたらいいなぁ……」


と思った人はぜひフォロー&評価(☆)を!

なにとぞ~(>_<)

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