━━ 第一章 ━━
━━奥深キ静ケサ━━
━━大雨の中、僕達は走った。
疲れたと弱音を吐いても、お兄ちゃんは手を引くことを止めず、森の中を休むことなく逃げ続ける。
開けた場所に出て、向こうに橋が見えた。
もっと、もっと遠くへ行かないとッ…。
吊り橋を渡っている最中、後から何かが迫って来る。
お兄ちゃんは、僕を向こう岸へ先に行かせると、時間を稼ぐため、盾となるため、橋の上に留まった。
木陰から得体の知れぬ怪物が姿を現す。
橋の中心に立つお兄ちゃんを目にして、ゆっくりと近付いていく。
そのとき、強風で橋は煽られ、ロープが何本も千切れてしまう。
お兄ちゃんは、体勢を崩してしまい、激しい濁流の中へと落ちてしまった。
川は、思っていたよりも深くて速い。
流されていくお兄ちゃんに気をとられ、怪物も後を追う。
雷雨と暴風の中、あっという間に2人の姿が見えなくなり、残された僕は泣き叫んだ。
轟音で声をかき消されてしまうが、僕の悲しみは、頭から消えることはなかった━━。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます