第2話 金太郎
森の中をさ迷っていた男の前に女神が現れました。
「どうしたのですか。」
「女神様、子どもとはぐれてしまったのです。探しているのですが見つかりません。」
女神は姿を消すと、一人の子どもを連れて現れました。金色の前掛けをつけた、きりりとした顔の男の子でした。
「あなたが探しているのはこの金太郎ですか。」
男は首を振りました。
「では、この銀太郎ですか。」
次に連れて来たのは銀色の前掛けをした愛らしい顔の男の子でした。
「違います。私が探しているのは鉄太郎です。前掛けは黒です。どこか間の抜けたぼうっとした顔をしています。」
女神は鉄太郎と他の二人の男の子を連れて現れました。
「あなたは正直者ですね。褒美として、金太郎と銀太郎も連れてお帰りなさい。」
そう言うと女神は完全に姿を消しました。
「それで」
男の妻は話を聞き終わると口を開きました。
「私がそんな話、信じるとでも思っているの。」
妻の顔が見る見るうちに変わりました。恐ろしい山姥の形相です。
「やはり駄目か、桃太郎にすれば良かった。」
怒号の嵐の中、男は肩を落としました。 そんなことは何も知らず、家の外では三人の子どもたちが無邪気に仲良く遊んでいました。
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