手紙
松田未完
いちご大福より
最後まで売れ残っていた私を買ってもらってありがとうございます。あなたに食べていただいたいちご大福です。
いかがでしたか?
おいしかったでしょうか?
いちご大福が何よりも好きなあなただからこそ、私を選んでもらったのだと思って感謝しています。
そのあなたに伝えたいことがあって天国から手紙をしたためました。
あなたに食べてもらいたくて、店主さんはわざわざあなたの最寄り駅にお店を開いたそうです。
和菓子好きでいちご大福が好きなあなたなら、寒いこの時期なら必ず買ってもらえるだろうと。
店主さんはどうしても私をあなたに食べてほしかったそうです。あなたには、なみなみならぬ思いがあったと言っていました。
あなたのお陰で莫大な借金を背負い、取り立て屋に追い回され、一家離散し、仲間からはなじられ、路頭に迷って生ゴミを漁りながら泥水を啜る貴重な体験ができたと言っていましたから。
そこからあなたのことだけを考えて生きてきたそうです。
私はおいしかったでしょうか?
天国で私と会えると思っていましたが、それは無理そうです。
さきほど神様に聞いたら、店主さんのいる地獄に決定されたと言ってました。
店主さんは先に向こうでお待ちしているそうです。
体が痺れてきましたか?
この文字も読めなくなってきてませんか?
それでは、また来世で私を食べてくださいね。
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