地獄
カモノハシ
第1話 凶介
悪人、と言ってもピンからキリまである。
農村の畑から食料を一度や二度盗んだものから寺に火を放ち面白がって踊り狂ったもの、しかし貧しい百姓からどんぞこ食料を奪い取り、数百人を死に追いやった大名などについては弁解のしようがない。
そうして自分の快楽を求め人々を苦しめた人は死後、皆地獄へ行かされた。
しかし当時の地獄には一つ問題があった。
罪の度にかかわらず罰が皆同じだったのだ。「人を苦しませた分自分も苦しめ」というのが地獄のモットーだったが数百人苦しませた人が数回食い物を盗んだものと同じ苦しみが地獄で与えられていたのなら意味がない。
そこで地獄で働く唯一の人間である凶介はある制度を導入することを考えた。地獄で働くものは他、皆、鬼であったため鬼よりはるかに知能レベルの高い人間は地獄中央幹部総監という偉い役を担っていた。
彼の導入した制度とは以下のようなものであった。
三獄制
1.罪人を悪・狂悪・最悪の三段階の門に分け、それぞれに罰を用意する。
2.地獄に来る者には没前歴書が発行されそこに記された罪度や赤門での面接により自分の門が定まる。
3.赤門での面接官、及び定めは地獄門前総監が務める。
そして凶介は自身、地獄門前総監の証となる赤玉の首飾りを地から湧き出るマグマから作り、初代地獄門前総監となった。
赤門における定めは次の日から始まり、以後、四百年間の間死人の列は途切れず、悪の門からは泣き叫ぶ声が、狂悪の門からは肉のちぎれる音や猛獣の咀嚼する音が赤門まで響き、最悪の門と言ったら記述の仕様がない。えも言われない、あの世に存在する猫の毛まで逆立たせ、元気にブンブン飛び回っていた蜂さえも気絶させるような声音をすべてかき合わせた、どの言語のどの形容詞を用いても形容し難い、音、声でもない―風とでも言おうか―ものが吹き上げていた。
この話は、制定四百年後、初めて死人の列が途切れた際、最後に並んでいた人の話である。男の名は秀喜、農家の元に生まれた一人っ子であった。
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