第五十三話 聖戦舞祭:激化してゆく攻防。そして....
「これでも受けてみなさいーーーー!!」
そう叫んだ梨奈は鞭を両手に握り持つのに変えて、そこに青白い神使力が集積した。一瞬の後、はじけるようにそれを有栖川さんに向けて<キリスカ>という鞭を振るった梨奈なのだが、先端からは大きな火球が放出され、猛スピードで有栖川さんに飛んでいった。
あれは前の現神術学で習った<赤色中燃炎球(ダリスターズ)>だ。そう。この2週間の間に俺ら二人は無詠唱でそれを発動することができるまでに訓練してきたのだ。さっき梨奈の使った<束縛繋緑色爆弐連出(シシメニオス)>といい、<神の聖騎士>として召喚された俺ら二人はこの2週間に色んな現神術を習得してきて、なんか不思議な達成感が胸に宿るようになった。
まあ、確かに大きさという点なら、前の試合でエレンが使った<中級紅色強暴巨弾(アロナリズ)>の紅い球に比較すれば、俺らの火球はゴルフボールも同然に見えるけど、相手が<ナムバーズ6位以上>でもない有栖川さんなら十分だしそれでも中級な技に違いないので、十分な威力を持つと俺らは信じてる。
「<四斬絶殺の舞>! 一斬」
ビシャアアアアーーーーー!!!
「「---!?」」
梨奈と俺はすごく驚いた。なぜなら、<紅蓮禍刀(グレンカトウ)>を手に持っている有栖川さんはなんと、火球が目前にまで迫っているのに対し、刀に神使力を纏わせてから短くそう呟きながらの振り上げによって、火球を苦もなく霧散させたからだ。
「二斬ー!」
「----!?」
それだけいって、光のような速さですでに莉奈の眼前にいる有栖川さん。俺もなんとかかろうじて目で捉えることができたし、梨奈ならきっと、
「ひゃー!」
後方に飛び退ることで見事に避けきってみせた我が幼馴染。有栖川さんは刀を下段向きに振り下げたにしたのだから、きっと梨奈の膝蓋骨を狙って動き回らなくなるようにしたいのだろう。まあ、避けられたから目論見が外れたな。
「三斬ー!」
またも光速のスピードで刀を一閃させた有栖川さんなんだけどー
「そこー!」
カシャーーーーーーーング!!
梨奈が鞭を振るって、力強い衝撃で以って、有栖川さんの剣筋をそらさせた。上手いぞ、梨奈ーーー!
「四ー」
「させないわーー!」
「--!?」
ぬーーーっと!
またも追加攻撃を加えようとしたか、そう言いかけながら剣を鞘から抜き放つ姿勢となった有栖川さんなんだけど、それを梨奈が<キリスカ>で以って、刀身に巻きついて振られないようにしてやったのだー!気が回るようで、偉いぞ、梨奈ーー!
「喰らいなさいー!<赤色中燃炎球(ダリスターズ)>ーーー!!!」
バココーーーーーーーー!!!!!
鞭を通して、巻きついたところにある先端部分が火球を有栖川さんの目と鼻の先に出現させ、爆発を起こさせたーーーー!
ゴウゴウゴウゴウゴウ...............
有栖川さんを巻き込んで、その舞台の3分の一が天高く昇る炎に燃え盛り、辺り一帯を燃やしつくしたようだ。まあ、会長の「神使力反発物質強化(ミルゼイーシ)」も発動中なので、それで舞台を傷つけることなどないのだが。
でも、いくら<リンガ>の影響下にあって、物理的なダメージが起きないで実際には火傷することもないだろう有栖川さんとて精神的ダメージが入ったのに違いないぜー!だからーー
ゴウゴウゴウ.........
「くーー!」
煙が晴れて、苦しそうな表情を浮かべている有栖川さんは自らの武器である<紅蓮禍刀(グレンカトウ)>が梨奈の巻きついた鞭に絡められて動かせないままにあるという制限を受けて、未だに反撃できずにいるようだー! さっき彼女の発した自信たっぷりな自慢気な言動とかどこにいったのやら! 様みろー!はははー!
「まだ終わってないわよ、はあああー!<赤色中燃炎球(ダリスターズ)>ーーー!!!<束縛繋緑色爆弐連出(シシメニオス)>---!!!」
同時発動の現神術。
<赤色中燃炎球(ダリスターズ)>は武器限定の技ではないので、素手だけでも発動できるが、<現神戦武装>を用いて使用した場合、威力が素手のものよりも強力となる。
でも、<束縛繋緑色爆弐連出(シシメニオス)>はれっきとした<武器限定の現神術>なのだ。前にも梨奈がそれを使って有栖川さんを攻撃したけれど、ダメージも少しは入った。それのみならず、第3階梯の現神術である<赤色中燃炎球(ダリスターズ)>も一発だけついさっき食らった有栖川さんなのだ。
痛みが蓄積していくばかりで、堪えるのつらくなる有栖川さんが、今は追い込まれるようにまたも2発の異なる現神術をいっきに同時に喰らうというんだ。
並大抵な<ヴァルキューロア>では想像もつかないような強烈な激痛が有栖川さんに襲うことになるんだ。
バココーーーーー!!!!! バコココココーーーーーーー!!!!!!!
真っ赤な大規模の焔と緑色な爆発2回が同時に湧き上がり、二つの異なる術による波動と波長が混ざり合ってから<混合現神術>の<大赤炎滅緑光の爆>へと進化し、
バゴゴゴゴゴゴゴーーーーーーーー!!!!!!!!!!
そう。
それよりも大きな赤色と緑色の炎が巻き起こり、またも有栖川さんと舞台の半分以上を巻き込んで、覆い尽くしたーーーーー!!
やったーーー!
これで勝つんだよね、梨奈ー!?
<混合現神術>を発動する条件は、術者が同時発動する祭の二つの現神術の名前を必ず唱える必要があり、またその術者の意思で発動したいと思う時にのみ発生する。だから、最初と違って梨奈は鞭を有栖川さんに巻きついたままに<赤色中燃炎球(ダリスターズ)>の名前を詠唱したんだ。 まあ、<混合現神術>として使える技はそもそも限られているから、めったに使われないらしいが。
まあ、確かに前の試合で空を埋め尽くしたエレンの<中級紅色強暴巨弾(アロナリズ)>のより、ちっぽけな爆発ではあるけど、それでもこの世界にきて一ヶ月間だけ経つ俺ら<神の聖騎士>4人からすれば、元の地球にあった自動車が事故で衝突し爆発した際のものよりもめっちゃくちゃな規模と威力が出たんだ。それも単純な科学的な爆発じゃなく、<神使力>が込められたものだ。この世界にきて普通な爆発では傷つかない体質となった俺らに、<神使力>のこもった攻撃は大いに利くはずだ。
隣のエレンに振り向いてみると、
「ふふふ.....まだ倒せるかどう分かりませんけれど、あれで相手に多大なダメージを加えたはずですわよー!なら、森川さんのあれが必ず<勝利への大一歩>となるんですわ。」
彼女も俺の視線に気づいて、そういって微笑んできた。
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