第二十七話 早山ルーイズサイド:八方塞がり

アイシャ・フォン・ルゼーヴィンヌの視点:

(ほう......ようやく学園の3位であるシェールベット殿のお出ましか.....。確かに、去年....つまり、一年前に彼女が一年生としてこの学園に入学された時は神使力量も少なくて、当時はワタシより遥かに弱かったんで<ナムバーズ>7位だった頃もあったが、この国の特殊部隊とかっていう方々から特訓を指導してもらったらしいので、それで5ヶ月前から、ランキング戦という形で他の<ナムバーズ>を負かしてのし上がってきては最後にこのワタシに決闘を申し込んできたんだけど、あの時は本当にいい戦いぶりを見せてくれたなぁ........)


(で、この状況ってどういうことしたら最適な結果に持っていって、かつ丸く収まるのか、よく考えるんだ......。...............<神の聖騎士>として召喚されてきた異世界人は他のヴァルキューロアと粘膜接触したり、体液交換・摂取することで両方が爆発的な神使力量の増幅という効果が発揮されるのをお母さんから教えられたばかりだったが、それを在籍生の<神の聖騎士>である男子二人のどっちかに試していいのかとお母さんに聞いたら、してもいいけどくれぐれも彼らが<神の聖騎士>であるということをリスト内に記された人物以外には明かさないことや彼らの<そういう体質>をまたもリスト内の者以外には触れないでくれと念を推されたっけー?じゃないと、お仕置きされるとお母さんから厳しい視線で言われたのを思い出すと、なんか怖くなったきたぁ.........。なので、ここを無難にやり過ごそうー! うむ!そうだなー!)

________________


数秒前は不敵な笑みを浮かべたけど、今度はなんか考え込んでるような難しい顔しだしてるな、ルゼーヴィンヌ先輩。エレンはこの学園の生徒会の副会長なので、彼女の指示に従うのが合理的な判断だと思うが、まさかそれに逆らおうとこの場から脱出を図ろうとするのーー?あるいは、エレンに連行されることなく許してもらおうと弁解する言葉を考え中なのかーー?


「にしー!どうしますか、ルゼーヴィンヌさん~~?急に黙ってるなんかして。学園の生徒会副会長であるエレン様のお言葉が聞こえないわけないでしょー?」

「その通りです。我がゼンダル王国の第一王女であるエレン姫殿下のご指示は貴女のお耳にお入りになってらっしゃる筈です。殿下と同じ立場であるアスリン王国の第一王女である賢い貴女なら、副会長の仰った通りに、今すぐ歩き出して生徒会室へ参りましょう。ワタシ、ネフィール殿やエレン殿下が付き添いますので、くれぐれもお逃げになろうなんて甘い考えをしないで下さい。」


そう。ルゼーヴィンヌ先輩の両側には<ナムバーズ>7位であるネフィールや4位であるローザさんが揃って<現神戦武装>を突きつけてる最中なので、下手な行動に出たら容赦なく攻撃されるだろう。更に、そちらへと近づいていく副会長エレンの歩みを邪魔しないように人垣が割られることも加えて、もう逃げ場なしと観念するしかないはず。なのに.......ルゼーヴィンヌ先輩は微笑を浮けべながらあそこで微動だにせず、ただただ突っ立ってるままで、一歩も踏み出そうとしない。


「ルゼーヴィンヌさんー!何をそこでニヤニヤしてますのー!?早くこっちへきて下さいましー!この学園にて、王族だと貴族とか関係なく皆が等しく扱われるべき校則があるので、貴女を実力行使で連れていっても外交問題にはならないことを忘れないでもらいますわー! ファイットレームー!セッラスー!3秒数えたらまだ動き出そうとしないのであれば、多少手荒な手段でルゼーヴィンヌさんを連れてきてもいいんですから、カウントダウン開始しますわよーー!」

「了解、エレン様!3~~」

「畏まりました、エレン姫殿下!2-!」


カウントダウンが始まった!で、さっきは梨奈があの変な王女の掴みから開放されたので、こっちへ向かって戻ってきてる。

「ルーくん!じゃなくて、隊長ーー!さっきは無事だったのー!?乱暴されたりとかしないー?後、あんたは......その.......まだキー」

「1-!もう時間切れになりかけてますわよー!今すぐ移動する素振りを見せなければ、生徒会の権限で以って、力づくで連行させて頂きますわー!」


梨奈が側にきてエレンも最後の忠告を出したようだが、まだ何もしようとしないままの王女なのである。終わったなぁ、ルゼーヴィンヌ先輩.......。いくら<ナムバーズ>2位だからって、試合以外の場で生徒会の面々の指示に従わなければ、休学処分を食らいそうでマジ単位も落とすわ、自国の名誉にも汚れがつくわで、逆らおうとしたら、マジであっちの国の王位継承権もある王女としての尊厳が損なわれかねない。


「-0!もう手加減しませんわよー!覚悟なさい、ルゼーヴィンヌさんー!二人ともー!いきますわよー!」

「「はい~~!(御意ーー!)」」

短く了承の意を示したネフィールやローザさんがいる。次に、


「やあああーーー!」

「はああーーー!!」

鎖に繋がった短刀や槍をそれぞれ持っている二人はルゼーヴィンヌ先輩の身体を貫こうと突き出されたがー その直後ー!


「よっとー。」

「「「「「「「---!!!!!!!---」」」」」」」


あそこにいる3人の新仲間だけじゃなくて、異世界組フレンズ4人である俺、梨奈、遼二や有栖川さんまでもが驚愕してる。


それもそのはず、隙間の短い至近距離に左右から雷撃のような速度で攻撃を仕掛けられても、涼しい顔して見事に避けてローザさんの槍の先端の部分に片足だけで爪立ちしているからだーー!というか、もう片脚は後ろに回しながら上げられているので、スカートがものすごい形でめくられて、その履いてる紫色のタイツに股間のところのパンツが見えそうだーー!わあおおーーー!


「よほほ~~!遊びに付き合っても構わないんだが、生憎とこっちにも都合があるので、お暇させてもらおうとするよー。」

そう言うやいなや、斜めへ天高く跳び上がっていって、目に捉えきれない勢いで遥かあっちの方の草に着地し駆け出そうとするが、その時にーー!


「よほー!?」

バターーーン!


まるで重い重力の影響に引っかかったかのように、走り出そうとするルゼーヴィンヌ先輩は踏みしめていた草へ顔から落ちて、四つん這いになるように倒れて身動きがとれないように立ち上げれぬ様子である。なんでーー!?


「.........まったくだなぁーー。騒ぎが聞こえてきたから、何事かと思って様子を確かめにやってきてみれば、また貴公なのかー? ルゼーヴィンヌくんよーー。」

「会長.......」


よく響く明瞭で透き通る声で話しかけてくるのは、他の誰でもなく、この学園最強にして、<ナムバーズ>1位であり、生徒会長でもある、シュフリード王国の第二王女、ローズバーグ・フォン・ラシュテールなのである。呆然としてるエレンの脇を通っていきながら、銀髪ロングを風に揺らされながら人指し指をあの変人先輩に突きつけながら真っ直ぐにあちらへと優雅に歩いていくようだ。


渡りに船って、正にこういうことをいうんだねー。


で、この場でこんなイベントが絶賛進行中に、とある教室にて、

「すや........すや........」

自席のテーブルに突っ伏しながら涎も垂らして熟睡しているエリーゼがいるのであった。


_________________________________________________

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る