第5話 神滅鬼と 『神に仕える戦乙女<ヴァルキューロア>』

「大ピンチですね。」

「うん。ははは、もしかしてこれって全て僕たちの夢の中でーいって!何するんだ、有栖川!?あぁ!」

「そう。これは夢などではないようですね、春介君」

「はは、あたしもこれが全部夢だったらどんなによかったかとも思ってたけどね。でも、現実なのでしょ?ね、ルーくん?」

「あ。ああ.....」


こればかりは同意するしかない。俺だってこれは全ての悪い夢だったらと願いたいんだが、生憎と目の前に起こるものは現実に他ならない。どんなに現実逃避しても、事実から目を背けてもどうしようもなく、厳然たる事実が今俺等に迫ってきてるんだ。そう。その事実とはーーあのムカデのような外見をしている化け物(触手つき)の行進速度は恐ろしいほどに速くて、目視計測からして化け物のいる山脈はここから5キロ離れてるかもしれないとはいえ、あんな動きからしたらこっちにまで到達できるのに5分もかからないっぽい。


とにかく、あれはまじでヤバイ!いいえ、ヤバすぎる!

逃げなきゃ.....死ぬ!といか、喰われる!

俺は梨奈や他の二人と目配せを交わして、叫んだ。

「みんな、走れ!出来る限りあれから距離を取れ!!!」

「「「了解!!」」」


叫び終わった直後、俺らはすぐさまあれとは逆方向へ走り出して、なるべくあれから距離を大きく開けるために死に物狂い&猪突猛進な勢いで蜘蛛の子を散らすかのように逃げていく。走りながら隣を見ると、

「ルーくん。あたしの事は見なくてもいいから、前だけ集中して見て!あたしのせいであんたが遅れないよう構わないで!」

「あ、ああ!梨奈!絶対にここから逃げ切って家へ帰るんで、死んでたまるかよ!そうだろ、遼二!有栖川さん!」


「おう!異世界だろうとなんだろうと絶対に我らの愛する日本へ帰って見せるんだ、僕たちは!」

「ええ!さっき、カフェでケーキを少しばかり食べていた私達でしたが、お陰で今は走るのにあまり苦労してないというのは不幸中の幸いですね!」

みんな思い思いにそれぞれの気合と共に返答した。ああ、やっぱり仲間が一緒にいると心強いね。俺が一人だったら、きっと怯み過ぎて走るどころではなくちゃって絶望してたかもしれないが、こうして4人揃ってると的確な判断や行動が取れる。


「んーーえ!?やばいです!皆、もっと早く走れ!あれがもっと近くにやってきます!」

振り返ったらしい有栖川さんがそう知らせてきた。後ろを振り向いたら、やばい!!本当に距離を詰めてきてるぞ、あれ!

「くそ!みんな、諦めずに走り続けろ!なんとしてもここを逃げ切るよ!!!」


「おう!こんなところで死ぬとかまじで嫌だから、絶対に諦めるもんか!!なあ、有栖川!」

「同感です!この有栖川姫子、有栖川財閥の跡取り娘として、あれに喰われるほど安い身体じゃないですね!!後、春介君も早山君も森川さんもね!!私達は日本に帰るんです!絶対ですよ!!」

「ルーくん!あれ見て!!」


梨奈がそう叫んで空を指差したが、なんだろう?あーあれ!なんか飛んでくるものがいるぞ!よく目を凝らして見たら、黄色いローブを着ている女の子が真っ直ぐにこっちに向かって飛んできた!なんか右手にロッドみたいなものを持って俺らの後ろに向けて突きつけているぞ!


「はあーーー!!現神術(げんしんじゅつ)、<ノルン>!」


距離を縮んできたと思うとなんか訳わかんない言葉を叫んでそのロッドの切っ先を後ろの化け物の方に突き指したままのローブ姿の少女である。なんかちょっとかっこいな!そういうの漫画で読んだ事が何度ももあったんで憧れちゃうよね。

「ルーくん!見て!」

隣の梨奈に促されたままあの少女の事を凝視してると、なんかロッドから光り輝くものが閃光下かと思うと、真っ白で大きな弾みたいなのが放出されたぞ!


しかも、あの化け物目掛けて!っていうか、大きさだけじゃなくて、凄まじい速度で思わずそれを目で追って後ろを振り向いたらーー!


ドッカアアアアアーーーン!!


という耳を劈いたかのような爆発音と同時にあのムカデの外見をしている化け物に着弾した!その副産物として、近くにある地面の砂や岩が吹き飛ばされて破片や煙と化してあっちこっちへ飛散してる。化け物のサイズがあまりにも大きすぎるため、輪郭自体が全体、煙に覆われずに済んだのでこっちからはまだあれが全然ダメージを受けていないと言う印象が伺える。こっちから、目視計測だとなんか距離が2キロっぽいけれど、本当ぅ、でけぇなあれは!


しかも、あれの全体の幅は3メートルで、首から尻までの長さもおおよそ何キロメートルになるかこっちからは把握しづらいしで、マジでやば過ぎるよ、あれ!


それにしても、凄い女の子だな。セミロングな青い髪をしていて美少女だなぁと評されても差し支えないほどの見た目だ。うん?彼女、こっちへゆっくりと下降してくるぞ!


「ふー。皆様、大丈夫でした?」

着地したやいなや息を噴き出したローブ姿の真っ白な肌色を持つ女の子。そしてそう聞いてきた。

「え?あ、ああ!そうだね、無事だ。君は?」


「私はユリンと申します、<神の聖騎士>様。色々説明させていただきたいとは思っておりますが、それと、お互いの自己紹介も今後にしますね。先に、<あれ>をなんとかするのが先決みたいですし。(それにしても、他の3人の<神の聖騎士>様と違って彼の肌色が真っ黒いなのは少し興味深いですね。この後、それについて聞きたいと思います。だって、ああいう肌色を目にするのは初めてなのですごく気になりますね)」


そういったユリンと名乗った女の子だけど、なんか俺の顔を凝視したまま興味津々とした感じで俺の事を見つめてるけど、何?俺の顔に何かついてんの?数秒したら、急に鋭い目つきになって、後ろのあれを凝視して臨戦態勢な姿勢を取っているかのようにロッドをあっちへ突きつけたまま、ローブを着ているのにも構わず両脚を少しだけ開いたまま直立不振な体勢で次なる一撃を打つべく集中してる感じ。


ああ!本当にかっこいいな、君!彼女の凛とした佇まいに少し顔を熱くしてドキっとしながら釘付けになってると、ん?急に袖を引っ張れてるので、左側を見てみると、我が幼馴染である梨奈がなんかむくれてる顔してるぞ!

「もう!何鼻の下伸ばしてんのよ、このスケベルー!」


そう小声で文句を言ってきた梨奈がいきなり俺の左耳を引っ張ってて、ちょ、痛いいってな!何そんなに怒ってんだよ梨奈!お前も彼女の姿がかっこいいと思うだろ!なんで、どうして急にご立腹になられていらっしゃるの、梨奈様よ?ああー理不尽!

「いや、別に何もないだろう!?後、何がスケベルーだ!ちょっとだけかっこいいなぁと思って彼女を見てただけだろう!?別に変な事とか考えてないからな、梨奈よ!」


「本当なのかなー?」

じと目をしてこっちを見てるけど、なんかこういう表情をしてる梨奈も超かわいいな!ちくしょー!でも、俺としてはもっと蔑んだ目をしたまま罵ってくれた方が好きというかー!いかん!大事な時に何マゾ思考になってんだよ、俺は。はっとなって後ろを振り向いた俺なので、梨奈も俺に倣ってそれをした。


ムカデの動きが停止したまま動かずにいると確認できてほっとしたので、軽く周りを見回して見ると遼二と有栖川さんが肩を並べて密着したまま何かヒソヒソ内緒話してるっぽいぞ!まったく、こんな非常時でも相変わらずベタベタだな、このバッカップルめ!


数分経ったけれど、煙が霧散して消えてもムカデが動かないままで固まっているだけだ。なんでだろう?無傷なら、また襲いに来てもいいのに、なんで何もしてこないの?

「ユリンさん、でしたっけ?今どういう状況にあるか分らないので、色々聞きたいが、このままにしておく訳にもいかないでしょう?逃げるなり反撃に出るなり、いつまでもこうしてどっちも固まったままじゃ消耗していくばかりですし。何故なら、俺たち4人は歩きつかれてるだけじゃなくてさっきあれから逃げるのに体力使いっぱなしなんで、ちょっと休んだり食事とか取ったりしたいが、どうでしょうか?」


位の高いローブを着ているっぽいので、敬語で話しかけたら、

「ええ、私もそれについて充分に理解していますよ、<神の聖騎士>様。ですが、背を向けて逃げようと走っても、あれー<ラングル級>な神滅鬼である<サカラス>なら、直ぐに追いつかれますし、かといって無謀に反撃に出ようと、余計に刺激してしまうばかりで、傷を負わせるのは不可能です。何故なら、私の保持してる神使力(じんしりょく)の量と使える現神戦武装(げんじんせんぶそう)と現神術には生憎戦闘には向かないタイプなのですし。」


ん?いきなりたくさんの訳わかんない言葉の羅列を垂れ流しているユリンさんだったが、一体何の事だ?隣の梨奈や他の二人を見ると、

「あたしもわかんないよ。聞いてみたら?」

「僕もそれ気になるよ。この世界における様々の事象とかさ。」

「私もそうと思いますね。どうせ、あの化け物はまだ襲い掛かってくる気配がないみたいですし、聞いてみる価値があると思いますよ。さっきの魔法みたいな物を打ち出した事についてもすごく知りたいですし。」

そう反応を示した皆に触発されたかのように、ユリンというローブ姿の少女に’向き直った。


「ユリンさん、差し支えがないなら、少しだけ質問させてもらいたい事がありますが、いいでしょうか?」

ムカデに視線を釘付けにしたままユリンは少しこっちへ目線を移動させてはまた元に戻して黙ったままであったが数秒もたったら、やがて口を開いた(化け物の様子に集中しながらで)。


「どうやら、今のところは襲いにくる様子がないので、少しだけこの世界の現状や様々の理や知識について話す余裕が出来ましたので、貴方と他の<神の聖騎士>様3名様はもっと私の近くにきてもらえますか?」

他の三人に軽く目配せをしてみたら、直ぐ様こっちへ集まってきた。


で、ユリンの右側や左側に陣取った俺ら4人は彼女の綺麗な顔を眺めながら、口を開いてくれるのを待ってると、


「古来より伝えられている伝承によりますと、20,000年も前から、この世界、<リルナ>は一つの領域でできていて、三つの種族で構成されていました。高い知恵や神使力を持つ支配層たる<神族>、すこしそれより衰えていながらもそれなりに力を持つ<ミスダン族>や私達の始祖たる<人間族>でした。この三つの種族は一人の偉大なる大神に統べられていました。あのお方のお名前はラニムと呼ばれました。それだけじゃなくて、三つの種族はラニム様の母親、シェレアーツ様が作り出したものだと言われていますよ。シェレアーツ様と唯一、直接会話ができるのは息子であるラニム様だけと言い伝えられていました。長い年月が経って、何事もなく全てが平和に暮らしていましたが、ある出来事を境に、矢継ぎ早の如く、悲劇が起こりました。」


「悲劇?どんな事が?」

と遼二が聞くと、


「それはとある人物によってもたらされたものでした。当時の<ミスダン族>が長、カン・ウェイ・という人の犯した大罪でした。彼は<神族>の一員であるヨノス地域のソフィー姫に恋をしました。高い知能や神使力を持っていて、ソフィー姫は自分より弱くても真っ直ぐに愛を伝えに来てくれたカン・ウェイ・に感銘を受けました。付き合っていく内に彼女もまた、彼と相思相愛の関係に落ちたということらしいでしたが、とある夜のを境に、彼らの関係が千切れました。」


「関係が裂かれたということですか?一体何がきっかけなんですか?」

そう有栖川さんが真剣な顔になって訊ねたら、ユリンが居住まいを正して、目の前のムカデに目を放さないまま、話し続けた、


「彼女の証言によりますと、とある夜、彼らが普通に会話を交わしていたけれど、いきなりなぜそうなったか、カン・ウェイ・がいきなり暴れだして、ぎらぎらとした目つきになって彼女に襲い掛かっていました。ドレスを破られ、犯されそうになりましたが、自分の強さや神使力を頼りに、少しだけ彼に怪我を負わせてその場である宮殿の一室から逃げていました。」

「なんだー!ただのレイプ魔じゃん!」

「そうね。あたしのルーくんや春介くんはどっちもいい人だから、女性にあんなような乱暴な行為を絶対にしないとは思ってたけど、でもなんか変だと思うんだよね。相思相愛になってたっていうのに、なんでいきなりあんなような行動を起こしたの?絶対変よ!」


お前もそう思うかい?まあ、それはそうだろうな。何の前触れもなく人の性格が変わるわけじゃないし、何か裏があったに違いない。

「貴女の疑問も最もです。でも、その後になって、彼に問いただそうとしても、自国に戻ったらしいので聞きようがないでしたし、何よりその事件から僅か数日もかからない内にカン・ウェイ・は全ての神族に対して、宣戦布告を告げていました。自分達よりも遥か強い種族に、でした。」


「本当におかし過ぎる話しですよね。なぜそのような無謀な事をするようになったのか、益々陰謀論とかを考えたくなるのはどうしようもなくきな臭くなりますね。」

と、有栖川さんの持論に対して、少しだけ考え込んでいるユリンだったが、やげて口を開いた。

「真相がどうであれ、彼が神族に向けて戦争を仕掛けていたのは紛れもない事実です。で、その後、完膚無きまでに叩きのめされた<ミスダン族>の所属していた<ミスダン国軍>でしたが。彼らを率いたカン・ウェイ・はそれでも諦めませんでした。まるで何かにとり付かれたかのように、戦場で大声を出して神族の将軍、ムラン将軍に一騎打ちを申し込みました。結果がどうなったか明白でした。」


「み...本当に惨め過ぎるよ、彼!一体どうしたのよ!まるで理性を失った獣になったみたいじゃない!」

そう梨奈が叫んだが、それに対しては、

「とり合えず、話を長くしないように要点だけ抑えた続きをしますね。カン・ウェイ・にはまだ秘密兵器がありました。それをーー」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴーー!!


凄まじい轟音でびっくりして前を見てみたら、なんーなんじゃありゃー!??


あのムカデがいきなり体全体を飛び上がらせてから地面に強く打ち付けたら、全身の100本の足の先端についている細長い触手をあっちこっちへ縦横無尽に蠢かせているぞ!!これはーーもしかしてただの悪い夢だったらいいなぁと今更ながら思えるようになってきたな!


「皆様、気をつけて下さい!あの<ラングル級>な神滅鬼である<サカラス>が攻撃体勢に入っていますよ!私の後ろに下がって下さい!」

そう注意したユリンなので、俺たち4人は慌てて彼女の後ろに移動した。その内に、偶然といか、俺の真っ直ぐ前に彼女の御尻が目に映った!うおお!やばいね、彼女の御尻!でか過ぎてちょっと目に毒というか、目のやり場に困ると言うか。いって!!!また梨奈のやつに耳を摑まれたよ!今回だけは自分が悪かった、はい!認めるよ!でも俺って健全な青少年じゃん。少しだけスケベになってもいいじゃん!?ただ見るだけだし。


隣を見ると、遼二の奴も俺と同様になんか、有栖川さんに首を絞められているところだ。うわあ!!羨ましいなぁ....俺もそういうのを女の子にされたい、と言えば梨奈に殺されるか....ってか、俺って前々からこんなに隠れどM

になってんの全て俺のエロ本や梨奈の影響によるものなんだなぁと再認識させられてるよ。


シュウウウウウウウウウウウウウウウウーーーーン!


それは一瞬のことだった!

あの化け物から生えた何十本の触手の内に、一本だけが蠢動を止めて閃光の如く速度でこっちへ向けて伸びてきた!


「<イエクト>」


その言葉を唱えたユリンによる物なのか、俺達を中心に、半径5メートルの真っ白な円状型な障壁が展開された!

ガアアーーーーーーン!!!


という耳鳴りを生じさせるような衝突音と同時に激突してきた触手だったけれど、俺ら5人を包んでくれたあの真っ白な障壁のお陰で何事もなく凌げた。

「ルーくん!そーそれ見た!?」

「ん?え....ええ!凄いね!まるでRPGとかに良く出てくるような障壁だな。なあ、遼二?」


「おう!マジで半端ないな、これ!ユリンさんがこういうの展開しなかったら、さっきので絶対木っ端微塵にされてたなあ、僕達が!」

「まったくです!ユリンさん、貴女のお陰でまた助かりましたね、私達。まだ貴女の素性や目的も知らないままで最初は少しだけ警戒していましたが、あれが悪かったなと思い始めてきましたよ。どんな事情で私達を助けてくれたのかまだ分かりませんけれど、少なくとも私達を物扱いとかしなくて同じ人間のように接してきましたのでとり合えずは感謝しますよ。」


そうお辞儀をしてスカートを両手で摘んでユリンに謝罪&感謝をする有栖川さんである。といか、スカートをあんな風に持ち上げたら、パンツが見えちゃうじゃん!?ってか、前々から思ってたけど、あの黒タイツってマジで反則だろ!凝視してみると、なんか光沢は眩しすぎるし、エッチな見た目なんでちょっとあっちへ血流が流れて.....っていうか、遼二の奴、凄い目つきで俺を睨んできたけど、どうしたんだ、我が親友よ?いってーーー!!膝の後ろを屈んで後ろ手で摩ってみたら、どうやら梨奈の奴に前から蹴られた。はい、さっきはすいませんでした、梨奈様......。


ガアアーーーーーーン!!!ドッカアーーーーーン!!ガアアーーーーーーン!!!


けたたましく連続してきた爆音と共にまた何回も放たれた同じ触手からの攻撃だったが、全てがユリンさんの張った障壁によって悉く阻まれていた!しっかし、それを眺めていたら、とある大事な事実に気づいた!今まで凌げてきたのは悪まで一本の触手だけが攻撃を仕掛けてきた。


つまり、何が言いたいのかというと、もし他に控えている蠢動中の何十本の触手が一斉に放たれてこっちへ向かってくるとしたらどうなるの!???


その考えに至った途端、前にいるユリンの御尻ーーじゃなくてユリンさんの後姿に視線を移すと、わずかだがロッドを天高く掲げたまま動かずにいる彼女の綺麗な項や首の後ろに少しだけの汗が垂れている。やっぱり、あの障壁をいつまでも保ってちゃいられないよなぁ...。なら!


「ユリンさん!大丈夫ですか!?俺達に何か出来る事ってないですか!?」

「んん...! 大丈夫です!まだ何とかなりますから、気にしないで下さいね!でも、本当にお気遣いありがとうございます、<神の聖騎士>様!」

「ルーイズ。」

「え?」


「俺は早山ルーイズと言います。こっちは...」

「あたしは森川梨奈よ。」

「僕は春介遼です。宜しくね、ユリンさん!」

「私は有栖川姫子と申します。初めての出来事が目の前にあり過ぎるのでさっき名乗るのを忘れてしまってお恥ずかしい限りです。有栖川財閥の跡取り娘として、恥ずべく行為なので、どうか許してもらえないでしょうか?」


礼儀正しくお辞儀をしてまたスカートを摘んでやがるぞ、有栖川さんの奴!ああ、またあの眩しい黒タイツが目にー!いっっっーーてて!また梨奈に蹴れらてしまったよー!

「早山様に、森川様に春介様に後は、有栖川様ですね!分かりました!貴方達を絶対に守って切りますのでどうかご安心下さいませ!このユリン枢機卿が全身全霊を以って、必ずやグルゴラ神殿へと連れて帰ります!」

俺達の自己紹介に対する返事か、そう宣言したユリンがいっそ気合を入れるかのように表情を引き締めて前を見据える。


ガアアーーーーーーン!!!ドッカアーーーーーン!!ガアアーーーーーーン!!!


一体どれほどの時間が経ったか分からなかったけど、あの一本の触手から行われたしつこい攻撃は止まないままだった。実際の時間はきっと、10分か15分ぐらいだけど、ユリンの震えてる手や脚腰を見る限り、確かにかなり消耗しているな、彼女は。このままはただの時間の問題だな。


で、絶望の色が色濃く他の3人にも表れ始めるのを見ると、俺も覚悟を決めたが、「ガアアーーーーーーン!!!」という轟音と共に前方に大爆発が炸裂した!


「お待たせ、神の聖騎士の皆様よ。わたくし、ゼンダル王国の第一王女、エレン・フォン・シェルベット・が皆様の救援に馳せ参じましたの!」


と、空を見上げたら、エッチな制服を着ている4人の美少女が武器を構えてこっちを見下ろした。というか、さっきから聴いてきた言葉だけど、神の聖騎士ってなんだよ!??


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