5章 いろいろな秋
5章 1話 二学期が始まった
夏休みが終わり、今日は久しぶりの登校日。
始業式の最中、体育館の驚異的な蒸し暑さを体感しながら、まだまだ猛暑日が続きそうだと確信する。
全身から汗が滲む。私はもちろん、周りの生徒もハンカチで汗を拭う。
出入り口となる扉や二階の窓も全部開け放たれているので、たまに吹き込むそよ風がたまらなく心地いい。
まるでサウナにいるようだと感じ始めた頃、始業式はつつがなく終了した。
この暑さで不調を訴える生徒が出なくてよかったと安堵しつつ、先生の誘導に従って順番に体育館を後にする。
外に出るや否や、私は磁力が働いたかのように萌恵ちゃんの元へと近寄り、さりげなく手を繋いだ。
「体育館の中、すごく暑かったよね」
「うんうんっ、茹で上がるかと思っちゃった~」
朗らかに笑う萌恵ちゃんの頬に、一筋の汗が伝う。
太陽の光を浴びてキラリと輝く雫は、宝石のように美しい。
あぁ、やっぱり萌恵ちゃんは世界一かわいい。
いますぐ抱きしめて唇を奪いたい。
無邪気な表情が少しずつ艶っぽさを増していく様子を至近距離で眺めながら、舌を絡めて――っと、これ以上はやめておこう。
ふとした拍子に妄想を繰り広げてしまうのは前からだけど、まだ夏休み中の感覚が抜け切っていないので、うっかり実行してしまう可能性がある。
さすがに人前でキスするわけにはいかない。
「真菜? 急に黙り込んでどうしたの? なにか考え事?」
「萌恵ちゃんは今日もかわいいなぁって」
「んふふっ、ありがと~っ。真菜も相変わらず、めちゃくちゃかわいいよっ」
と、つい押し倒したくなってしまうような嬉しいことを笑顔で言ってくれる萌恵ちゃん。
校内でいかにして自制心を保つか。それが私にとって二学期の課題となりそうだ。
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