24話 にゃ~にゃ~

「真菜~、ご飯できたにゃ」


 洗濯物を取り込んで家に入ると、キッチンの方から萌恵ちゃんの声が飛んできた。

 語尾に『にゃ』が付いているのは、妄想でも聞き間違いでもない。

 今朝の散歩中に猫と戯れているときに閃き、帰ってシャワーを浴びてすぐに土下座して懇願した成果だ。

 萌恵ちゃんには今日一日、語尾に『にゃ』を付けて話してもらう。


「はーい」


 普通に返事をしながらも、私の表情はだらしなく緩んでいる。

 洗濯かごを一旦部屋の隅に置き、折り畳みテーブルを部屋の中央辺りに設置。

 配膳を手伝うため、キッチンへ行く。


「今日のお昼はシーフードカレーだにゃ~」


 か、かわいい……っ!

 はぁはぁ、これはヤバいよ、我ながらとんでもないことをお願いしちゃったよ。


「おいしそうっ」


「んふふっ、ありがとにゃ~」


 かわいいかわいいかわいい!

 どどど、どうしよう、尊すぎて心臓が爆発しそう!

 照れを隠し切れない表情がまた、なんとも言えず素晴らしい。

 私が鼻息を荒げている間に、萌恵ちゃんは二人分のカレー皿をトレーに乗せてキッチンを後にしていた。

 静かに深呼吸して気持ちを落ち着け、サラダボウルと取り皿をリビングに運ぶ。


「いただきます」


「いただきますにゃ」


 このかわいさ、もはや反則を通り越して犯罪級だ。なにがなんでも、私以外に知られるわけにはいかない。




 食後。二人で食器を洗い終えた後は、一緒に洗濯物を畳む。

 ちゃんと洗濯できているか確かめるため、萌恵ちゃんのパンツを手に取り、顔に近付けて匂いを嗅ぐ。洗剤とお日様の香りだった。

 好みで言えば、洗濯前の方に軍配が上がる。


「うぅ、さ、さすがに目の前で嗅がれると、恥ずかしいにゃ」


 顔を真っ赤にして、恥ずかしさをごまかすように手を動かす萌恵ちゃん。洗濯物が目にも留まらぬ速さで畳まれていく。


「あ、萌恵ちゃん待って。それだとしわになっちゃうから、これはこうして――」


 一通り家事を済ませたら、リビングでのんびりとくつろぐ。

 萌恵ちゃんに膝枕してもらって、ついさっき交代した。

 猫をあやすように、あごの下を撫でてみる。


「にゃ~ん♪」


 萌恵ちゃんは口角を緩め、気持ちよさそうな声を漏らした。

 か・わ・い・す・ぎ・るっ!

 萌恵ちゃんが恥ずかしがるから記録は残さないけど、許されるなら音声と映像をきっちり保存したい。




 やがて夜を迎え、電気を消して布団に潜る。

 優しく抱き合ったり、お互いに相手の体を触ったり、就寝前のスキンシップを楽しむ。


「萌恵ちゃん、今日は変なお願いを聞いてくれてありがとう。すごくかわいかったよ」


「んふふっ、どういたしましてっ。ちょっと恥ずかしかったけど、真菜に喜んでもらえてよかったよ~」


「またいつか、お願いさせてもらおうかな」


「いいよ~。でも、明日は真菜の番だからね?」


「……え」


 因果応報って、こういうことなのかな。

 翌日、私は萌恵ちゃんが味わった羞恥を我が身で知ることとなった。

 とはいえ、めちゃくちゃかわいがってもらえたので、結果としては最高の一言に尽きる。

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