23話 ほんの数日だけど

 お盆で数日間ほど、両親の実家に帰省していた。

 私と萌恵ちゃんの実家は隣同士だけど、当然ながら両親の実家となると場所はバラバラ。

 しばらく会えない寂しさを少しでも紛らわせるため、出発の前日はいつも以上に愛し合った。

 そして今日、私たちは数日ぶりの再会を果たす。

 先に到着した私は、窓を開け放って換気をしつつ荷物を片付ける。

 母方の祖母に貰った自家製の梅干しを冷蔵庫に入れ、衣類をタンスに仕舞う。

 動いているうちに汗ばんできたので、窓を閉めてエアコンを稼働させる。


「――っ!」


 家の外からチャリッと金属が擦れるような音が聞こえ、もしやと思い駆け出す。

 続けて耳に入ったのは、鍵を開ける音。間違いない、萌恵ちゃんだ!


「ただい――」


「萌恵ちゃんっ! 萌恵ちゃん萌恵ちゃんっ、会いたかったよ萌恵ちゃん!」


 私は萌恵ちゃんが『ただいま』を言い終えるよりも早く、玄関に姿を現すと同時に勢いよく抱き着く。

 萌恵ちゃんは突然の出来事に驚いたものの、すぐさま玄関に荷物を置いて抱き返してくれた。

 帰省中もことあるごとに連絡を取り合っていたけど、やっぱり実際に会える嬉しさは計り知れない。


「んふふっ、あたしも会いたかった! お出迎えしてくれてありがと~!」


「ごめん萌恵ちゃん、我慢できないっ」


「んむっ!?」


 久しぶりのハグによる興奮に後押しされ、問答無用で萌恵ちゃんの唇を奪う。


「んっ、ちゅ、ぁむっ、ちゅるっ」


 会えなかった時間を取り戻すように、情熱的なキスを交わす。

 二人の声が重なり、触れ合う唇もまた音を奏でる。

 けたたましいセミの鳴き声も気にならないぐらい、私たちは夢中でキスをした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る