14話 ひんやり

 布団に入った直後のひんやりとした感触は、この季節における楽しみの一つだ。

 次第に体温によって浸食されていくので、いまのうちに全身で楽しんでおく。


「お昼に食べたたこ焼き、おいしかったね~」


「うん、すごくおいしかった。また食べようね」


 今日は買い物のついでに、ショッピングモールのフードコートでたこ焼きを買って帰った。

 当然ながら萌恵ちゃんの手料理には敵わないけど、リピートしたくなるおいしさであることは間違いない。

 話しながら、布団の中でそっと手を重ねる。

 そしていつも通り、ピッタリと体を寄せ合う。

 萌恵ちゃんの体温を肌で感じられる幸せと喜びは、季節を問わず至上の一言に尽きる。

 こうして何気なく肌と肌で触れ合えるのだから、ノースリーブのベビードールを購入してよかった。


「暑くない?」


「平気だよ~」


 二人ともすでにじんわりと汗が滲み始めているけど、離れたいという意見はどちらからも出ない。

 体感温度などを考えれば寝苦しいはずなのに、萌恵ちゃんと密着していると毎日ぐっすり眠れる。

 実家にいた頃より睡眠の質が上がっていると感じるのは、おそらく錯覚ではない。

 適度な涼しさが重要なのは確かだけど、私にとっては好きな人と一緒に眠れる満足感の方が重要なようだ。


「ホームセンターに売ってた冷感敷きパッド、そんなに高くなかったよね。買ってみる?」


「いいね~、賛成っ。ひんやり感が持続してくれるなら、いまよりもっと密着しても大丈夫だよねっ」


 いまも密着しているとはいえ、ほんの少しだけ遠慮しているのも事実。脱水症状を避けるためにも、最低限の配慮はしなければならない。

 敷きパッドの効果が期待通りなら、萌恵ちゃんの言う通り好きなだけ密着できる。

 第三者が見たら、現状でも充分すぎるほど距離が近いんだろうけど。


「おやすみ」


「おやすみ~」


 隣を向いて顔を見合わせ、おやすみのキスを交わす。

 もう何度、萌恵ちゃんと唇を重ねただろう。夜空に浮かぶ星を数える方が、まだ簡単かもしれない。

 だけど、キスの最中に感じる幸福と興奮はファーストキスのときからまったく色褪せず、唇を離した後にお互い照れてしまうのも変わらない。

 この先もずっと同じように感じられたら、それはとっても素敵なことだと思う。

 そんなことを考えながら、キスの余韻に浸りつつ眠りに就いた。

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