魔王ですねん。勇者にハニートラップを仕掛けるため、チーレム候補を厳選しまっせ。

椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞

第1話 エルフちゃん、いらっしゃ~い

 魔王ですねん。

 もうすぐ、勇者がワシの城に攻めて来ますねん。

 せやから、ハニトラかましてシバいたろ思いましてんよ。


 これでうまくいったらええんでっけど。


 はあ? ニホンっていう世界のバラエティ番組みたいやって?

 気のせいですわ。和の要素はたっぷりありまっけどな!



「ほな、さっそくハニートラップの候補を選びまっせ。司会はわたくし、魔王サンドマン・ガッツでございます」

「アシスタントのセヤナ・マムです」

 

 自己紹介を終えると、さっそく出てきましたで。

 尖った耳、銀入りに光る髪、エルフさんでんなー。


「ほな、お名前どうぞ」 

「く……エミーリアだ!」


 べっぴんさんやなぁ。怒った顔もナイスや。


「なんか、えらい攻撃的な口調でんなー。眉間に皺までよせて」

「当たり前だ! 後ろ手に鎖で繋がれて、平静を装えなどと! 殺すなら早く殺せ!」

「よろっしいなぁ。そのこじらせ具合。くっころとか今やとちょっと古いんかな」


 わたくしは、指を鳴らして鎖を粉々にします。

 やっぱりべっぴんさんは、開放的なんがよろしいわ。


「出身どこでっか?」

「愚問だ! 貴様が滅ぼしたんだろ! もっとも、覚えてないんだろうがな!」


 かなんなー。話ができまへん。


「人聞きの悪いこと言わんといてんか? わたくしら、世界を籠絡することが目的でんんねん。力尽くで支配とか、いつの時代ですのん?」

「まさか、手を下してないとでも?」

「あったりまえやがな! 何なら今、あんさんのいてはった村がどないなってるか、見したろか?」

 わたくしは水晶を、エミーリアさんに見てもらいます。

 

 ガーゴイル型のドローン飛ばして、村の実況をさせます。昔はえらい魔力を使いましてんよ。ええ時代になりましたなぁ。

 

 おっと、いきなしR18展開ですわ。

 わたくしらの放った魔族が、エルフさんを「おもてなし」させてもろてます。

「いく」とか「くる」とか、大御所漫才師みたいなセリフの応酬を、村の人らがしてますわ。


「そ、そんな。あの貞淑なエルフ村が、ああも簡単に快楽を受け入れるなど」


「あんさんが勇者をハニートラップで堕としてくれたら、解放したりまっせ」


「……約束だぞ?」


 覚悟を決めはったようです。

 やっぱね、オナゴは素直なんがよろしおま。

 

「話を聞いてくれる体勢になってくれはりましたか?」

「聞くだけ聞こうではないか。ただし、本当に解放しろよ!」


 わたくし、約束を守る魔王で通ってます。

 村の人らは、わたしらのおもてなしを、気に入ってくれたみたいなんでっけどね。

 

「特技は?」

「弓を少々」

「ちゃうちゃう。男をどないやって喜ばしまんのか、って」

「私はガリガリだからな。男を満足させるられるか」


「失礼でっけど、殿方とのご経験は?」

「本当に失礼だな! 婚約者はいた! 五歳の時に『けっこんのやくそく』をしたぞ! シロツメクサで作った指輪をくれたのだ。まだ持ってるぞ」

 

 ブーッ!


 わたくし、座席ごと倒れましたわ。


 なんやの、そのエピソード。子どもか。

 しかもエルフの五歳って、結構大人とちゃうん?


「ほ、ほほう」

 

「今は魔族と、致しているが」


 破談、と。メモしときまっさ。


「ほんなら、ウブでっか?」

「そうだな。もう男性を知る機会もないだろう」

 

 見た目美人さんなのに、男を知らんとか。

 これはある意味、初々しさを武器にした方がええんかも。

 

「勇者はオットコマエなんでっけど、どないでっか?」

「ウチの村に遊びに来たことがあるが、紳士だった。やはりイケメンと言うより男前というお前の感想は、当たっているな」


 男を見える目はある、と。これもメモしとかんとね。


「もし、勇者がいいよって来はったら」

「しょしょしょ、しょんなことにゃい!」


 ブーッ!


 わたくし、ふたたび座席ごとぶっ倒れましたわ!

 

 なんやこのネーチャン、いきなりキャラ変わったで!


「勇者ええのん?」


「ままままあ、キライではない」

 

 めっちゃ好きやねん、と。メモしとこ。


「せやけど、ガリガリやから、自信ないと」

「そうだな。もっと肉付きがよければよかったのだが、エルフは草食ゆえ、動物の脂分がどうしても不足するからな。そっせんして食べようとも思わないが」


「ええんちゃいます? それはそれで。痩せ型という選択肢も含ませてもろて、ふっくらに飽きたら手を出してもらう感じで。あとね、女性やったら痩せてても体つきは柔らかいから」

 

 サキュバスはんで実践済みなんですわ。ヨメはんにはナイショやで。


「わかった。鋭意、努力する」

 

 

 

「最後に、衣装決めますわ。サイコロ振ってや」

 ころころ。

「くっ……芋ジャージだと!? ふざけるな! これがどれだけ大事な事柄か、わかってないのか!」

 

「わかってへんのは、あんたや」



「なに?」

 


「芋ジャージ、一見すると自堕落丸出しの武装。せやけど、あんさんみたいなキリッとした美人が着るとあら不思議! 『普段は清楚で毅然と振る舞う女の子が、油断する様をオレにだけ見せてくれている』っちゅうシチュエーションを演出してくれるんや!」


「言われてみれば、確かにそうかもしれん」


「せや。あんさんは『いいんちょ』タイプや。これにプラスして『瓶底メガネ』も付けといたるわ」


 これで自堕落要素がさらに付与され、


『ああ、やっぱりみんなの前で毅然と振る舞うのは疲れるんだな。麻植が守ってあげなきゃ』

 

 といった「庇護欲」をかき立てるんや!


「どないです」


「分かった。なんかやる気が出てきた。では参る!」



 ハー。疲れましたわ。これでうまくいったでしょ。ナイスわたくしの作戦。


――三日後

 

「魔王サマ、大変です」

「どないしてんな、セヤナはん」


「さっき出て行った芋ジャージのエルフさん、宿屋で勇者を待っていたんですが、部屋に置いてあったコタツから出てこなくなっちゃいました!」


 ブーッ!

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