第7話

 翌日から私は食堂に行かなくなった。




「こんばんは」

 私は隣のベランダのドアが開く音をきいて、タイミングを合わせてベランダに出た。

「おう」

 でもどう切り出していいかわからず黙ってしまった。

「用があるんじゃないの?」

「は、はい……。

私ね、今、昼食一人で食べてるんです」

「みたいだな。食堂にいないし」

「はい……」

「それで、どうなの?」

 古賀君にそう訊かれて私は……。

「うん……。パンがね、苦いんです。ちっとも美味しくないんです」

 古賀君は黙って私の言葉を聞いていた。私の目からは大粒の涙がとめどなく流れ出した。

「一人ぼっちの自分が悲しくて、傍からどんな風に見えるんだろうと恥ずかしくて……。心細くて……」

「自分を自分で哀れんでるんだろ?」

 古賀君が言った。

「!」

 心臓を貫かれたような気がした。そう、そうなのだ。私は自分が可哀想で仕方がなかった。こんなみじめな私。可哀想。

「それで泣き言をいいに来たの?」

 図星だった。

「それで、俺にどう言って欲しいわけ? 可哀想だねって言われたいの?」

「ち、違っ!」

 私は頭を振った。

「じゃあ、何?」

「……」

 ふうと古賀君がため息をついた。

「そんなに嫌ならまたオトモダチたちと一緒にご飯食べれば?」

 そうじゃない。それを望んでいるのではない。

「いえ、それはしません」

「ふうん? なんで?」

 古賀君が面白そうに言う。

「元に戻っても一人なのは同じですから。それに……友達にも失礼ですから」

「だから?」

「……頑張ります」

「よくできました」

 なんだか誘導された気がする。変な感じだ。でもなんだか自分の思いを再確認できた気がする。

「……」

 あれ? 今日も煙草の臭いがしない。

「古賀君、煙草やめたんですか?」

「ん? ああ。ほかに退屈しのぎができるようになったから、かな」

「そうですか。身体にはその方がいいですよ」

「そうかもね。じゃあまたね、田辺さん」

「あの、ありがとう」

「何にもしてないけど?」

「聞いてくれてありがとう」

「ん」

「じゃあ……」

 私と古賀君は互いに自分の部屋に戻った。

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