第4話俺ってもどれるの?

 そう呟くと俺は二人の方に静かに目を向けた。






 一見すると女子高生のような姿だが 確かに人間とは思えないオーラが溢れている。触れることすら許されないほどの雰囲気に満ちている。




《でもさ―なんで人間のあなたがこの神の家に足を運べたの?  他の神々だって簡単には近づけないんだよ?》


《 そうですよ。迷い込んだ虫の話を聞くなど時間の無駄ですが少しだけ話を聞いてみましょうか?》




 この姉のほうはまだいいが、妹っぽいほうはやけに俺につっかかってくるな。つるぺたのくせに。というか長方形だな。レゴブロックだ。よし! こいつのあだ名はレゴブロックにしよう。




《おい……外見ですべてを判断するのは愚の骨頂であるぞ。》




 俺の心を読んだのか、どうやら妹さんはとても容姿を気にしているらしい。浮き上がる青筋と震える唇が俺に対する殺意の表れにも見てとれる。




《ま―ま―! リーヌちゃんもイライラしない! あなた名前は何て言うのかな?》




「俺は紀野。紀野京太って言うんだ。そちらさんは?」


《あたしはシューラって呼ばれてるよ―! そして、妹のリーヌだよ!》




 ほうほう。お姉さんは妹と違って出るとこは出てるな。うむ。ひょうたんだ。姉に対する俺の視線が気に入らないのか、リーヌは《むきー》とか《うぎー》とか擬音を連発している。




「シューラさん。いや、シューラ様、実のところ俺がここにいるのは自分でも分からないんですよ。かくかくしかじかで…」




 嘘をついても仕方ないのでありのままを思い出せるかぎり二人に話す。




《様はつけなくていいよ―! 敬語もなし―! かたっくるしいのは面倒だからね―! ちなみにそのぴかって光ったときに見つけてた猫っぽい生き物はあれに似てたかな?》




 そう言ってシューラさんが指差した先には思いっきり俺達から顔を背けている白くてでかい獣が……




「似てる……体はでっかいが似てるな……あっ! この目は! あのときいたのはこの獣の子供?」




《あちゃ―……やっぱり……君が見たのはこの子だよ! 君はね、この子と一緒にこっちに来たみたいだね…》




 ……なんですと?










 シューラさんから詳しく話を聞かせてもらったが簡潔に言うとこんな感じだ。










 この白い獣はオルツと言う名前で、時空間を散歩する神獣だそうだ。たまたま俺が住んでる地球に降り立った場所がたまたま俺が歩いていた道の側溝だったらしい。さらに、自分に手を伸ばしてきた人間は初めてだったみたいでびっくりして瞬時にここに戻ろうとして転移の光に俺を巻き込んだということだ。




《人間が神の領域に足を踏み入れるのは珍しいことだけど、オルツのせいだなんて……ほんとごめんね…》




「いや、なんとなく状況はわかったよ。今いる景色を見たら君らが神さんだってのもうなずけるし。このでっかい猫も悪気があってしたわけじゃないだろうからそんなに気にしないでいいから。」




《そういうわけにはいかないよ―だって君の人生狂わせちゃったんだから……》








え?どゆこと?






《君がいた地球に戻る事はできるんだけど、時空間の移動はぴったりその時間には戻れないんだ。神の観点からすると、1年でも10年でも100年でもほんの瞬きをするくらいの時間だからね…》






 のぅ……戻れ……ない……の?






《そうです。あなたは元の時に戻れません。ざまぁ。》






 妹むかつく。くっそむかつく! レゴブロックのくせにくっそむかつく!!






《かと言って、ここであたし達と過ごすわけにも行かないから君には選択してもらわないといくないかな―》




「何を選択するんだ?」




《時は変われど地球に戻り生きて行くか-》


《新たな世界で新たに生きて行くのか》













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