妖乱幻想奇譚
軽井 空気
第1話 切り裂きジャック―――第1節
『これより汝が黒い至宝をいただきに参る。』
※※※
わたしの名前は有坂《ありさか》
コレでも花の17才。現役の女子高生である。
将来の進路はすでに決まっている。
わたしが玄人のオカルト使いを目指したのは両親の死がきっかけであった。
それ以降もわたしは皆からオカルトオタクなどと揶揄されながらもオカルト使いになることをあきらめずに頑張ってきたのである。
しかし、そんあわたしを応援してくれていた幼馴染の親友がオカルト事件に巻き込まれて意識不明になってしまってしまった。
私は彼女の敵を討ちたい。
そう思ったわたしは改めて玄人のオカルト使いになることを心に決めた。
そのためにはどんな努力もいとわないつもりだ。
しかし、彼女の敵を取る事にも手段を選ぶつもりもない。
だからわたしはこの事件の解決を玄人のオカルト使いにゆだねることにしたのだ。
玄人のオカルト使いに事件を解決させてその一部始終に付いて行って勉強させてもらうことに決めた。
※※※
「と、いう訳で師匠何卒お願いします。」
わたしは頭を下げて師匠に頼み込んだ。
「突然こんなメールをよこして…」
『これより汝が黒い至宝をいただきに参る。』
「てっきりおやつはコーヒーで食べたいって思って用意していたのですがねぇ。」
そう言って私の前のテーブルにドーナッツとコーヒーを用意してくれたおじさんが困った顔をしていた。
両親が亡くなってから私の面倒を見てくれていた御爺様が、亡くなる前に自分が亡くなった後のわたしの保護者として用意していた男であった。
見た目については美形と言っていい男である。
しかしそれでも無視できないほどに剣呑な雰囲気を纏た男であった。
そんな以蔵はカッチカッチの黒スーツに室内にもかかわらずサングラスをかけてていながら、ピンクのフリフリエプロンを身に付けてコーヒーに合うスイーツを私に用意してくれているのが笑える。
もちろん用意してくれたおやつは顔がにやけるぐらい美味しいものであった。
しかし、この男は過保護で孫バカであった御爺様が残した私の保護者なのである。
御爺様は晩年こそ隠居してわたしと穏やかな暮らしをしていたが、若い頃はバリバリの任侠の親分をこなし国とは正面切って喧嘩できる有力な有権者であったらしい。
この以蔵にしても御爺様とは世話になった間柄だと言って、私の保護者なんかに収まっているようなのがおかしなほどの漢なはずである。
実際に、以蔵は玄人のオカルト使いとしての実力は本物であり、その道においては
だからこそ私も師匠と呼んでいるのだが。
しかしこの男はそんなことなど知らぬ存ぜぬとばかりに日々エプロンを身に付けて私の保護者として過ごしていた。
いや、そもそもエプロン以前に長く切りそろえられた黒髪に細身ながらに鍛えられた体躯、いついかなる時も黒いスーツ姿に外に出る時はサングラス、サングラスを外せば左目には黒い眼帯、どう考えたってアンタカタギの人間じゃないよねぇ。
で、実際にオカルト使いとしては本物のである証拠に警察からも依頼が転がり込んでくることがあるのである。
ヤクザ者にも関わらずである。
「しかし困ったものですねぇ、…どういったものでしょうか―――」
「翔子が被害にあったの。」
「はぁ~、それはしかたがねぇなぁ。」
そう言った師匠はソファーにドカリと座りおもむろに取り出したタバコに火を付けて獰猛な笑みで私に告げた。
「詳しく話しなよ。なぁ、お嬢。」
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