第7話 昨日のこと。

 今日も今日とて天気が良く、眩しくて仕方がない。

 窓際の自分の席についた柚木は、先にカーテンを閉めることを忘れていた自分にうんざりしながら、つらつらと文章を読む教師の声に耳を傾けていた。

 昨日の放課後、昇降口へと向かえば、結局そこには誰もいなくて。恋人の靴箱を確認すれば、そこには外履きの靴の代わりに、上履きが入っていた。教室にいる自分の存在に気付かず、帰ってしまっていたらしい。

 今日の朝、待ち合わせている場所に行けば、彼女はいつも通りちゃんとそこにいて。申し訳なさそうに謝ってきた。

 自分が遅くなったから、先に帰ったのだろう、と。


『文化祭前だから、どうしても遅くなっちゃって……』


 『今日も委員会があるし』と、悲しげに呟くのに、まだ待っていたのだと言うのも気が引けて。柚木は『いや、俺こそ先に帰ってごめん』と、呟いた。


『今日からは、きみの教室で待ってるから』


 そう言って小さく笑えば、彼女は少し驚いたような顔になった後、嬉しそうに頷いていた。

 部活生が忙しなく用意をして教室を去って行くのを見ながら、帰宅部である柚木はのんびりと準備を終える。「じゃ、またな」と言って去っていく翔に「おー」と適当に返しながら、柚木もまた自分の席を立ち、教室の扉の方へと歩き出した。

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