『病院の植木ばちにも木』

やましん(テンパー)

『病院の植木ばちにも木』

 やましんは、二週間に一度、精神科に通います。


 待合室には、白い植木ばちに、やましんが名前のわからない植物がふたつ、植わっております。


 もしかしたら、高級な植物さんかもしれませんが、質素で、存在を主張しない植物さんです。


 そこにいることは事実だけれど、他の存在の邪魔はしません。


 たぶん、それこそが、やましんの生き方であるべきなのですし、事実そうだったはずです。


 それでも、やましんは、社会からは、外されました。


 いや、みずから、外したのです。


 社会に置いておいても、歩く邪魔になるだけみたいだったから。


 残念ながら、たくさん、そう、いわれたから。


 そうした、回覧板も、なんどか、廻ったから。


 この植木とは違い、歩く人の、お邪魔さまになっていたらしいのです。


 ならば、お邪魔にならないよう、さら、と、消えるべきだと、確信したから。


 待合室なら、やましんは、植木以上に、お邪魔をしない。


 人生が、死の待合室ならば、お邪魔にはならない方がよいのだろうな。


 優秀な植木である必要はない。


 あ、ならば、


 やましんが、待合室の植木になろう。


 名前さえわからない、植物でもあれば、誰からも、もう、非難もされまい。


 明るい窓際に出してもらえたら、それこそが、栄光というものなのだ。


 ね。

             🎄


 



 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

『病院の植木ばちにも木』 やましん(テンパー) @yamashin-2

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る