いつかは誰かと結婚するんだよな

 …―――――

 …――――――


「送ってくれて ありがと…」


「ぅん…」


 リョウちゃんが軽く頷いた。



 ちょうどそのとき、お姉ちゃんが部活から帰ってきた。



「…ぁ なぎねぇだ」


「リョウくん! サオリを送ってくれたの?」


「ぁあ、今日は バイト休みだったし…」




 たちばな なぎさ 17歳――。


 リョウちゃんは、渚姉ちゃんのことをいつも、「なぎねぇ」って呼んでいる。



「せっかくだから、夕飯でも食べてく?」


「ホントに~! ラッキー!!」



 待っていたかのように、素直に喜ぶリョウちゃん。



 まさか、夕ご飯目当てで、サオリを送ったんじゃないよね?




「ここのご飯 美味しい〜」



 ちゃっかり、家族の一員みたいになってた。



「遠慮しないでいっぱい食べてね」



 うちのお母さんは、リョウちゃんが来ると、いつも嬉しそうな表情をする。



「うちは 女の子しかいないから、リョウちゃんが来たら賑やかになるわ〜」



 お姉ちゃんも、「リョウくんみたいな弟が欲しかったなぁ」って、我が家の女子たちには、すっかり気に入られてる。



「お代わりもあるからね」


「ホント? じゃぁ、もらおかなぁ〜」



 ちょっと! リョウちゃん。 少しは遠慮くらいしてよ!



 誰に対しても、人なつっこくて態度が変わらないリョウちゃんなのだけど……。

 うちのお父さんだけには、苦手意識を持ってるみたいだ。


 堅苦しくて真面目な性格のお父さんは、リョウちゃんが来ても、特に「ニコリ」とすることもなく、あまり喋らない。


 そんなうちのお父さんの性格を知ってか知らずか、お姉ちゃんときたら、リョウちゃんのことばかり話題にする。


 その日も、お父さんが一緒に食卓にいるのに。


「そうか。

 リョウくんが、サオリと”結婚”したらワタシの弟になるんだよね~」


 …って、まだはっきりと決まってもいないのに、勝手に口にする。



「え…? 結婚…?」



 バカバカ!

 お姉ちゃんったら、お父さんの前で何言うのよ?

 リョウちゃんにも、訊かれちゃったじゃないのよ~。



 私は、恥ずかしくて下を向いてしまう。

 胸の”ドキドキ”が聞こえちゃったらどうしよう~。



 一瞬、チラッとリョウちゃんの方を見る。

 でも、今の話を訊いてなかったかのように、平然としていた。


 やっぱり、リョウちゃんはサオリのこと……。

 何とも思ってなかったのかな?



 玄関先までリョウちゃんを見送ったとき、リョウちゃんがマジマジとこっちを見た。



 え…?

 何…?



 すると、突然——。


「そっか。

 お前も、いつかは””と結婚するんだよな~」


 …って、まるで人事みたいに呟いた。



 今、思えば…――。

 リョウちゃんの性格上、これが「精一杯の照れ隠しだったんだ」って分かったけど、当時は、ものすごぉ~く空しい気分だった。




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ボーイフレンド💛~友情から恋へ発展していく物語~ ERI~ (えり~) @Eri0315

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