第10話 司馬懿、登場

「1話が1000字位の長さでいいのに、オーバーし過ぎちゃう?」

「そうよ! 私だって巨大ロボのバニーちゃんともっと、うさうさ会話したかったわ! お姉ちゃんのバカー!」

 原因はゲーム・プログラマーの姉、日向の想定を超える後半の盛り上がりがあるみたいだ。起承転結でかなり戦闘などカットしているのだが、ついつい長くなりすぎてしまう。

「もっと簡素化してはどうですか? 殿の「バニーちゃん、ありがとう。」「うさうさ。」のように殿と巨大ロボの感謝や信頼、絆や友情のシーンの触れ合いは多くの人に共感と感動を生み受け入れられます。良い話は不変なもので「ありがとう」という優しい言葉は、どれだけ時代が変わっても、無条件で一般大衆の心に良い音色として響くのです。」

 軍師の諸葛亮孔明が渋野姉妹にアドバイスを送る。歴史を感じる良い言葉である。

「ありがとう! 孔明! やっぱりあなたは天才軍師だわ!」

「殿、もったいないお言葉です。ありがとうございます。」

 ゲームの世界の妹の渋子とAIの孔明であるが二人の間には信頼という絆が芽生えていた。

「分かった! 孔明の話が長いから尺をオーバーしてるんだ!」

 姉の日向は話が長くなっている原因を見つけた。

「そんな!? 孔明は悪くないわ!? 孔明と渋子は友達なんだから、酷いことを言わないでお姉ちゃん!?」

 孔明をかばう妹。

「孔明! 私と渋子の仲を引き裂くつもりね!? 離間の刑ね!? あなた一体何者なの!?」

 妹を孔明に取られて嫉妬する姉。

「ふっふっふ。よくぞ私の正体を見破った!」

 しかし孔明の様子が何だか変だ。

「え? そんなつもりはなかったんだけど!?」 

 戸惑う姉。

「私の正体は、魏の名軍師! 司馬懿仲達だ!」

「なんですと!?」

 初回無料Sランクプレゼントでもらった孔明の正体は、司馬懿だった。

「巨大ボスも第2形態があったけど、お姉ちゃんの好きそうな展開だわ。」

「いや~そういえば作ったような。アハッ!」

 笑って誤魔化すロマンチック・プログラマーの姉。

「ワッハッハー! 曹操様クエストで孔明を貰うような悪い子はお仕置きだ!」

 司馬懿は矢を放つ。

「ギャアアアアアアー!?」

 矢が渋子の胸に刺さり倒れこむ。

「曹操様にあだ名す者には消えてもらう! さらばだー! ワッハッハー!」

 司馬懿は去って行った。

「いや~!? 渋子!? 死なないで!?」

 これはデス・ゲームである。この世界で死ぬことは、現実世界でも死を意味する。

「死んでないよ。」

「え? 渋子!?」

 渋子は起き上がり胸に刺さった矢をポンっと手で引き抜く。

「私は無限蘇生スキルを持ってるから、死にたくても死ねないよ。」

 既に渋子はチートな存在だった。

「良かったー!? 渋子が生きてる!? 妹が生きてるわ!? 良かった! 本当に渋子が死んだらどうしようと考えたちゃった!? デス・ゲームなんか作ってごめんなさい!? ウエエエ~ン!?」

 泣き崩れる姉は妹を失う怖さを実感して、愚かな人類が作りだしたデス・ゲームを恨んだ。

「それにしても、シバちゃんなら私が死なないことを知っているのに・・・・・・わざとで私を助けてくれたのかな?」

 渋子はともに旅をしていた仲間を信じたかった。

「そういう伏線を入れるから1話が長くなるのよ。」

 ツッコミは忘れない姉であった。

 つづく。

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