第27話 入学式 3

 三人が壇上に並ぶと、副会長から名前とクラスを訊かれて順番に答えていく。


「Aクラスのアルバート・マルティネスです」

「Aクラスのマリアベル・フロストですわ」

「Cクラスのミア・マグナスです」


 三人が自己紹介をしていき、最後にミアが家名をいうとザワザワと騒がしくなった。『平民じゃないか』という声が一般生徒の間から聞こえてくる。


「平民が役員補佐だなんて、納得出来ません!」


 同じ一年生らしき金髪碧眼の生徒が声をあげ、その言葉に賛同する声が幾つもあがる。騒がしくなってきたところで学園長が皆の前へ出てきた。


「我が校は身分に関係無く平等です。それは平民であっても変わりません。魔導学園へ入学した時点でグルヘイト王国の繁栄を更に確かなものにする為の仲間なのです。身分云々いってないで切磋琢磨しなさい!」


 学園長の言葉で騒いでいた生徒たちが静かになり、ミアへ向けられていた嫉妬と羨望からくる敵意に満ちた視線が和らいだ。しかしミアは注目を浴びたことで嫌な汗をかいていた。


 役員補佐だなんて大変なものに選ばれて、面倒なことになるのは間違いない。唯一の救いはアルバートも同じく役員補佐に選ばれたことだ。


 ミアは心の拠り所を求めて無意識のうちにアルバートを見ていたため、ジュリアスに刺すような視線で見られていることに気づいていなかった。




 校長が席に戻ると、パンパンと手を叩く音の後に先生の声が響いた。


「静かに! 1Aの生徒から順番に担任の先生の後について教室へ移動するように」


 指示に従い生徒たちが移動していく。ミアたちも自分たちのクラスに戻るよう言われて担任の教師について教室へと移動した。



 教室へ入って各々が自由に席に着いたが、ミアは冷たい視線を感じて居心地が悪かった。見立たないようにと一番後ろの席に座ったが、役員補佐に選ばれた時点で注目の的だし、平民だから学園で最底辺の身分だと言わんばかりに明らかな侮蔑の表情を浮かべる者もいて、ミアが役員補佐に選ばれたことが面白くないものが少なからずいるようだ。


 好きでなったんじゃないのに‥‥‥‥代われるものなら代わって欲しいわ。


 学園では身分に関係なく皆が平等だと言われているが、それはあくまでも表向きだ。これからずっとこの中で過ごさないといけないのかと思うと、入学を辞退できなかったことが今更ながら悔やまれた。




 帰宅時間となり生徒たちが教室から移動を始めると、ミアは居心地の悪い教室から解放されてやっと帰ることが出来ると思うと気が緩んだ。その瞬間を狙ったかのように、前の席の女生徒が後ろを向いて言った言葉に凍りついた。


「ミアさん‥‥‥‥あなた、魔法が使えないんでしょう?」



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