死の先の聖譚曲《オラトリオ》~滅びの前奏曲《プレリュード》~

狼煙(アズ)

第1話 目覚め

 天井に付けられたたった一つの電球が記憶を失っている銀髪でアクアマリンの様な水色の瞳の人狼少年を照らす。壁は灰色で隔離させられている様に感じさせる様な分厚さ。


「こ、ここは?」


 目が覚めると少年は立ち上がる。服はボロボロの布切れだけだ。


「これは、銃?」


 起き上がって部屋の中を散策しているとハンドガンが出て来た。その時、走ってくる足音が聞こえた。

 扉が強く開けられて、その勢いのままにドアノブが壁へ衝突して壁にへこみを作った。扉の向こうには長く輝くような黄金の髪をなびかせ、エメラルドグリーンの瞳を輝かせる女性が居た。決して泣いているわけではない。しかし、その大きな眼に電球の光が反射してそう見えたのだ。


「おっと、ここに生き残りが居たのね」

「あ、貴女は?」

「あたしはシェーナ。隣国の者よ。今はこの滅んだ国にいる生き残りを探しに来たのよ」


 何もわかっていない少年はあたふたとしていた。


「君、名前は?」

「わ、分からない。何も覚えてないんだ」

「記憶を失ったのね。レン、護衛を」


 扉の奥に水色の髪の少女が現れた。背中には複雑な模様をしたアサルトライフルを担いでいて、真っ白なマフラーを着けていた。


「うい~」

「あ、そうだ。君、今日からアクスと名乗ったら?」

「アクス?」


 急な提案に戸惑いを見せた。


「そう。まぁ理由はここに置いて あった紙に書いてあったんだけどね」

「じゃあ、そうします」

「あ、あとこれ」


 ほいっとシェーナが投げた物をアクスはキャッチした。見た目はパイプみたいだったが、様々な装飾が施されていた。直径三センチメートルで長さは二十五センチメートルくらいだった。


「んなぁ、それは光剣だヨ」

「光剣?」

「ああ。近距離でないと力を発揮しないけどネ。頑張れば弾を弾けるヨ」


 置いてあった服に着替え、腰に付けられたベルトにハンドガンと光剣を装着した。


「じゃあ、移動しよう」

「うい~」

「はい」

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