第47話 視聴覚室で相談④



 視聴覚室に入ると、すぐに二人の会話が聞こえてくる。

 内容的には丁度良いし、割り込ませて貰いましょうか。



「私が紹介したからよ」



 私の登場に、杉山君は所謂『シェーのポーズ』のような挙動で驚く。



(相変わらず、面白い反応をするわね……)



 そんな反応に、私は思わずクスリとしてしまう。

 かのポーズは、我が家に存在する古き漫画を原点とした、有名なネタである。

 昨今の若者は知らないだろう……、と言いたい所だが、リメイクというか続編が最近放映されたので、知っている人も多いかもしれない。

 まあ、杉山君が知っていた上であのポーズを取ったかはわからないけど……



「藤原先輩? もしかして、藤原先輩も話に参加するんですか?」



「それはそうよ。ただ紹介だけして、後はお任せなんて無責任なことはしないわ」



 ただでさえ杉山君はコミュ障気味なのだ。

 私がフォローしてあげないと、話をまとめるのは大変だろう。



「……でも貴方達、一応面識はあったみたいね?」



「……ええ、まあ」



 ……成程。

 塚原君がこういう反応をするということは、恐らく何か面倒なことでもあったのだろう。

 大方、杉山君が何か困っている所を助けた、とかかな?

 まあ気にはなるけど、ここで問いただす意味も無いので、あとで杉山君に聞いてみよう。



「じゃあ、細かい紹介は必要なさそうね。あまり時間も無いし、早速だけど本題に入りましょうか」



「ちょ、ちょっと待ってくれ!? 俺は全然この状況が理解できないんだが!?」



 私がさっさと本題に移ろうとすると、慌てたように杉山君が迫ってくる。

 サラっと私のパーソナルスペースに入って来る辺り、彼との関係も中々に深くなったものだと思う。

 まあ、現状友達以上の関係になるつもりはないけど……



「それはきっと混乱しているだけよ?」



「混乱するに決まってるだろ!?」



 ……まあ、それもそうか。



「えっと、杉山君は塚原君に相談を受けたワケでしょ? で、私はその前に相談を受けていたの。それで、内容的に杉山君が適任と思って塚原君に紹介した。それが今の状況よ?」



 少し冷静になれば、先程の会話の流れから察せると思うんだけどなぁ……

 まあ、私と杉山君の関係はおおやけにしているワケじゃないので、杉山君としてはいきなり私が現れてビックリした、って所かしら。



「……それは、とりあえず理解しましたけど、俺が適任っていうのは?」



「え? だってネットとか電子機器とか詳しいじゃない?」



「いやいやいや! 分類が大雑把過ぎるでしょうが! ゲーム好きなの? じゃあ作って! って言ってるのと変わらないですからね!?」



 少し極端な例ではあるけど、まあ言いたいことはわかる……

 ネットも電子機器も、分野自体がとても広いし、そんなことを言われても困る気持ちは理解できる。

 ただ、私としては彼ならなんとかしてくれそう、という期待があったのだ。

 私のゲーム環境とかも、なんだかんだ結構整備して貰ったしね……



「……あの~」



 どう説明するかと悩んでいると、恐る恐るといった感じで塚原君が声をかけてくる。

 しまった……、相談に来たのは彼なのに、私達だけで口論してる場合ではなかった。

 ボイスチャットでは大体いつもこんな感じなので、ついいつものノリになってしまった……



「っと、ゴメンね、塚原君。ちょっと見解の相違があったみたいで」



 そう言うと、杉山君は何か言いたそうにしていたが、とりあえず飲み込んでくれたようだ。

 少しコミュ症気味の彼だが、意外と空気は読めるのである。



「とりあえず、杉山君も本題に入って良い?」



「……まずは内容を聞いてから判断します」



「ありがと。じゃあ早速だけど、杉山君、盗聴とか盗撮ってしたことある?」



「「………………………」」



 気まずい沈黙が流れる。

 私も言った瞬間、言葉選びを間違ったなと思った。



「あるワケ無いだろーーーーーーーーーーっっっっ!!!!!!!」



 少しの間を置いてから、杉山君が雄叫ぶ。

 ……まあ、そりゃそうよね。



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