第11話 親友の言い訳を聞く
男の友情は、女の友情に比べれば硬いものだと思っている。
しかし、何かのきっかけで破綻することは無きにしも非ずと言えるだろう。
「なあ塚本、お前は間違いなく誤解をしている! 話を聞いてくれ!」
「塚原君、僕は次の授業の予習があるので、少し静かにしてくれませんか?」
「予習って……、お前、そんな事一度もしたこと無いだろ……? それに僕とか、はっきり言って似合わな過ぎるぞ……」
……事実とはいえ、随分失礼なことを言ってくれるな、塚原よ。
普段だったら、ここで「ですよねー!」とでも言ってノリで返すところだが、今日はそんな気分ではない。
少なくとも、昼休みくらいまでは
「塚原君、君が昨日今日でハーレム系主人公に成長したように、僕も急にインテリ系主人公に成長したんだよ。もう、さっきまでの僕だとは思わないことだ」
俺は眼鏡をクイッと上げる仕草をしつつ、塚原に人差し指を突きつける。
塚原には俺が、眼鏡を光らせ問題を指摘している優等生キャラのように見えているに違いない。
「いや、眼鏡つけてないのにそんなポーズ取られても、どんな反応したらいいんだよ……」
くっ……、やはりオプションが足りなかったか……
こんな事なら、ファッショングラスくらい用意しておくべきだったぜ……
「……あっ! あれか! コンタクトに乗り換えたけど、以前の癖でついクイッとやっちゃうってあるあるか!」
いや! ちげーから! コントじゃねーから!
つか、ツッコムならもっとテンポ良くしろよ! それじゃ芸人にはなれねーぞ!
「……つ、塚原君、僕は真面目な話をしているんだ」
「え……、いや、これのどこが真面目な話なんだ……?」
「……ともかく! 俺は予習をするんだ! 話しかけるんじゃねぇ!」
「あ、やっと素に戻った」
くそーーーっ! やはり似合わないことはするべきじゃなかった!
まるで俺がアホみたいじゃないか!
「いや、アホなんじゃないかな…」
「俺の心の声にツッコミを入れるんじゃねぇ!」
「はは……、とりあえず、話を聞いてくれる気になったってことでいいか?」
ちっ……、相変わらずこの男は……
まあ、もう慣れたけどな……
「……一応、言い訳くらいは聞いてやろう。裏切り者」
「裏切りって……、俺が何を裏切ったと言うんだ……」
無自覚……、だと……?
まさか鈍感系主人公属性まで得ていると言うのか!?
くっ……、コイツ、どれだけ主人公属性を付ければ気が済みやがる……
「お前……、前島さんとあんなに仲良さそうに話しておいて、裏切っていないとでも言うつもりか? いい度胸だぜ……」
「いやいや、あれが仲良さそうに見えたんなら、お前の目は節穴だと思うぞ?」
いいや違うね! 鈍感系の主人公はみんなそう言うんだ!
実は良い関係なのに、相性最悪だとかふざけたことを抜かす!
自分がどれ程恵まれた状況にあるかも知らずに!
「……じゃあ聞くか、お前と前島さんの関係は一体なんなんだ?」
「それは……、友人関係になる事を前提とした付き合いというか……」
なん……、だと……?
「そ、それはアレか? 結婚を前提にお付き合いするってアレの、前段階というヤツか…?」
「いや違うぞ!? どう解釈すればそんな結論に!?」
そんな事は決まっている! 羨望補正というやつだ!
「……質問を変えよう。先程、塚原に恋人宣言をした美少女、あれはどこのどなた様だ?」
「あ、あれは……、その……、じ、実はだな? ちょっと先日、告白をされて……」
…………。
「お、おい、なんか凄い顔してるぞ!?」
…………ガアァァァァァァァァッデェェェェッム!!!!
「ありがとう塚原君。良く分かった。どうか末永く爆発してくれ」
俺は今日、十年来の親友を失った。
「いや! そんな事で失わないでくれよ!」
くっ……、コイツまたしても俺の心の声にツッコミを……
これだから幼馴染というヤツは厄介だ……
でも、今回はアタシ、本当に怒ったんだからね!
とりあえず、俺は昼休みまでふて寝することを決意した。
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