The 2nd Law: 七人の勇者を殺す

深澤夜

プロローグ: 空飛ぶ島と少女の掌

 おや、またこんなところで遊んでいたのか。ここへは来るなと言っただろう?

 森の中には、魔物がいる。

 女神様? ああ、そうだな。いるかも知れないが、あまり期待はできない。

 なるほど、君もあれが気になるんだね?

 あの、空に浮かんだ島が。

 おかしいと思うかい、島が浮かんでいるなんて。

 君が生まれる前、ずっと前の話だ。その前には、あんなものはなかった。

 君は信じないだろうが――その頃には、皆、不思議な力を使っていた。

 そう、魔法のような、ね。

 人々は神々と生きて、この森も、この丘の向こうの崖から見渡す限りを、巨大な怪物たちが――おっと、怖がらせてしまったね。

 大丈夫、もうそんなものはいない。

 神様?

 昔はこの森にもいた。女神様だよ。きっと町の爺様達なら知ってるだろうね。

 知ってるだろうけど、教えてくれるかは、どうかな。きっとすべては教えてくれないかもな。

 どうして?

 君たちには必要ないことだからさ。君たちは、これからもっと大事なことを知ってゆくんだ。

 ――おいおい、やめてくれよ。僕だって、君たちにそんなことを教えたいとは思わない。

 でも、そうだな、昔、この世界を救った人たちがいた。そう、このポート・フィレムの町も、フィレムの森も、そこにおわす女神様もさ。

 それだけじゃない。この星の隅から隅まで、彼らが守った。

 彼らがどこへ行ったかは誰も知らない。昔の話さ。

 さ、もうお帰り。こんな話をしたくはない。

 ――だめだよ。君が大人になったら、自分で調べてみるといい。

 かいつまんで、聞かせられることだけを話したとしても、長い話になる。

 ああ、じゃあ、そうしたら、君がさっき、後ろに隠したものを見せてくれるね?

 交換条件だ。何事にも、交換条件がつきものだ。

 よし、じゃあ、少しだけ。

 いいかい、それでもこれは、長い話になる――。

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