16-2

 繰り返されるバトル、それはもはやエンドレスなのか? 挑む鍵の持ち主も疲弊しているのに加え、ビスマルクの方も限界が近い。

その状況下、駆けつけたのは舞風まいかぜ、団長、マルスの三人だった。彼らは鍵の所有者に深層WEBの住人と接触した事を伝える。

動揺したのは、何と相手側の方だった。鍵の所有者も驚くのだが、それ以上に向こうは――検索してはいけないワードが出たと言わんばかりに退却を始める。

一体、何が起こったのか――舞風の方が把握できていないのである。

(向こうは深層WEBの何を恐れているのか?)

 アイオワと遭遇した件は言及していないのだが、ただ深層WEBに接触したと話しただけなのに――。

「まるで、向こうは勘違いをしているようだな」

 黒のシュヴァリエの言う事も一理ある。あの場で出会った人物を踏まえれば、舞風もここまで過剰な反応をされると逆にドン引きになるだろう。

「一体、彼らは何を恐れているのかな?」

 舞風は向こうが深層WEBが何であるのか――それを調べた方が先だと考えた。

しかし、その前に片づける課題はいくつか存在する。その一つは、アイオワ~のメッセージだ。



「全ての物語が同じような題材を使っていても、作者がどう書くかで物語は異なる。それだけは忘れるな――と言っていた」

 舞風は深層WEBにいたアイオワのメッセージをかいつまんでだが、他の鍵の所有者や瀬川せがわプロデューサーに伝える。

他のメンバーは少々驚く表情にはなったが、やはり炎上勢力程の反応はない。その一方で、瀬川は何かが引っかかっている――と疑問に思う。

「おそらく、これだろうな」

 瀬川が他のメンバーに送信したサイト、それが深層WEBと解説はされているように見える。

しかし、その内容はアイオワの言っていた物とははるかに違う。偽装とも思えないし、どういう違いがあると言うのか?

「そう言う事か。これも炎上勢力の工作か?」

 黒のシュヴァリエの言う事も一理あるが、炎上勢力が退却した理由にはならない。

それをあてはめると、自分達が作ったサイトの内容で自分達の首を絞めるような自滅をしている事になるからだ。

「サイトの説明を見ても、内容はさっぱりだけど――」

 あいね・シルフィードはサイトの内容を見てもピンとこない。

他のメンバーも同じリアクションと思われたが、約一名だけが違う反応を示す。それはアルストロメリアだった。

「勘違いと言うか、これは明らかにアレよ。誤用かもね」

 はっきりとサイトの内容を見て、彼女は誤用と断言する。

本来、深層WEBとは三人がアイオワに接触した時のような、インターネットのサイト検索などに引っかからないような物を示す。

この世界においてもたどり着けないようなサイトを示すのだ。あの時の光景はサイトと言うよりも――別世界と言う認識だが。

「彼らが深層WEBを恐れたのは、この情報が違法性のある物やホラー性の高い物と認識した為よ」

 瀬川が検索で示したサイトは、いわゆるアカシックレコードの情報と言う事になっている。

しかし、炎上勢力が恐れたのは――この情報が違法性の高い情報と思ったからだ。

「お互いに同じワードでも認識が違う――似たワードでも作品によって示すのが異なるように」

 アカシックレコードの内容を見て、ツッコミを入れたのはガングートである。

彼女は何を伝えようとしているのか?



「申し訳ありません。向こうは深層WEBに接触したようです」

 とある退却したメンバーの一人は、電話主に報告を行う。

失敗報告の為、依頼主というか電話の主が激怒すると思われたが――予想外の反応が来た。

『深層WEBとまで来たか。連中は遂に自分達で世界を変えようとしているのか』

 その反応に対し、報告をする人物も目が点になった。

まるで、この報告で向こうが成功と認識したような反応だからである。

「世界を変える? マイナーコンテンツが世界を変える事は不可能でしょう。あのようなデッドコピーに――」

『君たちはとてつもない思い違いをしたようだ。彼らは海賊版ではないよ。確かにヴァーチャルレインボーファンタジーからすれば、二次創作だがな』

「海賊版? 彼らは有名な異世界ファンタジーの模倣に過ぎない。それ以上に重要なのはピンポイントの層に受けるような――」

『話にならないな。彼らは元々の役割さえも超えた存在になっている。それこそ、作者の手に届かないような存在に』

「ソレでは暴走するでしょう。広告会社や出版社、それこそ大手芸能事務所のタイアップ――」

『そうしたやり方が超有名アイドル商法事件を生み出したと分からないのか?』

「あの事件は、一部の歌い手たちのファンによる二次創作が招いた暴走事件――」

『そうした認識こそ、大手広告会社側のカバーストーリー、そういう炎上と言う事で黒歴史に仕様としているのだ』

「黒歴史? あの事件があってこそ、我々――」

 電話主は途中で切ってしまったようである。

話が通じないような人物と会話をするだけ無駄と彼らは考え、再び動き出そうとしたが――思わぬ人物があらわれて全ては阻止される結果になった。

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