13-7
その内容を見て、衝撃を受けたのは言うまでもないのだが――そこからビスマルクは予想外の行動に出た。
「マルス、お前に伝えたい事がある!」
SNSの内容を見て、彼女はマルスにメッセージを伝えようとしたのである。
それがどうなるか、プラスに動いたとしてもマイナスに動いたとしても、覚悟を決めるしかない。
「お前は、一つの敗北だけで終わってしまうのか?」
マルス自身、ARバトルロイヤルで何度か敗北はしているだろう。あれが一度目の敗北ではない。
しかし、あの人物――アルストロメリアは相手が悪すぎた。あれだけの実力者に負けたのでは、次はないとも考える。
「君が何も答えたくはないのであれば、それでもいい。ただ、これだけは言わせてもらう」
彼女の目つきは本物だ。愛する物がある故の――メッセージと言えるのだろう。
彼女の愛する物、それはゲームだけではない。コンテンツそのものである。
「わずか一度の炎上がきっかけで終了した作品は、星の数ほどあるだろう。盗作とか著作権侵害とか――そう言った悪質なケースは例外とするが」
(!?)
ビスマルクの一言、それはマルスだけに向けられている訳ではなかった。
むしろ、マルスだけでなく七つの鍵の所有者に向けられている可能性さえある。
「お前は、そうしたわずかな理由で炎上して終了した作品と同じになるのか? ファンにも見捨てられ、消えて行った作品と同じ末路をたどるのか?」
その言葉を聞くが、マルスは何も反論が出来ない。むしろ、自分の言葉で言い返したい思いはあるだろう。
「消えた作品でも、ふとしたことでピックアップされる事はある。しかし、中には悪しき二次創作者が自分のバズりや悪目立ちを目的として悪用するだろう」
言葉の意味は何となく分かるが、それでも反論できないでいる。それでも、ビスマルクはマルスに反応を求めているのだろう。
むしろ、彼の言葉を――意見を聞きたいのかもしれない。
「そうした形で復活できたとしても、レッテル貼りされて以前のような輝きを持てない事もある。自分は、そうしたコンテンツをいくつも見てきた」
聞いているだけのマルスは、ビスマルクの方を振り向けない。むしろ、振り向けば――。
ビスマルクの方は振り向かないのであれば、それでもいいと思っている。彼女は、今まで抱えてきた物をぶつけているのだから。
「お前は、そうした作品とは違う可能性がある。そうじゃないのか、マルス!」
その最後の一言を叫んだ後、彼女は仕事部屋を後にする。
しばらくして、舞風には「マルスを頼む」と一言残し、何処かへと向かった。
その日、舞風の自宅を訪ねたのはもう一人いたのである。
ビスマルクが去って五分位後に、すれ違いの形で現れたのは――。
「あなたは――?」
ビスマルクを見送り、そこから戻る際の玄関に姿を見せた彼女、それは何とあいね・シルフィードだったのである。
何故、このタイミングだったのかは不明だが――彼女はマルスに会いたいと尋ねてきたようでもあった。
「何だか色々とすれ違いになってるけど、今はここにマルスはいないわ」
しかし、残念ながらマルスは何処かへと言ってしまったのでここにはいない、と説明する。
ビスマルクが去った後に、彼女を追うように何処かへと向かったからだったのだが――。
それでも彼女はマルスに伝えておきたい事がある――と話す。メッセージを伝える位ならばSNS等でも出来るようには思えるだろう。
「そうですか。でも、このメッセージはSNS経由にする訳にもいかないので」
あいねがSNSの闇を知っているのかは不明だが、何かを警戒してSNSで伝えるのではなく直接と考えたようでもあった。
何故、彼女はマルスへ直接メッセージを伝えようと思ったのか?
「私も、別件が片付いたら合流をします。アルストロメリアには、何かがあるようなので」
あいねはそれだけを言い残し、そのまま舞風の自宅を後にした。
何処へ向かうのかは伝えていないが、おそらくは――。
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