11-6
「今のは手加減した訳でも、舐めプレイと言う訳でもないよ。こっちも、ゲームシステムを全て把握している訳ではないし」
アルストロメリアは余裕の表情を――浮かべていない。彼女のプレイスタイルは、基本的に正々堂々と言った物だ。
確か――あの作品では、最低でも卑怯なヒールプレイもなかったし、チートを使った不正プレイもない。
チートプレイヤーに対し、運営へ通報するようなシーンはあったかもしれないが、それは本編ではなく彼女がピックアップされた外伝だろう。
この描写、もしかしなくても――と瀬川(せがわ)プロデューサーは何かを思い出す。
そして、このバトルを見ていた一部のユーザーも何か引っかかるものを感じたのかもしれない。
【アルストロメリアのプレイって、アレでよかったのか?】
【何か微妙に違う。有名配信者のなりすましとも考えにくいが】
【ネット上の二次創作小説で題材にされている事に対しての――】
【それはあり得ない。その業界は、かなりの神経を使っているはずだ。一部を除いては】
【じゃあ、あのモニターの先にいる人物は誰なんだ?】
一般のユーザーでは見破るのは至難だろう。ニワカの知識を持っていたとしても、微妙なプレイスタイル等は判別できない。
目の前にいる人物、それは本当にアルストロメリアであっているのか?
シールドの展開を止めた事に対し、あいね・シルフィードは何も言わない。
無言で睨みつけた訳でも、この行動を一種の手加減とも判断した訳でもなかった。
「様々な格ゲーをプレイしていると、2Dと3D格ゲーである程度の動作が共通に見えてくる――」
シールドの展開を止め、次に展開したのはリボルバーと呼ばれる六発装填の拳銃である。
マガジンを使わない方式の装填は様々なゲームにも使われており――その手の作品ではシングル・アクション・アーミーとも呼ばれていた。
しかし、アルストロメリアが使用するのは銃弾ではなくビームを放つタイプであり、形状がリボルバーになっているだけと言えるだろうか。
「こう言うアクションゲームもそうだと思わない? 同じ動作と思ったら、暴発して――と言う様な典型的なフラグって奴?」
フラグと口にしたと同時に苦笑いを浮かべた彼女は、あいねの方ではなくセンターモニターカメラの方を振り向く。
そして、そのリボルバーをカメラの方へと向けた。引き金に指をかけた訳ではないので、撃つふりだけだろう。
「これだけは言っておくよ! まとめサイトや悪意を持ったユーザーは、自分だけが良ければ他人を平気に踏み台にして、捨て駒にする――」
(この人――何なの? 一体、何を知っているの?)
あいねはアルストロメリアの話を聞き、何に対して怒りの矛先を向けているのかが理解できなかった。
話のテンションとしては怒りではないだろう。むしろ、このタイプは警告などのタイプかもしれない。
その話を遮る事を、あいねは全く出来なかった。下手に動けば――。
「私は自称正義の味方は認めない。正義を語るならば、それ相応の行為をするべき。転売屋や炎上行為を正義と同列なんて――」
(あの人の発言――誰かと似ている様な気がする。誰だろう?)
次第にあいねは、アルストロメリアの発言が自分のいた世界でも発言していた人物がいると――考え始めた。
SNS炎上に正義は存在しない。その行為は悪でしかない、と。
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