11-3

 バトルが終了して、数分が経過しても興奮は冷める気配がなかった。それ程のバトルなのは間違いない。

センターモニターでは、その時のバトル動画がリプレイとして流れている。そして、その内容は――。

「わずか数回の攻撃で決まるとは――」

 瀬川せがわプロデューサーは、改めてアルストロメリアの攻撃力の高さに驚く。

威力は不正ツールやチートを使った物ではないので、周囲が驚くのは無理もないだろう。

ARゲームでは基本的にデータをプレイ前にチェックし、許可されたガジェット等しか使えないからだ。

「序盤の一撃、それ以降はマルスが攻撃を加えているように見える」

 デンドロビウムもセンターモニターの動画を見始め、そこでマルスがどのような動きをしているか見ていたのだが――。

「アルストロメリアは、どちらかと言うと近接の一撃離脱タイプだ。マルスと似ているが、防御面では違いがある」

 瀬川はアルストロメリアの能力を把握していなかったが、過去のプレイ動画等を見ていく内に何かが見え始めていた。

彼女は攻撃力特化なのではなく、あくまでも攻撃力は高い部類だが――という手数で攻めるタイプだったのである。

「同じタイプならば、互角ではないのか?」

 デンドロビウムの言う事は一理ある。それは、あくまでも同キャラ対戦等の特殊ケースでしか成立しない。

マルスとアルストロメリアでは登場する作品、バトルタイプ等も違っているので攻撃タイプだとしてもその世界での攻撃タイプだろう

他世界でも同じような攻撃タイプで通じるかと言われると――そうした意見こそ、押し付けと言われるだろうか?

「それは違う。Aと言う作品とBと言う作品で同じような騎士がいたとして、同じ技と使うと思うか?」

「どういう事だ? 騎士である以上、同じではないのか?」

 瀬川の発言に対し、デンドロビウムは思い当たる箇所がない。

そして、悩むデンドロビウムに瀬川が答えた一言、それは納得は出来る一方で――という難解な物だった。

「作品Aと作品Bで全く同じ技を使ったら、それこそパクリと言及されかねない。格闘ゲームのような事例であれば、深く突っ込むような事はないと思うが」

(???)

「格闘ゲーム自体は、先駆者の存在が大きかったが――」

 デンドロビウムは瀬川の一言ではすまないような発言の数々に――ある意味でも地雷を踏んでしまったと考える。

しかし、それを踏まえるとガーディアンが蒼流の騎士を摘発、その正体がまとめサイト管理人だったのも――。



 マルスがフィールドを出た辺りでは、バトル動画の方も流れているのだが――それをマルスが直視する事はなかった。

単純に見たくないと言う訳ではなく、他プレイヤーの順番待ちがあったのかもしれない。

(どうして――)

 色々と言いたい事はあるのだが、言い訳をしても結果が変わる訳ではない。下手に理由を重ねてたとしても――炎上するだけだ。

それこそSNS炎上勢力からすれば資金になりそうなネタにされるのは明白だろう。それ程に、SNS炎上は社会問題と化していたのである。

結果として、アルストロメリアの能力は知る事が出来たので舞風まいかぜの自宅へと帰る事にした。

(彼は確か――)

 私服姿のあいね・シルフィードがマルスを発見するのだが、声をかけづらい環境だったので諦める。

彼女が次のアルストロメリアの対戦相手と言う訳ではなく、単純にバトルを観戦していただけに過ぎない。

それでも、彼女の逆転劇にはあまりにも出来過ぎていると――考えたのである。

「あのトリックは、もしかしなくても――」

 次の対戦者が一分も満たずに敗北した為、あいねの順番に都合よく回ってきた。

それだけアルストロメリアの実力があるのか、それとも強運なだけなのか? それを知る為にも、あいねは彼女とのバトルへ挑む。

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