10-6
黒のシュヴァリエと別れたマルス、もうしばらくゲーセンの様子でも見てから帰ろうと思った。
しかし、ARガジェットにはコール履歴が残っており、そこには非通知の着信履歴があったのである。
マルスも明らかに罠とは知りつつも、履歴から連絡を取ろうとする。
「君は――?」
『マルス、君にとっては初めましてだが――』
「誰だ? このガジェットの番号を知っているのはごく一部なのに」
『ARガジェットの事か。それならば、簡単に入手出来る方法はいくらでもある』
声の人物は女性である。しかし、ボイスチェンジャーを使用したような音声加工なので、性別の特定は困難だろう。
あくまでも女性声である事しか分からない、と言ってもいい気配がする。
その人物はマルスを明らかに知っている様な口ぶりで話しているのが――気になる箇所だった。
「名前を聞いていない。君は何者なのか?」
『それが意味を持たないのは、君も分かっているはずだ。蒼流の騎士の一件で』
「蒼流の騎士? まさか、関係者か?」
『関係者と言うには、アレかもしれないが――君の事は団長から聞いている』
団長と言うワードには引っかかるものがあったが、声の主を暫定的に信用する。
明らかな罠だとしても、何か情報が得られれば――と考えたからだ。舞風は怒るかもしれないが――。
「用件が何かを聞きたい」
『確かにそうだな。君に接触した理由は、ビスマルクと言う人物から聞いたのも理由の一つと言えるだろう』
先ほどは団長と言ったのに、今度はビスマルクの名前を挙げている。
一体、この人物の正体は何者なのか――気になる箇所は多い。
『具体的な理由を言う。七つの鍵を集めても願いは叶えられない。あれは全て――』
改めて、あの話題を聞かされるとは予想外だった。七つの鍵を集めても願いは叶わない。
舞風からも何となくは聞いていたが、これが本当の意味で事実だと――再び念を押されるとは。
今から数日前、舞風が本格的に作戦を始動する為に情報を収集していた時期である。
「七つの鍵の話、あれは全て蒼流の騎士の偽者によるでっちあげよ。厳密に言えば、半分は嘘だけど」
マルスの方を直接向くことなく、パソコン画面のサイトニュースを確かめながらさらりと話したのである。
衝撃なネタバレを話すにしても、そこまで投げやりだったりどうでもいいような話し方はしないだろう。
「半分? 願いが叶うは本当なのか?」
マルスは本気で考えている。鍵をすべて集めれば、あの大陸へ行く事が出来るのでは――と。
しかし、舞風は最初の蒼流の騎士の正体を知った上で彼を絶望させたくないとは思っている。
マルスを呼びだした理由は、何となく分かりかけていたから。SNS炎上や他コンテンツを潰す為、敢えて大手の週刊誌作品を使わず、マルスを呼びだした事――。
「大陸の事、七つの鍵の事は本当よ。しかし、願いがかなうは――」
そこから先、舞風が何を言ったのかは動揺していてマルスの耳には届いていない。
しかし、それが嘘である事だけは何となく分かっている。口の動きからして、嘘と言う単語ではないにしても――それに類似した言葉だろう。
舞風も――SNS炎上と言う闇の世界を知っている上で、その世界へ再び飛び込もうとしているのかもしれない。
ソレにマルスを巻き込めば、それこそ再び日本は大パニックとなるのは確実だから。
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